第199話「うううう……貴女達、おぼえてらっしゃい」

「はい、シルヴェーヌさん、俺の嫁になってください! いや、貴女を絶対に俺の嫁にします!」


きっぱり言ったプロポーズ。

最後は、強引に俺は言い切った。


対して、驚くを遥かに超え、驚愕するシルヴェーヌさん。


「え、ええ!!?? ええええっっっ!!?? わ、わ、わ、私を妻にいい!!?? ロイク様!!?? ほ、ほ、ほ、本気ですかあ!!??」


シルヴェーヌさんの問いに対し、敬語をやめ、ため口で言い返す俺。


「ああ、本気だよ」


「だ、だって! 私は25歳。ロイク様より9歳も年上ですよ!」


「年齢は関係ない。アメリー以外は全員年上だ」


そう、俺の嫁になる女子は、シャルロットさんは23歳、トリッシュさんは19歳、

ルクレツィア様、ジョルジエット様が17歳、アメリー様だけが年下の15歳なのだ。


「で、でも……私なんか、何のとりえもない女です」


「私なんか何のとりえもない? 何言ってる? そんな事ない!」


「で、でも……」


「シルヴェーヌは、麗しく美しく冷静沈着。大人の魅力に満ち溢れ……時には少女のように可憐な女子だ」


俺は思っている事をはっきり言った。

何故、ここまではっきり言えるのか。


前世で大人気のクールビューティー女優にそっくりなシルヴェーヌさんは、

顔も性格も、転生前のケン・アキヤマの、ストライクど真ん中だったからだ。

年齢もケン・アキヤマと同じ25歳だしね。


「そ、そんな!? ロ、ロイク様、ほ、ほめ過ぎです……」


「はっきり言うぞ。シルヴェーヌは魅力的な女子だ。もっと自信を持て。俺に見せている、いつもの堂々としたシルヴェーヌが好きだ」


俺がきっぱり言うと、シルヴェーヌさんは再び真っ赤になった。

美しい人が恥じらうと、すっごく可愛いな。


「………………」


「シルヴェーヌ! 妻として、女子達のまとめ役として、秘書として、公私ともども俺を支えて欲しい!」


「………………」


「もう一度言おう、シルヴェーヌ。俺の嫁になって欲しい! 嫌か?」


そう言った俺は微笑み、シルヴェーヌさんをじっと見る。


「そ、そ、そんな! い、い、嫌ではありません! と、と、とっても嬉しいですっ! で、で、でも! わ、わ、私なんかが!」


「そうか! ありがとう。でも、私なんかはもう不要だ」


俺は立ち上がると、シルヴェーヌさんの傍へ行き、手を取って立ち上がらせた。


「え!? な、何を!?」


「心配するな、シルヴェーヌ。お前を抱きしめるだけだ。キス以降は、いろいろと決着がついてからだよ。ルクレツィア様の事とかな」


補足しよう。


ステディ・リインカネーションの世界では身分の序列にこだわる。

シャルロットさんとの婚約が内定したが、未発表なのはその為だ。

身分の頂点に位置する王族のルクレツィア様が最優先。


婚約発表もキスもその他もろもろも、儀式的な行為は、一番先にしなければならない。


俺の発言をすぐ理解。

シルヴェーヌさんは「うふふ」と笑った。

まだ少し顔が赤いが、やっと、いつもの彼女に戻ったようだ。


「分かりましたわ、ロイク様♡」


「そういえば、俺にするつもりだったシルヴェーヌの話って、何かな?」


「な、なんでもありませんわ、うふふふふっ♡」


晴れやかな笑顔のシルヴェーヌさんを、俺は優しくきゅ!と抱きしめ、

彼女も俺をぎゅ!と抱いてくれたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


そんなこんなで、シルヴェーヌさんとも結婚する事にした俺。


既に時刻は午後9時30分を回っていたが……

シャルロットさん、トリッシュさんを書斎へ呼ぶ。


ふたりへ、今確定した事実を伝えた方が良いと思ったのだ。


時間が時間なので、本館に居る、

グレゴワール様、ジョルジエット様、アメリー様には明日伝える事にした。


ちなみに、シルヴェーヌさんへの『口説きモード』が終わったので、

口調も、ため口から、敬語へ戻す。


6人の女子とは正式に婚約、結婚してからは、ため口にするつもりだ。

伯爵になるとはいえ、元、ど平民の俺が、王族、貴族とため口。


多分、ジョルジエット様、アメリー様は大丈夫。

怒らないと思う。


ルクレツィア様の性格は気にはなるが、まあ何とかなるだろう。


さてさて!

5分もかからず、シャルロットさん、トリッシュさんがやって来た。


俺がシルヴェーヌさんと結婚する事を伝えると……

シャルロットさん、トリッシュさんは、顔を見合わせてにっこり。


「おめでとうございます! ロイク様! シルヴェーヌさん!」


「本当に良かったですう! これで安心でっす! おめでとうございまあす!」


と祝福してくれた。


シルヴェーヌさんも俺と結婚する事が決まったから、

更に仲間意識が盛り上がった。


話が弾む、弾む。


シャルロットさんが、いたずらっぽく笑う。


「私とトリッシュさんも、凄く心配していましたけど、ロイク様が国境へ向け、オーガ退治に出撃した後、シルヴェーヌさんは私達の中で、一番心配していたんですよ」


トリッシュさんも追随。


「そうでっす! シルヴェーヌさんは、ロイク様、大丈夫かしら! 大丈夫かしらあって! 大泣きしそうになっておろおろして、いつものクールビューティーさが全くなかったでっす」


おお、そんな事があったんだ。

シルヴェーヌさん、そんなに心配してくれていたんだ。


更にシャルロットさん、トリッシュさんは言う。


「私達みたいに、ロイク様の事、素直に好きって言えなかったから、シルヴェーヌさん」


「はあい、人間、正直なのが一番でっすよ」


「うううう……貴女達、おぼえてらっしゃい」


後輩ふたりにネタバレされ、悔しそうに唸るシルヴェーヌさん。


「まあまあまあ、皆、おいで」


「「「はあ~い」」」


俺は、将来嫁になる可愛い女子3人を、優しく抱きしめたのである。

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