一章 六節 家にて
家に帰ってから少し勉強をして、ご飯を食べて、お風呂に入って……気が付けばもう寝る時間になっていた。
ぬいぐるみに半分以上占領されたベットの空きスペースに寝転がる。私は暗いところが苦手なので、電気はいつも豆電球だ。
猫、犬、クマ、ウサギ……色々な色の可愛らしいぬいぐるみが並んでいる。私が長い時間をかけて集めていったものだ。
「はぁ……今日は本当におかしな一日だった」
目を瞑ったらすぐに氷斗さんの事が思い浮かんだ。笑顔、ちょっと怒った顔、普段の顔、そしてあの泣きピエロの顔……。
インターネットで関わっていた時、私は特別あの人と深い関わりを持っていなかった。いれば話すしいなければ関わることがない。そんな関係だった。
正直いなくなっても私の人生には変わりはない、特別に興味もなかったから彼の事を知ろうともしなかった……ただ、今その事を後悔している。
何か特別な事を知っておけば、今のおかしな状況を打開する方法を見つけられたかもしれない。
そもそもなんで氷斗さんは私の現実に現れたのだろうか? どう考えたっておかしいじゃないか。
周りの人間は誰も不振がる様子を見せなかった。まるで、氷斗さんがここにいるのが当たり前とでも言うように……。
でも、氷斗さんがいる毎日も悪くないと少し思ってしまう私もいる。確かにからかってきて面倒くさいし、今日だって道連れにされたせいで酷い目に遭ったけれど、なんだかんだ楽しかった……気がする。
「いけないいけない、そんなわけない」
向こうでもそうだ、氷斗さんがいるときは大体ろくなことが起こらない。いつも振り回されるだけで……。
でもやっぱり振り回されるのも、なんだかんだ楽しかったような気がしないでもない。一緒にいて楽しくて、ちょっぴりドキドキして……。
「はは、これじゃあ氷斗さんの事好きみたいじゃんか」
そんな事あり得ないのだ。私は、だれも好きになることがない。だって、私は何かに縛られるのが嫌いだ。
愛だとか、恋だとか、そんなくだらないものに縛られて、振り回される人生なんてごめんだ。
「明日から、氷斗さんがいる毎日が当たり前になるのかな……それとも、今日だけで明日からいなかったりして」
いなかったとしても、どうせ私のやるべきことはなにも変わらない。ただほんの少しだけ氷斗さんにいて欲しいと思ってしまう私であった。
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