第168話「確認したいのは、俺の立ち位置」

翌朝、俺と秘書達は、朝の訓練、本館での朝食、見送り、朝の合同連絡会議と、

定めたスケジュールを順調にこなし、出勤した。


昨日は冒険者ギルド、本日はルナール商会。

両方とも、『顧問』としての出勤である。


シャルロットさんが既に了解を取っているから、シルヴェーヌさん、トリッシュさんも同行しての全員出勤である。


馬車内の秘書達は昨夜同様に対照的である。


シャルロットさん、トリッシュさんは晴れやかな笑顔で話しているが、

シルヴェーヌさんだけは、ひどく真剣な表情で考え込んでいた。


何を考え込んでいるか予想はつくが、俺からは、かける言葉が見つからない。

それに今この場でのフォローは困難である。

後で、状況を見て、フォローしておこう……


さてさて!

商業街区のルナール商会本館に到着すると、昨日のトリッシュさんのように、

今回は、シャルロットさんが『先導』する。


受付に『出勤』の一報を入れ、そのまま俺達一行は、商会の奥へ進む。


通路を進み、いくつか角を曲がった突き当り。

『ロイク・アルシェ顧問室』と木札が掛かった重厚で大きな扉があった。


施錠されていたらしく、シャルロットさんが取り出した鍵で解錠。


解錠した扉を開ければ、小さな簡易受付が備えられていた。

カウンターと椅子があるが、当然ながら無人だ。


その簡易受付をはさみ、ふたつの通路が分かれている。

通路の奥には扉がある。


「右側がオフィス、左側が応接室へつながっています。室内でもオフィスと応接室が行き来出来ますわ」


成る程。

普段はオフィスで仕事をしつつ、来客があったら、応接室へ通して対応すればいいって事か。


まずはさっきの本受付を通し、それからこの簡易受付でチェックか……結構、厳重だ。


「ロイク様、オフィスと応接室、どちらから、ご覧になりますか?」


「オフィスにしよう。応接室はオフィスから見れるんだろう?」


「はい、扉でつながっておりますわ」


「了解。じゃあ、オフィスへ」


「はい!」


ということで、俺と秘書達はオフィスへ。


「こちらが、ロイク様のお部屋ですわ」


笑顔のシャルロットさんはそう言い、かちゃと、解錠した。

続いて、のぶを掴み回し、がちゃりと、扉を開いた。


おお、まるで昨日のデジャヴュ。

同じシーンを再び見ているようだ。


俺達は中へ入った。


ファーストインプレッション!

部屋は、凄く広い!


王宮、ギルドと比べ、一番広い。

30畳以上はある広さだ。


そして、備え付けの俺の事務机、椅子も重厚な雰囲気の高価そうなセットである。


置いてあるシャルロットさん達秘書3人の事務机に椅子。

書類入れを兼ねた書架。

それらも、結構値が張りそうなものばかりだ。


念の為、これは張り合っているとかじゃない、と思う。

まあ、少しはあるかもしれないが……


ここまで部屋を広く且つ高価な設備にしてくれたのは、

俺が王都へ出て来る際、オーバンさんと商隊を救い、

更にいくつかの依頼を完遂し、商会に大きく貢献したからだと思う。


でも……

シルヴェーヌさん、トリッシュさんは少し悔しかったみたい。


ふたりとも、渋い表情で部屋を見つめていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


オフィスを見て、各所をチェック。

各自が席について椅子に座ったりした後、応接室もチェック。


こちらも豪華な長椅子、テーブルなどのセットが目を引く、

リッチな雰囲気のする部屋であった。


多分、大きな取引先と打合せをするにあたり、

俺も立ち合わせるとかが、あるやもしれない。


オフィスと応接室をひと通り見た後……シャルロットさんは、


「ではそろそろ、セドリックとオーバンを、こちらへ呼んで参りますね。応接室でお待ちください」


そう、今日はこれから、

セドリック会頭と理事のオーバンさんを入れてあいさつと打合せをするのだ。


出て行ったシャルロットさんは、約5分後……


セドリック会頭と理事のオーバンさんを連れて、応接室へ戻って来た。

直ぐ来たのは、ふたりとも、スタンバっていたらしい。


まずはあいさつ。


俺が最初に、3つの役職を兼ねる事を前提に、

顧問として、頑張りますみたいなあいさつ。


次に秘書達。


確か、シルヴェーヌさん、トリッシュさんは、

ふたりとは初対面……だったかな。


と思ったら、シルヴェーヌさんはセドリック会頭とは面識があった。


グレゴワール様の第三秘書時代に、会った事があるようだ。


でもオーバンさんとは初対面。


シルヴェーヌさんが、あいさつをした後、

トリッシュさんは、ふたりと初対面のあいさつ。


そんなこんなで、一連のあいさつが終わり……6人で打合せ。


ここで確認したいのは、俺の立ち位置。

予想はある程度ついてはいるが、仕事の範疇を知りたい。


言葉を選びつつ、聞いてみたのである。

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