第107話「よし!格闘も 手ごたえありだ!」

最悪、逃げれば良い。


この依頼は、退避ありきで収穫ゼロでも許される依頼。


果たしてどうなるか、俺は緊張しながら、すぐ行動出来るよう身構えた。


やがて……

川の少し先が妖しくぴかぴかっと光った。


俺は知っている。

何と!

一番の採取場である川の少し先に、魔物が湧き出る次元の裂け目があるのだ。


この次元の裂け目が、魔法使いが召喚する際、魔物を呼び出す魔方陣のように、

出現させる出入り口となっている。


うん!

この輝き……

魔物が現れそうだ。


そして!

現れたのは……身長5m~10mの巨大なオーガ約100体!!


現時点の俺にとっては、結構なレベルの強敵だ。


しかし、オーガどもを見て、あからさまにがっかりしたのは、

俺が召喚した従士、魔獣ケルベロスである。


『はあ!? 何だ、あるじ!! あの雑魚どもは!!』


『いや、何だ、あの雑魚どもは!! って、俺へ言われても……』


『上位種のドラゴンではないっ!! 我は、人間の兵士1,000人に劣るというのかっ!!』


『………………』


ケルベロスの魂の叫び。


俺は無言で返した。


でも、ケルベロスが不満を言うのは分かる。

先述した通り、ファルコ王国の記録によれば、兵士1,000人を送った際、

上位種のドラゴン数百体が現れ蹂躙、全滅させてしまったという。


その伝承を告げているから、現れたのがオーガ約100体など、

ケルベロスは物足りない、というか、がっかりしたに違いない。


つらつら考える俺へ、ケルベロスは言う。


『よし、決めた』


『決めた?』


『うむ! 主よ、貴方にはどうせ本気を出して貰う予定だった』


『はあ、本気か。まあ、そういう予定だったねえ』


『ならば丁度良い、トライアル、実戦訓練だ。先日、主は、農園で盗賊団ともどもオーガを無力化した。今度は同じく単独で、この100体と戦ってみよ』


うお!

そう来たか!


というか、戦ってみよって、相変わらず超上から目線の命令口調、

どちらが主かわかりゃしねえ。

でも、まあ、いいか。


『主よ、オークカーネルを倒した貴方のパワーなら力負けしないとは思う。だが、捕まらないよう注意して戦うのだぞ』


成る程。


オークの上位種オークカーネルは、オーガと戦う物差しとなる。

パンチを5発、蹴りを5発、それぞれ入れ、最後は剣で首を斬り落とした。

はっきり言って楽勝だったし、オーガと戦うのは問題ない。


ただ、オーガに捕まるのは宜しくない。


俺のSTR:ストレングスは7,300。

オーガは8,000前後だから、少し力負けする。


振りほどけない事はないが、捕まってダメージを受けないよう、

万全を期すという事だ。


了解!

ケルベロスよ! ナイスアドバイスだぞ!


よし!

じゃあ、いっちょ、戦うか!


相手がオーガでも俺の戦い方は変わらない。


ここでも俺流、魔法剣士の戦い方って奴で行く事に決めた。


すなわち、剣、格闘に、攻撃魔法をミックスさせる複合攻撃……


前世ケン・アキヤマとしてプレイした際、

アバターだった、アラン・モーリア流の戦い方だ。


俺は大地を思い切り蹴り、ダッシュ!!!

あっという間に、肉薄。


即、容赦ない無双が始まった。


右腕で剣を振るう。

左腕でシールドバッシュ! パンチ、蹴りも使う。

かと思えば、至近距離からの風の魔法で、相手を粉砕。


オーガどもは、絶命し、死骸の山が積み重なって行く。


剣、魔法では容易く、倒せるが、

シールドバッシュ、パンチ、蹴りだと、致命傷は与えられない。


こうやって実戦を積む事で、俺の攻撃が相手へどれくらいのダメージを与えられるか実感出来る。


オーガを格闘技で瞬殺出来ないのは残念だ。


うん!

でも! 問題ナッシング!

俺は剣、魔法、格闘の総合力で敵を倒すスタイルは変えないから。


さてさて!


オーガはパワーと耐久性は優れてはいるが、

ゴブリン、オークに比べれば、俊敏さ、つまりスピードは格段に落ちる。


仲間を倒され、怒り狂うオーガどもは、巨大な拳を振り回し、俺を殴殺しようとする。

だが、当然ながら、オーガどもに反撃を許さないどころか、身体にも触れさせない。


余裕が出て来た俺は素早い動きで剣を鞘に収めると、

今後の為、訓練を、格闘、シールドバッシュのみで戦う。


シールドバッシュで相手の態勢を崩しながら、

バックステップ、サイドステップ、スウエー、ダッキング、

ウェービング等々身のこなしを使い、オーガの攻撃を避けつつ、

ジャブ、ストレート、アッパー、フック、

拳法の突きに近いパンチ、空手に近い前蹴りもフルに使う。


すると、徐々に、一撃の攻撃力が増して来た。


5回に1回、会心の攻撃、クリティカルヒットが出るようになって来た。


よし!

格闘も手ごたえありだ!


瞬殺!


とまではいかなかったが、俺は30分かからずに、

現れたオーガ100体を倒したのである。

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