第241話「おお、やはりロイク・アルシェに転生しても、 俺とエヴラールさんの息は合っている」
俺も、もっと強い相手と戦いたい。最高顧問がドラゴンを討伐したみたいに。
強敵との戦いを願う、エヴラールさんの希望は、土壇場で叶ったといえよう。
そう、ケルベロスからの通報で、分かった。
ドラゴン……ノーマルタイプの火竜が出現したのだ。
俺の索敵……魔力感知にも、
ドラゴン10体の気配、存在をはっきりと捕捉していた。
このままだと、確実にロッジへ来る。
最悪、ケルベロスへ丸投げ出来るが、ドラゴン10体に苦戦はするだろうし、
主の威厳は保てない。
ここは戦うしかない。
しかしエヴラールさんは、まだドラゴンの出現に気づいていない。
魔法剣士たる彼も索敵の能力を有してはいる。
だが、有効範囲が俺に比べ、著しく狭い。
……でも、これって俺の責任だな。
既述したが、トレゾール公地は、侵入者のレベルにより、出現する魔物が変わる。
この前のように、俺とケルベロスが入ったから、ドラゴンが10体出現したのだ。
まあ、今後トレゾール公地は、俺ロイク・アルシェ伯爵の領地となる。
結構な手数料を王国へ支払うが、家族を養う為、ドラゴンを倒し、宝石を採集し、
ガンガン稼がねばならない。
これから行う討伐は、その予行演習だと思えば良いと思う。
しかし、俺とケルベロスがドラゴンと戦う前に、
まずは、エヴラールさんへの現状報告と謝罪が必要である。
「エヴラールさん」
「は、はい、最高顧問」
「申し訳ない」
俺がいきなり頭を下げ、謝ると、エヴラールさんは驚く。
「え? 申し訳ないとは? なぜ、最高顧問が、いきなり謝罪されるのですか?」
「はい、撤収が間に合いませんでした。公地の奥に、ドラゴンが出現しました。俺達の魔力にひかれ、すぐここへ来ます」
「ええええ!!?? ド、ドラゴン!!??」
「はい、ドラゴンです。それも10体、俺と使い魔がこの公地へ入ったからです」
「うおおお!!?? ド、ドラゴンがあ、じゅ、じゅ、10体!!??」
「まあ、任せてください」
「え!? 任せる!?」
「はい、この前戦ったので、俺と使い魔には問題ありません。倒してから、王都へ帰りましょう」
さくっと俺が言うと、エヴラールさんは、大きく目を見開き、口をあんぐり。
そして、大きな声で笑いだす。
「はははははははは! 呆れましたよ、最高顧問! やはり貴方は私とは次元が全然違う! 貴方は倒す前提でドラゴン10体と戦う。しかし私は挑む前提、手合わせしたい気持ちでドラゴンと戦う。ヤバくなったら、逃げる前提、それも1体かそこらですから!」
大笑いした後、一気にまくし立てたエヴラールさん。
吹っ切れたような表情で、
「ですが、私も剣聖とうたわれ、ギルドのサブマスターを務める男。最高顧問おひとりに戦わせるわけにはいきません。後詰として、しっかりバックアップさせて頂きます」
そう言い、晴れやかに笑ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
聞けば、エヴラールさんは、これまでドラゴンとの戦闘経験はないという。
後詰として、俺をバックアップすると申し出てくれた。
自分が表に出ず、後方支援に回ってくれるという事。
それは確かにありがたい。
せっかく生きて再会したのに、ここで万が一、エヴラールさんに何かあったら、悔やみきれない。
しかし、エヴラールさんのプライドも尊重したい。
いろいろな事を鑑みて、俺は、ぱぱぱぱぱぱぱ!と考える。
「分かりました。では簡単に作戦を立てます」
と、俺は言い、作戦を告げる。
「まずは、俺が使い魔とともにドラゴン10体と戦います。万が一、何かあったら、エヴラールさんへ合図をしますが、とりあえず、待機していてください。ドラゴンどもを、かく乱しながら、各個撃破主義で行きます。数を減らす事を第一に優先します」
そう、作戦は基本的にこの前と同じ。
相違点は、エヴラールさんの存在の有無のみである。
「成る程」
「状況によって、後はエヴラールさんへ頼む、とかの場合は宜しくお願い致します」
基本的に、エヴラールさんは聡明。
俺の意図をすぐに見抜いた。
「ははは、最高顧問、お気遣い頂きありがとうございます。私は基本、待機。最高顧問の戦いぶりを見て、行けそうだったら、私も戦闘に参加するようにとのご指示ですね?」
おお、さすが、エヴラールさん。
誇り高い人だが、わきまえるべき時はわきまえる。
アラン・モーリアでプレイしていた時、連携の呼吸がぴったり合っていた事を思い出し、ひどく懐かしい。
なので、俺は更に言う。
「ええ、ズバリそうです。俺とドラゴンの戦いを見て、奴らの動きや癖を見切ってください」
「おお、最高顧問とドラゴンの戦いを見て、私が奴らの動きや癖を見切る。であれば初見の不利はだいぶなくなりますね。助かります!」
おお、やはりロイク・アルシェに転生しても、
俺とエヴラールさんの息は合っている。
となれば、少しカミングアウトしても構わないだろう。
「ええ、俺も同じですよ。使い魔に陽動して貰い、見極める事によって、ドラゴンに対し、アドバンテージを取る事が出来ましたから」
「成る程。分かりました。ありがとうございます」
使い魔とは、本来は戦闘には不向きのメッセンジャー。
ドラゴンと渡り合えるはずがない。
という事は、俺が連れているケルベロスが『上位の魔獣』であると気づいたはずだ。
俺の言葉を聞いたエヴラールさんは、にっこりと微笑み、大きく頷いたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます