第121話「どういう『落としどころ』がベストだろうか?」
もろもろの打合せを修了。
俺は冒険者ギルドを辞去した。
ホテルへ戻る前に、アポイントを取る為、ルナール商会とリヴァロル公爵家へ赴く。
ルナール商会は、セドリック会頭、オーバンさんは不在。
リヴァロル公爵家は、グレゴワール様は不在。
ジョルジエット様、アメリー様は学校。
なので、ルナール商会は代理の社員さんへ。
リヴァロル公爵家は、家令のセバスチャンさんへ。
「締結したご契約の件でご相談があります」
と伝え、双方とも、アポイント取りへ、フレンドリーな対応をして貰う。
ホテル宛へ、連絡を入れてくださいと段取りを頼み、ホテルへ戻った。
このアポイントが決定するまで、仕事を入れない事と決めた。
何故なら、休養もしたいし、当座の金には困らない。
ギルドの講座をたくさん受講したり、いろいろな買い物をしたが、
てもとには金貨23,000枚―2億3千万円という結構な現金がある。
そして今回、トレゾール公地の金、宝石採取依頼を完遂。
ギルドの所属登録証にプールしている褒賞金が金貨9,000枚。
更に討伐したドラゴンの死骸を全て売却すれば、金貨50万枚が見込める。
日本円にして、53億円以上もたくわえが出来る。
53億あれば……
仕事を全てやめ、今、滞在しているルナール商会経営のホテルを引き払い、
王都のどこかに大きな家を構えられる。
何人もの使用人を雇い、一切の家事、煩雑な用事を任せられる。
仕事を一切しなくて、遊んでいてもOK。
そう!
俺は、一生の間、充分暮らしていけるだけの金を既に稼いでしまったのだ。
しかし!
俺はまだ16歳。
仕事は面白いし、やりがいもある。
いろいろな可能性もある。
だから、引退するのはまだまだ早すぎる。
適度に仕事して、適度に遊び、適度に休む、
そういうバランスの取れた人生を送りたい。
前世のダークサイド企業勤務では叶わなかったから、尚更だ。
改めて言おう。
俺は、絶対!前世より1億倍!幸せになるのだ!
決意を新たにしたら、腹が減った。
という事で、部屋着に着替え、俺は階下のレストランへ。
いつもの通りビュッフェ形式だが、メニューが変わるので全く飽きない。
レストランの支配人に最敬礼され、好みの料理を取って、席に戻れば、
ちらちらと他人からの視線を感じる。
「あいつ、また居る」みたいな。
出張の仕事はあるにせよ、このレストランに、頻繁に俺が居るから、
注目されているのだろうか?
まあ、普通に考えたら、
16歳の『がきんちょ』が、ず~っと高級ホテル暮らしって……変だよな。
もしドラゴン10体の討伐話が広まったら、今以上見られるし、
いろいろなアプローチをされるかもしれない。
心しておこう。
そう思いながら、俺はひたすら料理を食べたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
食事を終え、俺は部屋へ戻った。
ベッドに寝ころび、いろいろと考えてみる。
冒険者ギルドのオファーを伝えたら、
ルナール商会とリヴァロル公爵家はどのような反応を示すだろうか?
まあ、自分達の契約を最優先して欲しいと言うのは間違いないだろう。
ルナール商会もそうだけど、リヴァロル公爵家は、ジョルジエット様、アメリー様との兼ね合いがある。
特にジョルジエット様が怒って強権発動したら、とんでもない事になる。
冒険者ギルドはワールドワイドな組織だが、
我が祖国ファルコ王国との衝突は必至だ。
となると、冒険者ギルドに大幅譲歩して貰うしかないだろう。
まず通常のサブマスター業務を行うのは無理。
依頼を受けるというより、事務仕事と会議が多いというから、その傍らに、
ルナール商会の仕事やジョルジエット様、アメリー様の警護など出来るはずがない。
でもサブマスターの肩書きだけ貰って、給料も貰い、ろくに仕事をしなかったら、
絶対、ねたみそねみやっかみを受ける。
悪口だって言われてしまう。
どういう『落としどころ』がベストだろうか?
……………………ひたすら考える俺。
やっぱり一番いいのが、現状のままだよな。
!!!!!
そうだ!
たとえば名誉職ってどうだろう?
ひたすら考えた俺の頭の中に浮かんだ肩書き……
それは『顧問』というものだった。
補足しよう。
顧問とは、 企業やその他の団体が行う業務について、意思決定を行う権限は持たないものの、求められて高度な意見を述べるために置かれる役職の事。
あるいはその役職に就いている者を指す。
そうそう!
権限や高給は不要だから、ご意見番的なポジションとか、いかがです?
と、ギルドへ提案すればいいか!
それで折り合わなかったら、現状のままで。
どちらにしても、サブマスター就任はお断りする。
よし!
決定!
今夜はゆっくり眠ろう!
寝巻に着替えた俺は、そのままベッドへ潜り込み、眠りに落ちたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます