第197話「……シルヴェーヌさんの様子を見て、俺はとても気になった」

ああ、超リア充。

爆発しろ!! と言われても反論出来ない。


そんな俺のリア充姿を、筆頭秘書のシルヴェーヌさんは、

ただひとり、複雑な表情で見つめていた。


……シルヴェーヌさんの様子を見て、俺はとても気になった。


何か懸念事項があるのだろうか?

仕事上の悩み? 健康の問題? それとも……


……まさか、俺に対して恋愛感情?


……いや、ありえない。


彼女はいつも毅然とし、冷静沈着なクールビューティー。

公私の区別をしっかりとつける女子で、

俺とはビジネスパートナーという関係だもの。


まあ、良い。

本館での夕食の後、落ち着いてから、シルヴェーヌさんとは話をすれば良いだろう。


……と、いう事で、本館の大広間で夕食。

グレゴワール様と俺も居て、久々に全員そろって集合!って感じか。


料理は、リヴァロル公爵家の専属料理長が腕を振るったご馳走。


凄く美味い!

ほっぺたが落ちそうな美味しさだ。


俺の両脇で、お約束の「あ~ん」攻撃をして来るジョルジエット様、アメリー様は、満面の笑みだ。


これまたお約束のように、グレゴワール様と一緒に食事をしている秘書達、

シルヴェーヌさん、シャルロットさん、トリッシュさんも晴れやかな笑顔。


……ああ、シルヴェーヌさん、笑顔が戻ってホッとしたよ。


周囲に控えた使用人達も皆、憑き物が落ちたようにさっぱりとしている。


全員が明るい原因は、はっきりしていた。

そう! オーガ5千体が発生した大破壊が収束したから。


ジョルジエット様、アメリー様の話を聞くと……

大破壊が収束し、非常事態宣言が解除され、暗く重かった王都の雰囲気は、

真逆といっていいくらい、明るくなったらしい。


そして!

大破壊収束の要となったのが俺ロイク・アルシェで、

バックアップしたのがグレゴワール様。

だから、ジョルジエット様、アメリー様は大喜びなのだ。


「ロイク様のような方が、将来私達の夫君になるなんて、凄く誇らしいですわ!」

「はい! ジョルジエット様のおっしゃる通り素敵です! 私達を悪漢からお救いくださったように、危機に陥ったファルコ王国を救って頂きましたっ!」


楽しい雰囲気のうちに、大広間での夕食は終了。


ここで、グレゴワール様が声を張り上げる。


「これから! 改めて話がある! 場所は私の書斎だ。お茶を飲みながら話そう! ロイク・アルシェ君、そしてジョルジエット、アメリー、ロイク君の秘書3人も来てくれたまえ!」


という事で、使用人にお茶と焼き菓子の支度をして貰い。

俺と女子5人は、グレゴワール様の書斎へ移動したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


グレゴワール様の書斎に移動し、招かれた以外は人払い。


限られた者達へ、グレゴワール様が話したのは、

先ほど俺へ告げられた内容とほぼ同じであった。


3日後に俺の名を出し、大破壊収束の正式発表。

場所は王立闘技場を使う事。


俺へ爵位を与え、貴族に……それも上級貴族の伯爵にする事。


そして、ジョルジエット様、アメリー様を正式に婚約させる事。

アメリー様のお父上、サニエ子爵の了解を取った事。


でも、一番大きな話は、やはり王女ルクレツィア様が、

「俺の嫁になる」という事だろう。


グレゴワール様の話を聞いたジョルジエット様、アメリー様の反応はといえば、

自分達の婚約が本決まりとなった事について、大いに満足し、またも満面の笑み。


そして『ルクレツィア様の件』は、さもありなんとばかり、

「うんうん!」と納得したように頷いていた。


でも俺、ルクレツィア様のお人柄って、あまり良く知らないんだよなあ……


ルクレツィア様の顔立ちは、兄上のアレクサンドル陛下に似た、

ジョルジエット様とはまた違うタイプの、金髪碧眼の超美少女だって事しか知らない。


決めた!

前々から考えてはいたが、後で、ジョルジエット様、アメリー様から、

ルクレツィア様の情報収集をしておこう。


一方、3人の秘書達の反応はといえば、これがそれぞれ違う。


様々な話に驚きながらも、セドリック会頭から手紙で知ったという俺との婚約話を、

グレゴワール様から、ふられたシャルロットさん。


頬をぽっと赤くし、


「私シャルロット・ルナールはふつつか者ですが、ロイク様と添い遂げる所存でございます! 何卒宜しくお願い致します!」


と言い切った。


そしてトリッシュさんも晴れやかな笑顔で、


「私パトリシア・ラクルテルは既にロイク様へ想いを伝えております。シャルロットさんと同じく! 添い遂げる所存でございます! ふつつか者ですが、何卒宜しくお願い致します!」


と、これまたきっぱりと言い切った。


そんな女子4人を見て、シルヴェーヌさんは少し強張った笑顔で、


「お、おめでとうございます! み、皆様のご多幸をお祈り申し上げます」


と少し、かすれた声で告げたのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る