第195話「ど平民だった俺は将来、このファルコ王国譜代の公爵になるんだ!」

さあ、グレゴワール様の話が始まるぞ。


軽く息を吐いた俺は、拳をぎゅ!と握った。


グレゴワール様は、笑顔で言う。


「改めて、大破壊を収束してくれた礼を言おう。本当にありがとう、ロイク・アルシェ君。君のお陰で何もかも上手く行った。尊い人命も失われずに済んだ。奇跡と言っても構わないだろう」


「……そこまでおっしゃって頂けると、頑張った甲斐があります」


「うむ、現状を説明しよう。君が丸一日眠っている間にどうなったかをね」


「お願いします」


「うむ、とりあえず王国全土に発令されてい非常事態宣言は解除された。『事実は後に正式発表する』として、『オーガ5千体は討伐され、大破壊は収束した』と陛下の名で、宰相の私が公式発表した。その結果王都を含め、各地は皆、王国民が喜び浮かれる騒ぎとなっている」


「『事実は後に正式発表する』……それって」


「ああ、討伐したロイク君の名はまだ伏せてあるのだ。あの時闘技場へ居た3万人の騎士兵士達にも厳しくかん口令を敷いてある」


「3万人にかん口令って……凄いですね」


「ああ、我がファルコ王国軍は、鉄の軍規が自慢だ。人数は関係なく、秘密は漏れない」


「成る程。それで俺は何をすれば宜しいでしょうか?」


「うむ、3日後に君の名を出し、大破壊収束の正式発表をする。場所は王立闘技場を使う」


「3日後に、大破壊収束の正式発表を、王立闘技場において、ですね?」


「ああ、その通りだ。その際、昨日君が一旦見せ、その後空間魔法で仕舞ったオーガどもの死骸を再び出して貰い展示し、闘技場を訪れた数多の王国民へ披露する」


「成る程」


「この前より多い数で頼むぞ。そうだな……5千体を出さなくても構わないが、闘技場のフィールドに展示する数は2千から3千体は頼む」


「了解です」


「実はお祭り騒ぎの陰で、疑っている者もある程度居る。だから論より証拠。目の前に3千体ものオーガの死骸を見せられれば、王国民達は否が応でも大破壊収束を納得するだろう」


「分かりました」


「うむ、その件がまずひとつ。次は君への爵位授与の件だ」


「え? 俺へ、爵位をくださるのですか?」


「ははは、前にも言っただろう。最初はジョルジエットとの結婚を円滑に運ぶ為、君をどこぞの貴族家へ養子にと考えていた。しかし、この際、大破壊収束の褒美のひとつとして、君へ爵位を授与する事にした」


「俺、遂に貴族になるんですか」


「ああ、そうだ。アレクサンドル陛下と話し、快諾して頂いた。バシュラール将軍と、ラグランジュ財務大臣も強力に後押し、推薦してくれたよ」


「え? 将軍と財務大臣が? 強力に後押し? 推薦?」


「ああ、ふたりとも君には、とても好意的なんだ」


何となく分かる……将軍は自分と部下のメンツを守って、

モチベーションを上げた事を、

財務大臣は、大破壊による王国国家予算の大損失を、防いでくれた事を評価してくれたに違いない。


「陛下のご承認、私、将軍、財務大臣の推薦という事で全く問題はない! ロイク・アルシェ君、おめでとう! 君は伯爵の爵位を授与される!」


グレゴワール様は、「にこっ」と笑い、きっぱりと言い切ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「うお! いきなり伯爵……ですか?」


補足しよう。

ステディ・リインカネーションの爵位制度は、

名誉職に近い騎士爵から始まり、正式な爵位である、男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵という並び。


俺みたいな、ど平民は爵位を貰えても、普通は騎士爵。

良くて男爵。


それがその上の子爵を飛び越え、伯爵だなんて。


「ははは、驚く事はない。未曾有の危機、大破壊をたったひとりで収束させたのだぞ。国王陛下直属の王国執行官という役職からも、伯爵がふさわしいのだ」


「は、はあ……ですか」


「ははははは! そして考えてみろ。君はゆくゆくジョルジエット、アメリー両名と結婚するんだぞ」


「え? ジョルジエット様、アメリー様両名と結婚!?」


おお!

何となくそうなるという認識はあったけど……

グレゴワール様から、はっきり言われると、

ジョルジエット様、アメリー様両名との結婚が、『リアルな現実』だと感じてしまう。


「ああ、ロイク君も当然知っているだろうが、我がファルコ王国は、一夫多妻制が認められておる! サニエ子爵には既に私から了解を取った。君とアメリーの子が次代のサニエ子爵家を継ぐ事となる!」


うお!

そこまで具体的に話が固まってるの!?


じゃ、じゃあ。

ジョルジエット様の方は?


「あの、グレゴワール様」


「うむ、何だ?」


「じゃあ、俺がジョルジエット様と結婚するって事は?」


俺が恐る恐る尋ねると、グレゴワール様は大笑い。


「ははははははははは!!! 分かっているだろう、ロイク・アルシェ君!!!」


「はあ、まあ……」


ええ、予想は出来るし、分かってはいますけど。


「いずれ君は私、グレゴワール・リヴァロルの後継者になる! 公爵家の跡を継ぐのだよ」


うわ!

きっぱり言われちゃった!


ど平民だった俺は将来、このファルコ王国譜代の公爵になるんだ!


「そして! 私の話にはまだ続きがある!」


グレゴワール様は、きっぱり言い切ると、またも「にこっ」と笑ったのである。

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