第102話「こちらの期待以上の働きをして頂きました。本当に感謝致しますよ!」

「文句なしだ! 本当にありがとう!」


と、満面の笑みで、ルナール・ラァンチュの責任者、

場長のブリスさんは、依頼完遂書にサインをしてくれた。


そんなこんなで、いろいろ手続きをしていたら、午後6時30分を回ってしまった。


王都の正門が閉まるのは、午後9時。

俺の高速走行で10kmを走って帰還するのは、全然楽勝。


ホテルへ帰ってのんびりしよう。


辞去しようとしたら、ブリスさんに引き留められた。


「今夜はお祝いの宴を催す。ロイク君もぜひ参加して、そのまま、今夜は泊まって行ってくれ」


一応、「帰ります」と遠慮したが……


「殊勲者のロイク君が居ないと盛り上がらない!」


と何度も言われてしまい、お言葉に甘える事にした。


早速、宴の用意がされ、さすが牧場。

牛、豚、羊、鶏の肉が大量に並べられた。

野菜はルナール・ファームから、直行便で取り寄せているというから、バッチリ。

当然、俺も支度を手伝う。


そして、準備完了。

ひと言断り、肉を分けて貰い、ケルベロスへ渡したのは言うまでもない。


ブリスさんから、


「ロイク君が主役なんだから、どんどん好きなだけ食べてくださいね」


と食べ放題を示唆された。


殊勲者とか、主役とか言われても、俺は雇われの請負業者。

はい、ごっつあんです!などと、いきなり最初から飛びつきはしない。


『無礼講』だと言われ、勘違いする奴と同じだ。


ちなみに『無礼講』とは、上下関係は脇に置いて分け隔てなく楽しむという意味であって、ため口とか、失礼な態度でも許すという意味ではないからだ。


それゆえ、社員さん達、スタッフさん達が、飲み食べ始めてから、

俺もおもむろに……という感じ。


つつましく飲み、食べ、遠慮するなと言われ、食欲のギアを上げるのが賢明。


そうこうしているうちに宴が盛り上がり、


「遠慮するな!」

「肉はいくらでもある!」

「ガンガン行け!」


と背中を押されてから、エンジン全開。


じゅう! じゅう!じゅう!じゅう! じゅう!じゅう!じゅう! じゅう!じゅう!


ガツガツガツガツガツガツ!!!

ばくばくばくばくばくばく!!!


これは美味い!!!

さすが牧場、産地おろしたて!!!

牛、豚、羊、鶏どれも最高!!!

白いご飯がないのだけは残念だ!


ひとりの食事も悪くない!!!

だが、こうやって大人数で食べる食事は楽しい!!!


ああ、楽しい人生だ!!!


「いや~、本当に頼りになる! ロイク君には何かあれば、ぜひまたお願いしたい! 出来れば、ウチの専属になって欲しいよ」


などと、大いに励みになるお言葉も頂き……


満腹になった俺は、夜遅くまで、ブリスさん以下社員さん達、スタッフさん達と、

いろいろ話し、楽しい夜を過ごしたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


翌朝……今回請け負ったルナール商会3件の依頼を完遂し、

俺は王都へ戻る事に。


美味しい朝食をごちそうになり、支度をし、午前8時に出発する。


ブリスさん以下社員さん達、スタッフさん達は総出で見送ってくれた。


俺は深く一礼し、手を振ると、歩き出す。

そして街道へ出ると、足取り軽く、時速10km、

ジョギングに毛が生えたレベルで、走って帰る。


途中からゆっくり歩き、のんびり帰る。


一旦ホテルへ、そしてひと休みしてから、ルナール商会へ完遂報告へとも思ったが……


善は急げという事で、まっすぐルナール商会本館へ。


時間は午前9時である。


「おはようございます!」


俺が受付に行き、あいさつされば、


「あ! ロイク様! おはようございます!」


と、返されちゃった。


完全に覚えられてるな。


ま、良いか。

話が早い。


俺は大きく声を張り上げる。


「オーバン様はいらっしゃいますか! いきなりノーアポイントで申し訳ありませんが、承ったご依頼完遂のご報告へ伺いました! ご不在やご都合がお悪いようなら、改めて出直します!」


と伝えれば、


「はい! 在社しております! 大丈夫です! ただいま、ご案内致します!」


と、VIP室へ通された。


しばし待っていると、現れたオーバンさん。


俺が「3件の依頼は、無事完遂しました」と言えば、にこにこしている。


という事で、改めて今回請け負った依頼と、

その完遂結果に関してすり合わせを行う。


依頼完遂書には、各現場責任者のサインは勿論、

完遂に対する補足と俺への感謝の添え書きもあったのが、

オーバンさんの心証を更に良くしたようだ。


1件目は……王都から南方100㎞の町ジェム鉱山へ重要書類の配達。

折り返し、鉱山より上質の宝石100個を王都のルナール商会へ運搬。


行き帰り、無事に届けた場合、報酬は金貨100枚。

3日以内に完遂した場合、インセンティブとして金貨20枚が支払われる。

万が一、宝石を紛失した場合は弁償する事。


結果……無事に完遂。

ゴブリン500体襲撃とそいつらの討伐。

鉱山内に閉じ込められた社員さん達の救助も行った。


先の完遂報告において、割増する報奨金の確定は後ほど検討してという事だったが、結論は出ていたようだ。


金貨100枚プラス、インセンティブとして金貨20枚の正規料金以外に、

ゴブリン500体討伐、社員さん救助に対し、割増金で金貨500枚支払い追加という事となった。


……トータル、金貨620枚。


2件目は……王都郊外15kmの位置にあるルナール商会経営の農園、

ルナール・ファームの警備。


王都で人気のブランド果実を、広大な農園で栽培しているが、

高価な為に、盗難が頻発しているという。


仕事は、ひと晩警備して、報酬は金貨100枚。

賊を捕らえた場合、人数生死にかかわらず金貨50枚が追加で支払われる。


結果……無事に完遂。


金貨100枚プラス、インセンティブとして金貨50枚の正規料金以外に、

メロン畑へ忍び込んだ賊8名、オーガ8体を捕らえた事が評価され、

割増金金貨500枚が追加で支払われる。


……トータル、金貨650枚。


3件目は……王都郊外10kmの位置にあるルナール商会経営の牧場、

ルナール・ラァンチュの警備。


王都で人気のブランド牛、豚を、広大な牧場で飼育しているが、

ゴブリン、オークなどが襲い、被害が出ている。


警備をするとともに、牧場周囲の魔物を一定数討伐する。

報酬は種類に限らず、魔物を100体討伐し、金貨100枚。

150体以上討伐すれば金貨50枚が、200体討伐すれば金貨100枚が、

追加で支払われる。


結果……無事に完遂。


金貨100枚プラス、インセンティブとして金貨100枚の正規料金以外に、

桁違いの数ゴブリン2,000体、オーク1,000体を討伐した事が評価され、

更に割増金の金貨1,000枚が支払われる。


……トータル、金貨1,200枚。


総トータルの報奨金は、金貨2,470枚!!!


おお!!! 2,470万円か!!!

美味しいなあ!!!


オーバンさんも満面の笑みを浮かべている。


「いや~、ロイク様! 素晴らしい! こちらの期待以上の働きをして頂きました。本当に感謝致しますよ!」


「いえいえ、こちらこそ、お役に立てて良かったです!」


「会頭もお喜びになると思いますし、またぜひご依頼を致します。ホテルの方も、当分の間ご滞在ください」


という事で、万事が上手く行き……

俺はルナール商会を後にしたのである。

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