第200話「この人は、騎士道を具現化したように誠実な人だ」

※第200話到達です!


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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


翌朝、午前4時。


いつもの日常が戻って来た。

革鎧を着て支度をした俺は、騎士達とともに訓練を行う為、4時30分に公爵家邸内にある闘技場へ。


……昨夜、グレゴワール様から話があった。


2日後に、王立闘技場において、俺、王国執行官ロイク・アルシェの名を出し、

大破壊収束の正式発表を行う。

功労者と認識させた俺へ爵位を与え、貴族に……それも上級貴族の伯爵にする。


そんなスペシャルイベントが待って待っているのだが、

セッティングは、全てグレゴワール様が手配する。


俺は、何かやれる事はないかと伝えたたが、

オーガ5千体を倒したら、もう充分、後は任せておけと言われたのだ。


なので、主役の俺は、事前に進行等段取りを確認。

当日正装し、討伐したオーガ展示の準備の為、早めに会場入りだけする。


別棟を出たところで、背後から声をかけられる。


「おはようございます! ロイク様!」


後ろを振り返らなくとも気配と声で分かる。


声をかけて来たのは、昨夜、俺が嫁にと求め、プロポーズを受け入れてくれた女子、麗しきシルヴェーヌさんだ。


昨夜、シャルロットさん、トリッシュさんから散々突っ込まれ、

「私、これからは素直になります」宣言をしたばかりだ。


「おはよう! シルヴェーヌさん!」


「うふふふ♡ 今日も一日、頑張っていきましょうね!」


にっこにこのシルヴェーヌさん。

やる気満々、上機嫌。


昨夜の余韻が残っているらしく、寄り添うように俺の真横に立った。

さすがにジョルジエット様、アメリー様みたいに抱きつき、ホールドはしないけど。


「ロイク様」


「おお、何だい?」


「はい、私の両親は10年前に亡くなっています。まずは親代わりに私を守り、面倒をみて貰った兄のバジルに、私の結婚話を、この喜びを伝えたいのです」


「ああ、シルヴェーヌさんの気持ちは分かるよ」


「ありがとうございます。そして午前5時にジョルジエット様、アメリー様が護身術の訓練にいらっしゃる際、おふたりにもお伝えし、共有して構いませんか?」


そう言われ、俺は少し考えてから答える。


大事な妹の結婚話なんだから、兄のバジルさんには伝えるべき。

そしてこの先、同じ妻として、シルヴェーヌさんが仲良く上手くやって行く観点からも、ジョルジエット様、アメリー様へも伝えるべき……だな。


「分かった、シルヴェーヌさん。………そうだな、バジルさん、ジョルジエット様、アメリー様には伝えても構わない。けれど、3人には、しっかり口止めしておこう」


「え? 兄、ジョルジエット様、アメリー様に口止めですか?」


「ああ、グレゴワール様へは絶対言わないようにね。グレゴワール様へは、俺とシルヴェーヌさんから先に、そして直接ご報告する形にする。絶対その方が良い。その後で聞いたという形で、3人には話を合わせて貰おう」


「そう致しますか?」


「ああ、シルヴェーヌさんは元々、グレゴワール様の第三秘書だし、それが筋だと思う」


「……筋ですか、そうですね、納得です。グレゴワール様のご身分とお立場、そしてお気持ちを考えれば、ロイク様のおっしゃる通りですわ」


「何だったら、俺からもバジルさん、ジョルジエット様、アメリー様へは、理由も言うから」


俺がそう言うと、シルヴェーヌさんは無言でじ~っと見つめて来る。


「……………………」


「どうかしたの?」


「いえ、前々から思っていましたが」


「前々から? 思っていた? 何を?」


「はいっ、ロイク様って、まだ16歳なのに全然そう思えません。中身はまるで大人の男性ですわ」


「え!?」


「とても思慮分別がおありです。いつも落ち着き払い、細やかな気配りをされますよね」


「うお!?」


どきっとした。

びっくりした。


いきなり!

鋭い突っ込み!

女子のカンって事?


たらたらたらと、『滝汗が流れそうになる』のを何とかこらえ、

シルヴェーヌさんを促し、俺は闘技場へ向かったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


俺とシルヴェーヌさんが闘技場へ入ると、


おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!


ストレッチをしていた騎士達が、

大歓声を上げる。


彼らは『出撃組』ではなかったので、あの時、闘技場には居なかった。

そして俺が一旦、このリヴァロル公爵家邸へ戻った時も状況は伝わっていない。


今回、王国民へ知らせる前に、

グレゴワール様から『内々』で、「詳しい事情を周知された」という次第だ。


「おお!! ロイク様だあ!!」

「ああ!! ロイク様あ!!」

「うおおお!! たったおひとりでオーガ5千体を倒し!! 大破壊を収束させた英雄だあ!!」


興奮した騎士達は「ばたばたばた!」と走って来て、次々に手を伸ばして来た。

握手を求めているのだ。

まるで、王立闘技場で行った握手会の再現である。


ここで興奮する騎士達をいさめ収めたのは、まとめ役の警護主任バジルさん、


「こらこらこら、朝っぱらから、お前達いいかげんにしないか」


そして、俺へ向かい、深く一礼する。

ちなみにバジルさんは、まだルクレツィア様の件、俺が伯爵になる件を知らない。

可愛がった妹さんが俺と結婚する事も……


この人は、騎士道を具現化したように誠実な人だ。

平民である俺の実力を認め、礼を尽くしてくれたっけ……

そして、ジョルジエット様、アメリー様との警護デートの際も尽力してくれた。


バジルさんは、一礼した後、声を張り上げる。


「おはようございます! ロイク様!」


「おはようございます! バジルさん」


「ロイク様! この度は! 単身でオーガ5千体討伐! 大破壊収束! という、見事な勝利を収められ、おめでとうございます!」


「ありがとうございます」


「ボドワン・ブルデュー辺境伯麾下2,000名の危機を救い! そして! オーガに襲われそうになった数多の王国民の命と財産を救い! バシュラール将軍、騎士、兵士達のメンツをも守った! 私は! 素晴らしいと思います!」


「重ね重ね、ありがとうございます。バジルさんから励みになるお言葉を頂き、嬉しいです」


自分の事のように嬉しそうに且つ、誇らしく言うバジルさんへ、

俺は「シルヴェーヌさんと一緒に、結婚の話を伝える」と決めたのである。

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