第166話「ジョルジエット様、アメリー様はどうするの?」

本館におけるグレゴワール様との打ち合わせの後、

別棟にて、俺と秘書3人で1時間ほど打合せをすることとなった。


という事で、俺達4人は書斎に居る。


議題は当然ながら、ルクレツィア様の件である。


そもそも、俺はアラン・モーリアであった時も、ルクレツィア様の事をあまり知らない。


遠くから眺めて、見目麗しいと思っただけだ。


聞けば、シルヴェーヌさんも、騎士時代も、グレゴワール様の秘書になってからも、ルクレツィア様とは直接話した事がなく、遠くから眺めただけ。

俺と全く同じである。


「ロイク様、残念ながら現時点では、ルクレツィア様の情報は充分ではありません。まずは論点を整理しましょう。私がまとめ役をしても構いませんか?」


うん!

その通りだな!


「OK! 了解だ」


「では……」


こほんと咳払いし……シルヴェーヌさんは話し始める。


「国王陛下と閣下は、意見が一致しております。ロイク様にルクレツィア様をめとって頂きたいのですよ。その為には、ルクレツィア様を娶っても、どこからも文句が出ないよう、有無を言わさないよう、ロイク様が内外へ、しっかりアピールする事が肝要ですわ」


シルヴェーヌさん、俺とほぼ同じ事、考えてるな。


「ロイク様の実力が勇者級だと認定されたら、アレクサンドル陛下はご結婚を命じ、ルクレツィア様と結ばれる事は叶うでしょう」


まあ、そういう前提で、これから準備するんだよな。


「とはいえ、ご結婚されて、暮らして行く為には、ルクレツィア様に好いて頂くのが望ましいのです。ルクレツィア様に嫌われないよう、初めてお会いする時は、ファーストインプレッションには充分ご注意されるように」


確かに!

最初が肝心って、ことわざもあるよな。


「そして、武術大会が実施される前に、ルクレツィア様へお伝えする、大義名分が必要です」


大義名分?

俺が???マークを飛ばすと、


「はい、女子は身分年齢を問わず、白馬の王子様、そして自分を救ってくれるナイトを待つものなのですわ」


あ、ああ、そうかあ……


「ロイク様を国王陛下がお認めになった事を、ルクレツィア様へ、はっきりとお伝えし……そして貴女を娶る為に栄光の勝利を! 心より誓うのです」


成る程。

まあ、男の俺だって、もしも逆の立場だったら、心躍るものなあ。


「シルヴェーヌさん、おっしゃる事わかりますわ!」

「私も大いに同意ですよお!」


シャルロットさん、トリッシュさんも、賛成の挙手をした。


しかし!

さっきの白馬の王子様、そして自分を救ってくれるナイトを待つで思い出したけど……ジョルジエット様、アメリー様はどうなるんだろう?


ふたりこそ、俺が暴漢から救って白馬の王子様、ナイト体験をしたから、

俺に好意を持ってくれたんだろう。


「はい! ロイク様と結ばれたい! 私は本気ですわ!」

「私も! ロイク様と一生、添い遂げたいと思っております!」


と、熱く決意を語っていたじゃないか。


グレゴワール様が話すと言っていたけれど……一体どうなるんだろう?


と、その時。

噂をすれば影。


とんとんとん!

書斎の扉がノックされた。


「皆様、夜分、恐れ入ります。家令のデルフィーヌ・ブルジェでございます」


ああ、別棟の家令のデルフィーヌさんか。


「ただいま、ジョルジエット様、アメリー様がいらっしゃいました。皆様へ緊急でお話があるそうです」


緊急でお話?

もう夜の10時30分を回っている……

こんな時間に、何だろう?


でも何か、急ぎで特別な用件がありそうだ。

絶対に会った方が◎!


俺が目くばせすると、シルヴェーヌさん、シャルロットさん、トリッシュさんも頷いた。


「構いません。デルフィーヌさん通してください。今、扉を開けますから」


俺は立ち上がり、書斎の扉を開けたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


デルフィーヌさんに連れられたジョルジエット様、アメリー様。


「お父様から、話は聞きましたわ。それで、これはすぐロイク様へ話をしなければと、お父様に了解を得て、この別棟へ、アメリーとともに参りました」


そう、ジョルジエット様が言い、


「当然、護衛役のアンヌとジュリーに送って貰いました。帰りも一緒です。ふたりはこの別棟の大広間で待機させております」


と、アメリー様も。


成る程。

ならば安心だな。


「早速、本題に入ります。ロイク様」

「私達から、お願い致しますわ」


「は、はい」


「単刀直入に申し上げます。ロジエ女子学園において、本日のお昼休み、既にルクレツィア様と私達は話をし、心をひとつにしております」

「はい、堅く堅く! 3人で決めました」


「心をひとつ……3人で決めた」


「はい! ロイク様! ファルコ王国王家主催武術大会を勝ち抜き、優勝し、ルクレツィア様へプロポーズしてくださいな」

「ルクレツィア様へ、ロイク様の圧倒的な強さを見せてくださいませませえ!」


え?

それって!?


ジョルジエット様、アメリー様はどうするの?


ここは聞かずにはいられない。


「あ、あの~。俺がルクレツィア様へプロポーズって……ジョルジエット様、アメリー様は?」


そんな俺の問いに対し、


「当然、ルクレツィア様、私、アメリーの3人で一緒に結婚しますわ」

「3人の決意は絶対に、ゆるぎません!」


ええええ!?

もう!!

ルクレツィア様と話をつけたの?


そんな俺の視線を、

ジョルジエット様、アメリー様は笑顔で、がっつりと受け止めていたのである。

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