第198話「じゃあ、俺! 立候補します!」

グレゴワール様の話が終わり、俺、ジョルジエット様、アメリー様、

シルヴェーヌさん、シャルロットさん、トリッシュさんと、情報を共有する事が出来た。


4人で、普段暮らしている別棟へ戻る。


もう時間は午後9時を過ぎていた。

しかし、俺は決めていた。

シルヴェーヌさんと、話をしなければならないと。


自分の書斎へ入った俺は、魔導ベルを鳴らし、シルヴェーヌさんを呼び出す。


やがて……シルヴェーヌさんがやって来た。


「お呼びでしょうか……ロイク様」


「ええ、シルヴェーヌさん、夜遅くに申し訳ありませんが、貴女に話があります。座ってください」


着席を勧め、応接用の長椅子に向かい合って座る。


「失礼します……私も、ロイク様にお話が」


「そうですか、分かりました。申し訳ありませんが、俺の話の後にお聞きしますよ」


「は、はい。構いません。ではロイク様のお話を先にお聞きします」


「はい、では俺から先に話します。グレゴワール様のお話の通り、今後は環境が激変します」


「で、ですよね。王女ルクレツィア様を始めとして、皆様とのご婚約、そして伯爵におなりになる。あ、改めて申し上げます……お、おめでとうございます!」


「ありがとうございます。これからは王国執行官を始め、ルナール商会、冒険者ギルド等、他にも仕事もいろいろ増えて来るし、人間関係も多岐に亘り、複雑になると思います」


「はい、私も、ロイク様のおっしゃる通りだと思いますわ」


うん、つかみはOK。

ここで、きっぱりと言わなければ。


「という事で。これからも、シルヴェーヌさんは、俺には絶対に必要な人材です!」


「これからも? 私が……ロイク様には絶対必要な人材なのですか?」


「はい、何度でも言います。シルヴェーヌさんは、俺には絶対に必要な人です」


俺が念を押すように強調すると、シルヴェーヌさんは驚き、大きく目を見開く。


「ほ、本当に!? わ、私がロイク様に絶対に必要!?」


「はい! 絶対に必要です! 引き続き筆頭秘書として、俺や新たな家族になる者達を支えて貰います」


「そ、それは勿論! そこまでおっしゃって頂けるのなら! 私を必要として頂けるのなら! 筆頭秘書としての責任を果たしたいと思います」


よし! はっきり言ってくれた。

これで、シルヴェーヌさんは秘書をやめたりはしない。

彼女は、しかるべき役目を与えれば、やる気を出して、頑張ってくれる女性だから。


「良かった! それで、ここからが本題です」


「ほ、本題!?」 


「はい、本題です。シルヴェーヌさんへ、お聞きします」


「は、はい、何なりと」


「正直に答えてください、約束して貰えますか?」


「は、はい、お約束致します」


「じゃあ、お聞きします。……シルヴェーヌさんは何か、悩んでいませんか?」


「え!? わ、私が悩む!?」


「はい、俺には分かります」


「分かる!?」


「はい! 少し前から俺は気付いていました」


「す、少し前から!? き、気付いていた!?」


「ええ! いつも凛とし晴れやかな、貴女の表情が時々曇るのを……それが凄く心配でした」


俺は言い、シルヴェーヌさんを「じっ」と見つめたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


対して、シルヴェーヌさんは、びっくりしたみたい。


「わ、私を!? ロイク様が心配!?」


「はい、心配です。ですから、シルヴェーヌさんが何の理由で悩んでいるのか、原因を教えてください」


「私の悩みを、原因を……」


「はい、さっき約束しましたからね、絶対教えて貰いますよ」


俺が突っ込むと、シルヴェーヌさん、口ごもり、顔が真っ赤に。

更に恥ずかしそうに、顔も伏せてしまう。


「ええっと、そ、そのお………………」


可愛く恥じらうシルヴェーヌさん。

おいおい、これって……もしや。


手応えを感じた俺は、更に突っ込む事にした。


「最近、シルヴェーヌさんが悩む表情になるのは、俺が女子達といろいろ話したり、仲良くしている時がほとんどです。どうしてですか?」


俺の問いに対し、シルヴェーヌさんは答えない。

無言である。


「……………………」


「じゃあ、質問を更に変えましょう」


「質問を更に変える……」


「はい、単刀直入に、ずばりお聞きします。シルヴェーヌさんは将来を誓い合った方、結婚を考えている方は、いらっしゃいますか?」


これって、我ながらド直球の質問だ。


対してシルヴェーヌさん、


「い、居ません! そんな方は! もう25歳で、がさつな元女子騎士で、しがない騎士爵家の娘ですから、貰ってくれる方など居ません!」


補足しよう。

ステディ・リインカネーションの女子の結婚適齢期とされているのは、

何と18歳から23歳。

俺が元居た現世とは全く価値観が違うが、25歳のシルヴェーヌさんは結婚適齢期を少しだけ過ぎているのだ。


そして仕事には自信をもって臨むシルヴェーヌさんも、

自分の魅力に関しては、控えめで、むしろ卑下する傾向がある。


ならば、俺は言おう。

5人も妻を持つハーレム野郎なのに、と言われても敢えて言おう。


俺は、麗しく美しく冷静沈着。

大人な魅力に満ち溢れ……時には少女のように可憐なシルヴェーヌさんが、

好ましいと思っている。


イメージとしては、前世のクールビューティーな某女優の雰囲気。

どストライクの女子なのだ。


その上、秘書の仕事がバリバリ出来て、女子達のまとめ役としても有能な彼女が、

公私ともども必要だから。


「貰ってくれる方など居ない? じゃあ、俺! 立候補します!」


「へ!? りりり、立候補!?」


「はい、シルヴェーヌさん、俺の嫁になってください! いや、貴女を絶対に俺の嫁にします!」


きっぱり言ったプロポーズ。

最後は、強引に俺は言い切ったのである。

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