異世界ゲームへモブ転生！ 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件！

第174話「ここは、言葉に出して告げておく方が良いだろう」

いきなり勃発した大災害『大破壊』

隣国との国境付近に現れたオーガ５千体強！

大丈夫だ、行ける！

出来る限りオーガを倒して、ヤバくなったら撤退。

後は、騎士隊と王国軍３万名に任せる。

素早く戦いをシミュレーションした俺は、

確信を持って「大丈夫です」と言い切っていた。

しかし、グレゴワール様は心配なようだ。

「おいおい、ロイク君、相手はオーガ５千体強だよ、本当に大丈夫かね？」

秘書達も切ない眼差しを向けて来る。

「心配ですわ、ロイク様」

「せめて騎士隊と王国軍３万とともに出撃なされては」

「おひとりで大丈夫でしょうか……」

そんな4人へ俺は説明する。

「竜（ドラゴン）と比べて、オーガは防御力も全然低いし、炎の息という絶対的な火力も持たない。5千という数だけは多いですが、心配する事はありません」

「………………………」

俺の説明にも無言で応える4人。

「ほらほら！　大丈夫ですって。俺がトレゾール公地で竜を10体倒したのは厳然たる事実ですよ。その時ともに戦った使い魔も当然召喚して、戦いますから」

「………………………」

なおも無言の4人。

まあ、普通に考えたら、オーガ５千体強と人間がたったひとりでは戦わないよな。

ここで俺は改めて課せられた任務の確認をする。

「グレゴワール様。再度、確認ですが……俺がオーガを5千体全て倒さずとも、出来るだけ数を減らし、残存を少しでも長く足止めすればOKですよね？　その後、後詰で騎士隊と王国軍が３万名が討伐に赴くと」

「う、うむ、その通りだ。ああ、そうだ！　冒険者ギルドへもランカーへ緊急出動の要請をし、選抜隊の要請をしようと思っている。騎士隊、王国軍出動の後に出れるはずだ」

「了解です。じゃあ俺は早速出撃します。あ、馬は不要です。却（かえ）って足手まといになります。あと出現地域の地図とか、何か資料があれば頂きたいです」

「ああ、分かった、ウチの秘書がまとめた資料がある。すぐ渡そう」

「ありがとうございます！　俺は一旦、グレゴワール様のお屋敷へ戻り、装備を整え、支度をして出撃しますよ。それでグレゴワール様」

「お、おう！　必要なものがあれば、何でも持って行って構わんぞ」

「ご配慮、重ね重ね、ありがとうございます！　俺の留守中は、筆頭秘書のシルヴェーヌさんへ指示を入れて頂けますか。彼女がふたりの秘書を統括します」

「分かった！　とりあえずロイク君とともに屋敷へ戻り、ロイク君が出撃した後は、別棟でスタンバイして貰おう」

という事で、王宮における出撃前のやり取りは終了。

その後、俺は出現地域の地図等の資料……

及び「何か困った事があったら使え」と、

グレゴワール様から『王国執行官委任状』なるものを預かり、

リヴァロル公爵家邸へ、秘書3人とともに戻ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

リヴァロル公爵家の馬車で、公爵邸別棟へ。

馬車の車内はといえば、やはり空気が重く暗かった。

秘書達は、俺がオーガ5千体と戦うのが、ひどく心配らしい。

でも……

正直、俺はこれから赴く戦いよりも、トレゾール公地の依頼の方が、

遥かにプレッシャーがあった。

トレゾール公地は、討伐者の強さに比例して、魔物が出現する謎めいた魔境。

俺とケルベロスが赴き、どれくらいの魔物が出るのか、読み切れなかったからだ。

ここは、言葉に出して告げておく方が良いだろう。

「みんな、聞いて欲しい」

「………………………」

「念の為……油断は絶対にしないけど、俺、トレゾール公地の依頼の方が、凄く緊張したよ」

「………………………」

「で、実際に竜が10体も出て来て、どうしようかと思った。まあ何とかなったけどね」

「………………………」

「オーガ5千体は大変な数だし、結構な強敵だけど、竜10体に比べたら、全然プレッシャーは軽い。それに全部倒せってわけじゃないし」

「………………………」

「トレゾール公地の依頼に関しては、トリッシュさんに聞いてくれ。詳しいから！」

「………………………」

「最後に、俺が召喚する使い魔は、屈強な魔獣だ。奴もオーガなんか歯牙にもかけない」

そこまで話して、秘書達はようやく元気を取り戻してくれた。

表情にも、明るさが戻って来る。

シルヴェーヌさんとシャルロットさんは、トリッシュさんに対し、

トレゾール公地の依頼内容を根掘り葉掘り、尋ね始めた。

トリッシュさんは、面白おかしく俺が竜を10体倒して戻って来た事を話している。

こうして俺は、リヴァロル公爵邸へ戻り、必要なものを用意。

収納の腕輪へ放り込むと、笑顔の戻った秘書達に見送られ、出撃したのである。