第163話「今夜は朝食同様、夕食も、本館で摂るのがベストだろう」
トリッシュさんは必要以上に、俺をとんでもなく『神格化』している。
単に「憧れている」というレベル以上だ。
そんな神格化の気持ちが、
シルヴェーヌさん、シャルロットさん達他の秘書にも伝わり、
午前中同様、変に盛り上がってしまった。
秘書達3人は、目を輝かせ、話に花を咲かせる。
ドラゴンを10体討伐した俺ロイク・アルシェは、
やっぱり予言にあった伝説の勇者だとか、
魔物に脅かされるこの世界の為に、凄い使命を帯びて生まれて来たとか……
……うわ! そんな馬鹿な。
何言ってるの?
と思うが、秘書達は結構真剣だった。
何故なら、ステディ・リインカネーションの世界は、俺が生きていた世界よりも、
格段に信心深いのだ。
以前……
召喚した魔獣ケルベロスが、謎めいた「裏がある」事は言っていたから、
俺の転生に神様が絡んでいるとか、『何か』秘密がありそうな気はする。
けど……秘密があろうとなかろうと、あまり関係はない。
俺は、転生したこのステディ・リインカネーションの世界で、
ただただ幸せになりたいだけ。
一生を共に出来る愛する家族を得て、生き甲斐のある仕事をし、
生活に困らない金を稼ぐ……
前世のダークサイド会社で、道具のように散々こき使われた反動で、
絶対、1億倍幸せになる! と決めたんだ。
ロイク・アルシェ転生の際、与えられたアラン・モーリアの初期設定。
能力は素晴らしいけれど、諸刃の剣とも言える。
下手をすれば、トリッシュさん達が言うように、神格化され、
伝説の勇者に祭り上げられた挙句、王家により良いようにあごで使われてしまう。
幸い、能力が露見しても、俺は勇者にはならず、現在は王国執行官兼、
冒険者ギルド、ルナール商会の顧問という立ち位置で落ち着いている。
俺のパラメータ、LUK『ラッキー』はMAXの10,000。
だからなのか、今のところ上手く行っているとも思う。
LUK『ラッキー』がMAXだという事を一番実感しているのは、
様々な人達と出会いだ。
故郷の村から俺を連れ出してくれたルナール商会理事のオーバンさんを始め……
衣食住の世話をしてくれたセドリック会頭。
そして街中で、ジョルジエット様、アメリー様を救った事から、
鬼宰相グレゴワール様に出会い、いろいろ面倒を見て貰っている。
と、言う事で、今回の『神格化騒動』も、
「ほら、お話はそれくらいにして。そろそろ仕事をしましょ」
筆頭秘書として、年長のシルヴェーヌさんが収めてくれ……
本日の仕事である、俺のお披露目イベント、王立闘技場トーナメント企画の確認は、
何とか、終了する事が出来た。
後は、細かい部分を各所と詰め、具体化して行く作業となる。
……そんなこんなで、午後5時となった。
今日は残業をしないから、もう退勤の時間である。
4時30分過ぎに受付経由で、
「リヴァロル公爵家専属馬車の御者が迎えに来た」と連絡が入っていた。
なので、帰りの『足』も確保出来ている。
というわけで、帰りもトリッシュさんを先頭に、顧問室を出て施錠。
魔導昇降機で1階へ。
トリッシュさんが受付へ、一同退勤の一報を入れ、
1日の仕事を終えた俺達は、冒険者ギルドを後にしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
冒険者ギルドからの帰途は何事もなく、俺達は無事に、
リヴァロル公爵家邸へ戻った。
「ただいま、無事戻りました!」
「ロイク様! お疲れ様です♡」
「お疲れ様です、ロイク様♡」
馬車を降り、後を御者達に託すと、ロジエ女子学園から戻った、
ジョルジエット様、アメリー様が出迎えてくれていた。
さりげなく聞くと、グレゴワール様はまだ戻っていないという。
この前みたいに「俺ばっかりお出迎えされて羨ましい」と言われるのも辛いし、
愛娘からスルーされ、すねるグレゴワール様がお気の毒。
後でグレゴワール様がお戻りになったら、
「一緒にお出迎えをしよう」という俺の提案と説得を、
ジョルジエット様、アメリー様は素直にOKしてくれた。
今後は、イレギュラーな事情がなければ、お出迎えを慣習にしてくれるという。
先に帰って来た時は俺も出来る限り、
グレゴワール様帰還の際、秘書と一緒にお出迎えをしよう。
そして今夜は朝食同様、夕食も、本館で摂るのがベスト。
当然ながら秘書達に頼んで、グレゴワール様を「ちやほや」して貰おう。
クライアントへの『こういう気配り』は、前世営業時代に培った賜物である。
となれば、俺の予定もすぐ思い浮かぶ。
これから別棟へ戻り、ひと息ついたら、秘書達と合同連絡会議を行う。
先ほど帰りの馬車の車内で話し、
「明日はルナール商会へ訪問」と、予定を決めている。
合同連絡会議では、
シャルロットさんを中心に、段取りの打合せを行っておいた方が良いだろう。
その後、グレゴワール様のお出迎えをして、
夕食を摂り、グレゴワール様の都合がつけば、
本日の結果、そして明日の予定を伝えておく。
その後、就寝。
まあ……そんなところだろうか。
思いついた予定の進行の可否を俺が秘書達に伝えたところ、
「「「はい! OKです!」」」
全員が笑顔で元気よく返事をした。
打てば響く。
という感じで、彼女達は快諾してくれたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます