第251話「まあ、終わり良ければ総て良し」

「ばっかもおおおおおんんんん!!!!!!!!」


とギルドマスター、テオドール・クラヴリーさんから、

雷を落とされたりと、いろいろあったが……


「分かった! 特例という事で認める! 但し、当冒険者ギルドを辞す事はない! エヴラール・バシュレが、いち冒険者として、ギルドに籍を置きつつ、ロイク・アルシェ伯爵閣下の直臣となる事を許そう!」


冒険者ギルドのサブマスター、エヴラール・バシュレさんは、

俺の直臣となる事が正式に決まった。


また今回は『特例』として、

エヴラールさんが、冒険者ギルドにいち冒険者として籍を置いたまま、

俺に直接仕える事を、テオドールさんが許可してくれた。


直臣となったら、サブマスターは兼務出来ない。

だが、冒険者ギルドに籍があれば、今後、何かの役に立つ事もあるだろうという、

テオドールさんの判断、深謀遠慮だ。


晴れて直臣となったエヴラールさんは、王国執行官の仕事を補佐し、

ルナール商会の業務もフォローする事となる。


いや、それだけじゃない。

俺の仕事の幅は更に多岐となり、どんどん広がって行く。


エヴラールさんは、俺の片腕として、実戦部門で大いに働いて貰う。


事務方の片腕である俺の秘書達と共にだ。


ここで「はい!」と手を挙げたのは、エヴラールさんの秘書クロエ・オリオルさん。


「ギルドマスター! お願い申し上げます! 私も引き続き、エヴ……いえ、バシュレさんの秘書を務めさせて頂きたいのです! ですから、私は冒険者ギルドを辞したいと思います」


エヴラールさんがサブマスターを辞し、俺の直臣となれば、サブマスター秘書であるクロエさんは、人事異動で、誰か他の人の秘書となるだろう。


今回の経緯でよ~く分かったが、

クロエさんはエヴラールさんを深く真剣に愛している。


もし彼女がエヴラールさんへついて行きたいのなら、

俺も一緒に受け入れたいと思う。


何故なら、トレゾール公地でドラゴン討伐の合間に話して、

エヴラールさんには現在彼女は居ない事。


日頃尽くしてくれるクロエさんを、憎からず思っている事も確認済みだったのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


クロエさんの『直訴』を聞いたギルドマスターのテオドールさん。


うんうん、と頷き、俺へ言う。


「ふむ、最高顧問は……いえ、ロイク・アルシェ伯爵閣下はいかがですかな? クロエも一緒に、アルシェ伯爵家の家臣として頂けますか?」


「はい、俺には全然異存はありません。優秀なクロエさんなら当家は大歓迎です」


「あ、ありがとうございます! ロイク・アルシェ伯爵閣下!」


俺に優秀だ、大歓迎だと言われ、喜び、頭を下げる、クロエさん。


そんな様子を見て、テオドールさんは、柔らかく微笑む。


テオドールさんも、クロエさんの『想い』を分かっている。


野暮な事は言わない。


「そうですか。ありがとうございます、ロイク・アルシェ伯爵閣下。エヴラールとクロエを宜しくお願い致します」


「分かりました! 任せてください! エヴラールさんも構わないね?」


テオドールさんへ言葉を戻した俺は、エヴラールさんへも念を押す。

『責任』を取れよという意味も含めて。


まあ、相思相愛という事で、一件落着だろう。


対してエヴラールさんは即答。


「は、はい! それはもう!」


……これで、エヴラールさん、クロエさんをアルシェ伯爵家の家臣として、迎える事が出来た。


でもまだまだ人材不足。


前世の戦国武将、織田信長の如く、有望な人材が居れば、

身分に関係なく取り立てて行こうと俺は思う。


さてさて!


話がめでたくまとまったので、そのままギルドマスター専用応接室で、

俺達は懇親を深める。


運ばれて来たお茶を飲み、焼き菓子を食べながら、話は盛り上がる。


話題は当然、トレゾール公地における真夜中の竜退治。


テオドールさんが聞き、エヴラールさんにしゃべらせるという形で話は進む。


エヴラールさんは、身近かで俺の戦いを見ていた。


多分だが、俺にメインでしゃべらせると自慢になるから、やりにくいだろうという、

テオドールさんのこれまた深謀遠慮であろう。


という事で、話すうちに、

エヴラールさんの記憶がどんどんリアルに甦って来たらしい。


興奮したエヴラールさんの口ぶりがヒートアップ。

活劇ロマン風に、勇者の英雄譚として語り、身振り手振りまで入ってしまう。


応接室の中には、他にしゃべる者はなく、エヴラールさんの声だけが響いている。


俺以外は真剣かつ熱心に、手に汗握り、聞き入っていた。


ううむ……


こういう時、えっへんと威張り、自慢する者も居るが、俺は絶対に無理。


結構恥ずかしかった。


まあ、終わり良ければ総て良し。


テオドールさんへの報告は、和やかに、和気あいあいで終わったのである。

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