第255話「さあっ! ルクレツィア様! ロイク・アルシェ伯爵! 前へおいでください! ご婚約のお言葉をお願い致します!」
ルクレツィア様と俺の婚約、結婚確定の公式発表があった1週間後……
遂に遂に!
創世神大聖堂において、俺と6人の女子、ルクレツィア様、ジョルジエット様、アメリー様、シルヴェーヌさん、シャルロットさん、トリッシュさんの婚約、結婚確定のお披露目の式典が行われる事となった。
大聖堂はキャパが限られている為、花嫁となる女子の家族に、王族、王国貴族、一部の騎士等、関係者のみが入場。
押しかけるであろう王国民へは、音声のみをまず送り、式典終了後に、
俺以下7人が、大聖堂を出て姿を見せる事となっている。
ここで大きな問題がある。
本日来る王国民の大多数は、ルクレツィア様と俺の婚約の発表だと思っている。
ジョルジエット様以下5人の女子の婚約は、全くのサプライズ。
驚天動地の出来事なのである。
サプライズの段取りは先日打合せした通り。
まずルクレツィア様と俺の婚約発表。
ひと通り、教皇様からの話を承った後、ジョルジエット様達が入場。
おっかけで、婚約発表する事となる。
時間は少しさかのぼる。
……段取りを組むにあたり、こんなやりとりがあった。
ルクレツィア様は、
「世間より、俺があしざまに言われないよう、しっかりと話をしたい」
とご希望された。
いじらしいと思う。
ルクレツィア様の気持ちを無視は出来ない。
でも、俺は古いタイプの人間である。
女子は男子がまもるべきという思いがある。
自分の嫁なら尚更である。
俺は自分が説明し、矢面に立つと、ルクレツィア様を説得した。
でも、ルクレツィア様はひかない。
きっぱりと言い切る。
「私が最後にロイク様の婚約者となったのです。経緯を説明するのは当り前ですわ。これからの人生、ロイク様に頼りきりではいけないのです」
おお!
ルクレツィア様って、おとなしそうな見かけによらず、とても芯が強い女子なんだ。
でも困った!
全て丸投げにするなど出来ない!
ぱぱぱぱぱぱ!と考えた俺は、ひとつの結論へ至った。
「ルクレツィア様」
「は、はい」
「では、ご一緒に説明をしませんか」
「え? 一緒に?」
「はい! いろいろと、ご相談しながら、俺とルクレツィア様、初めての共同作業という事で!」
「ご相談しながら、ロイク様と私の、初めての共同作業ですか?」
今いち意味が分からないのだろう。
ルクレツィア様は、ぽかんとした。
夫婦初めての共同作業というくだりがよくある。
結婚式におけるウエディングケーキ入刀の場合が多い。
今回は、俺とルクレツィア様で都合6人の女子が花嫁となる経緯を説明するのだ。
王国の国益とか、思惑とか、政略結婚とか、
俺と結婚するメリットとか、
最後にはアレクサンドル陛下が、ご結婚を命じたなど……生臭い話はカットする。
ジョルジエット様、アメリー様が俺に救われた事から生じた恋心。
ふたりと話したルクレツィア様が、自分も素敵な相手と出会い、結ばれ、
故郷で幸せになりたいという想い。
秘書達が俺を支えるうちに、芽生えた愛など……をメインに話す。
相手に理解して貰うべく、少し話を変更したり、盛り込みもしながら、
本当の内情を知る当事者以外が、納得出来るような整合性ある話とする。
それが俺とルクレツィア様、初めての共同作業。
結婚式におけるウエディングケーキ入刀とか、俺の前世のそんな話をし、
理由をあげて、説得したら……
ルクレツィア様は、俺との結婚式における、
ウエディングケーキ入刀の光景をかぶらせて想像したみたい。
「うふふふふ♡ 誰にでも納得して貰う為、説得する! ロイク様と私の、初めての共同作業って! 嬉しいっ! でもでも! 一緒にウエディングケーキへ入刀もしましょうね♡」
そう言って、納得し了解してくれたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
という事で、定められた時間が来て、教皇様の話が始まった。
音声は、魔導拡声器で、室外でも聞こえている。
多分、大聖堂へ入れない多くの王国民が聞き入っている事だろう。
俺の魔力感知には、熱い祝福の波動が伝わって来る。
「……オーガの大群5千体が発生した、未曽有の大災厄、大破壊も無事収束し、平和が戻ったファルコ王国へ、またもめでたい話が入って参りました!」
教皇様は出席者を見まわし、声を張り上げる。
「なんとなんと! 王女ルクレツィア様が、先日の勲章授与の際、大破壊を収束させた英雄ロイク・アルシェ伯爵と話をしたのがきっかけで恋が芽生え、短い月日の中ではありますが、ふたりで愛を育み、このたび婚約を致しました! アレクサンドル陛下も、とてもお喜びでございます!」
これから行う6人の花嫁の経緯と同様、王国の国益とか、思惑とか、政略結婚とか、
俺と結婚するメリットとか、……生臭い話は当然ながらカットしていた。
ちょっと苦しいメイキングストーリーだが、ほぼ事実だし、まあ、仕方ないだろう。
でも、ルクレツィア様と俺が結ばれるもっともらしき理由は、
勲章のプレゼンテーターの際、王女が、英雄を見初めた末の結婚……これしかない。
教皇様のスピーチを聞き、
最上位の貴賓席に座ったアレクサンドル陛下が「うんうん」と満足そうに頷く。
少し離れた席では、グレゴワール様も同じく頷いていた。
微笑んだ教皇様は、こほんと咳払いし、話を続ける。
「大破壊の収束も! このご婚約も! 偉大なる創世神様のご加護のたまものであり、皆様には結ばれるおふたりを温かく見守って頂きたいと、当教会も心から願っております。ちなみにご結婚の式は、ルクレツィア様がご在学中のロジエ女子学園をご卒業される、再来年以降を予定しております」
こうして、教皇様の話が終わり……
「さあっ! ルクレツィア様! ロイク・アルシェ伯爵! 前へおいでください! ご出席の皆様へ、聖堂外の王国民達へ、ご婚約のお言葉をお願い致します!」
俺とルクレツィア様は顔を見合わせる。
「ではルクレツィア様、参りましょう。エスコート致します」
「うふふ♡ ロイク・アルシェ伯爵様、宜しくお願い致します」
満面の笑みでルクレツィア様は言い、そっと手を差し出して来た。
以前経験しているから、俺もルクレツィア様も臆したりはしない。
「失礼します。ルクレツィア様!」
という事で、俺は、ルクレツィア様へ手を差し出し、
彼女の手をしっかりと取ったのである。
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