第88話「作戦はまとまった」

南の町ミームにあるジェム鉱山の依頼を完遂。

午後2時30分に王都ネシュラへ戻った俺。


商業街区のルナール商会本社にて打合せを済ませ、ホテルへ戻る。

フロントへ名前を告げ、手紙、伝言がない事を確かめる。


そういえば、昼飯を食べていない。

テイクアウトした弁当を収納の腕輪へ入れたままだ。


朝食は行きに食べたが、帰りは休憩せず、急いでまっすぐ帰って来たからなあ。


俺は部屋へ戻り、シャワーを浴び、身軽な部屋着用のブリオーに着替える。


依頼書に目を通し、地図と付け合わせする。


今回遂行する2番目の依頼、王都郊外15kmの位置にある、

ルナール商会経営の農園警備。


王都で人気のブランド果実を、広大な農園で栽培しているが、

高価な為に、盗難が頻発している……か。


仕事は、ひと晩警備して、報酬は金貨100枚。

賊を捕らえた場合、人数生死にかかわらず金貨50枚が追加で支払われる。


栽培しているのは、ぶどう、もも、リンゴ、梨、サクランボ、いちご、

そしてメロン。


おお、結構いろいろな種類の果実を栽培しているんだ。


これらを盗み、手下に行商人を装わせた売り子を使い、

しれっと、王都で売りさばいているらしいのか。


手がかりは品種だけで、指摘しても、

他で栽培されたと言えば、それ以上追及出来ない。


なので、窃盗の現場を押さえるしかない。


許せんな!

とんでもなく悪質だ。


そして窃盗が行われるのはほとんど夜間。


毎晩夜通し、社員が番をするわけにいかないし、盗まれるのは毎回違う商品らしい。


更に更に!

神出鬼没の賊らしく、手掛かりは、ほとんどないと言う。


被害が拡大しっぱなし、困りはてていたところへ、俺という特異な存在が現れ、

縁ありきで、依頼をしようという事となった。


そうだな……依頼を完遂するに向け、いくつか方法がある!


俺は、ぱぱぱぱぱぱ!と考えをめぐらせた。


漠然としていた作戦が、徐々にまとまって来る。


うん!

ある程度まとまった。

シミュレーションも出来た。


……後は現場を見て、確認しよう。

夜勤だけど、早めに行って、じっくりと現場の下見をする方が賢明だろう。


ひと段落ついたところで、昼飯に。

収納の腕輪から弁当を出す。


最初から軽く摂ろうと思っていたから、

パン、ソーセージ、サラダに温かい紅茶のみだ。


小腹を満たすには充分である。


次は牧場の魔物討伐依頼か。


俺は再び依頼書と地図を見ながら、遅い昼食を食べ始めたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


料の少ない、そして遅めの昼食を摂った俺は、依頼書を丹念に読んで行く。


農園の依頼を完遂させた後、

そのまま王都郊外10kmの位置にあるルナール商会経営の牧場へ赴き、

警備を行う。


牧場では王都で人気のブランド牛、豚を、広大な牧場で飼育しているが、

ゴブリン、オークなどが襲い、被害が出ている。


警備をするとともに、牧場周囲の魔物を一定数討伐する。


報酬は種類に限らず、魔物を100体討伐し、金貨100枚。


150体以上討伐すれば金貨50枚が、200体討伐すれば金貨100枚が、

追加で支払われる……か。


油断は大敵だし、するつもりもないが……

こちらも完遂する見込みが立っている。


今日、全く予定していなかったゴブリン500体の討伐があった。

まさに瓢箪から駒。

雨降って地固まる。


ケルベロスの助けを借りた漁夫の利的な勝利だが、

お陰で、リアルなゴブリンを間近で見れた。


とどめを刺す前に、動きも見極めたから、奴らに遅れを取る事は99%ありえない。


でも、またゴブリンか? またオークか?


バトル経験済みの所詮、雑魚。

もっと相手を選べ! 上を目指せ! という教育的指導がありそうだが、

ケルべロスと組めば、万全の態勢で臨めそうだ。


問題は、牧場を襲って来た奴らが逃げた場合、

どこまで追撃するべきか、線引きをする事だ。


中途半端に討伐するのはいかがなものかと思う。

俺が引き揚げたら、間を置かず、また襲って来るだろうし。


だが、あまり深追いしすぎても宜しくはない。


俺は、再び、牧場周囲の地図を見る。


こちらも下見をしておいた方が良いだろう。


農場の依頼を完遂したら、早めに周囲のロケーションをし、

依頼に臨むのがベスト。


そして、基本的に俺とケルベロスのどちらかが、守備にあたる事。

両名どちらも討って出て、牧場をがら空き状態にするのは避ける事。


よし!

両方の作戦はまとまった。


さてさて!

レストランで摂る夕飯を遅めにして、それまで部屋でリラックスだ。


俺はベッドへ行き、大の字になると、目を閉じ、

大きく息を吐いたのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る