第148話「もしかして、セドリック会頭の身内なの?」
俺は、シルヴェーヌさん、トリッシュさんを連れ、冒険者ギルドを辞去。
最後の秘書さんと会うべく、ルナール商会へ向かった。
しばし、馬車で走り、ルナール商会本館前に到着。
時刻は午後2時30分を回っていた。
この馬車は王宮で貸し出すレンタル馬車なので、ここでリリース。
御者へ伝え、戻って貰う。
ルナール商会における打合せが、いつまでかかるのか全く不明だし。
帰りは……
ルナール商会へお願いし、商会の馬車で送ってか貰うか、
リヴァロル公爵家へ一報を入れ、迎えの馬車を出して貰えば良い。
王宮へ馬車を戻す指示を決めた際、シルヴェーヌさんへ確認したら、
「賢明な判断です」
と言われた。
これは王宮のレンタル馬車は、夕刻前に戻した方が良いという、
アラン・モーリアの経験で得た知識だけどね。
まあ、そんなこんなで、俺達3人はルナール商会本館1階玄関から、館内へ。
3人の中で、一番商会内を知っている俺は先頭に立ち、受付けへ。
受付けの女子社員は、俺の顔を見知っている子だった。
「まあ、ロイク様! いらっしゃいませ! 本日はどのようなご用件でしょうか?」
具体的に要件を告げようか迷ったが……
とりあえず在社確認だけにしよう。
話が長くなるし、ややこしいし。
「ええっと、いろいろとご相談がありまして。今日は、自分の秘書2名と伺いました。ノーアポイントで申し訳ありませんが、会頭か、オーバンさんは在社されていますか?」
「はい! オーバンが居ります! ご案内しますので、こちらへどうぞ!」
受付は、社員ふたり体制。
俺に対応した女子社員さんが、もうひとりの社員さんへ残るよう指示。
受付から出て、VIP室へ案内してくれた。
「こちらで、しばしお待ちくださいませ。オーバンが参りますので」
「ありがとうございます!」
シルヴェーヌさんは落ち着き払って微動だにしない。
だが、トリッシュさんは、初めて入る大手商会の内部が珍しいのか、
ちらちら見ていた。
まあ、おのぼりさんみたいにきょろきょろとか、
あからさまではないので、許容範囲内だ。
数分経って、オーバンさんがやって来た。
栗色髪の女子社員をひとり連れていた。
整った顔立ちをした顔をした美しい子だ。
年齢は20代前半か?
俺が見た事のない社員である。
「これはこれはロイク様! 会頭から話は聞いておりますよ」
オーバンさんは、晴れやかな笑顔で言い、
「このたびは、王国執行官就任、おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
見知らぬ女子社員とともに一礼し、俺へ祝いの言葉を告げたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
対して俺は、
「ありがとうございます!」
と礼を返し、秘書のふたりを紹介する。
「オーバンさん、このたび俺の秘書となるふたりです」
と更に言い、シルヴェーヌさん、トリッシュさんへ告げる。
「この方は、ルナール商会理事のオーバンさんだ。さあ、ふたりとも、自己紹介してくれるかな」
「はい! 初めまして! シルヴェーヌ・オーリクでございます! このたび、王国執行官ロイク・アルシェ様の秘書に就任致しました。前職は王国宰相グレゴワール・リヴァロル公爵閣下の第三秘書でございました。不慣れな事も多いと思いますが、ご指導ご鞭撻のほど、何卒宜しくお願い致します」
「初めまして! パトリシア・ラクルテルでございます! このたび冒険者ギルドマスター、テオドール・クラヴリーから命じられまして、ギルド顧問に就任されたロイク・アルシェ様の専属秘書となりました! 不慣れな事も多いと思いますが、ご指導ご鞭撻のほど、何卒宜しくお願い致します!」
よし!
ふたりとも、はきはきと、良いあいさつだ。
息も合って来ているし。
するとオーバンさんは、
「ごあいさつが遅れ、失礼致しました! 私はルナール商会理事、オーバン・ベランジェと申します。ロイク様には、当商会のいくつもの依頼を完遂して頂き、深く感謝しております。このたび当商会の顧問に就任して頂きますが、今後とも宜しくお願い致します」
とあいさつをし、
「本日は会頭が不在なので、私から、ロイク様の秘書をご紹介させて頂きます。ルナール商会社員、シャルロット・ルナールでございます。さあ、シャルロットお嬢様、ロイク様にごあいさつをお願いします」
え?
シャルロット・ルナール?
シャルロットお嬢様?
もしかして、この子は、セドリック会頭の身内なの?
全員が見守る中、シャルロットお嬢様?があいさつする。
「皆様! 初めまして! シャルロット・ルナールでございます! このたび当ルナール商会会頭、セドリック・ルナールの命により、当商会の顧問に就任されたロイク・アルシェ様の専属秘書となりました! 不慣れな事も多いと思いますが、ご指導ご鞭撻のほど、何卒宜しくお願い致します!」
「「「宜しくお願い致します!」」」
と、俺達3人が言葉を返した後、
はい!っと、俺は挙手をしたのである。
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