第65話「応援致します!おふたりを精一杯サポート致します!」
俺ロイク・アルシェが生まれてから、今までの人生を……
よろず屋退店のややこしい
ジョルジエット様、アメリー様は勿論、騎士のアンヌさんとジュリーさんも、
興味深そうに聞いていた。
転生したケン・アキヤマと融合して一体となった平凡な少年ロイク・アルシェ。
彼の人生を振り返る為に……
俺は、ロイクの記憶をサルベージ。
思い起こし、なぞって行く……
途中までは、グレゴワール様の報告書通りの人生だ。
俺ロイクは、王都ネシュラから遥か南へくだった、
へんぴな田舎の村、シュエット村の農民であった両親の間に、
ひとり息子として生まれた。
……3年前、俺が13歳の時。
両親がほぼ同時に
1か月と少し前、3年間勤めていたよろず屋を退職し、
ルナール商会の馬車で、この王都ネシュラへ来た。
道中、山賊に襲われたが、反撃。
何とか数十名以上を単独で倒した。
そして王都で冒険者登録の際、模擬戦とはいえ、剣聖と謳われたエヴラール・バシュレさんに勝利。
その勝利もあり、若干16歳の若さでランクBに認定された……
俺が、ひと通り、話し終わり……
ジョルジエット様、アメリー様を見て、びっくりした。
何と何と!
ふたりとも、うるうる目。
……目を赤くして、涙ぐんでいたのである。
「ロイク様! 大変だったのですね!」
「お可哀そうなロイク様……」
ああ、ロイクの薄幸な人生を、悲しんで泣いてくれたのか……
まあ、我ながら思うよ、悲惨といえば悲惨だからなあ。
アンヌさん、ジュリーさんも、涙こそないものの、切なそうな表情で俺を見ていた。
ああ、女子ふたりに泣かれ、ふたりに同情されてしまった。
そうか、と……俺は改めて考える。
ステディ・リインカネーションの世界の片隅で、
ひどく薄幸に生きていた、平凡な少年ロイク・アルシェ。
前世でケン・アキヤマとして生きていた俺は、この世界へ転生。
辛いロイク・アルシェの人生を無理やり譲り受けた格好となった。
そして融合した中身は、何と!
やり込んでいたアバター、アラン・モーリアの超・高レベルの初期設定だった。
……話を戻すと、ロイク・アルシェの自我のほとんどはケン・アキヤマ。
ロイクの自我は……俺の心の片隅に静かに沈んでいる。
申し訳ないと正直思う。
しかし、こうなったのは俺の意思ではなく、不可抗力。
俺は……出来る事をするしかない。
そう、 俺は絶対!前世より1億倍!幸せになる!
融合した、ロイク・アルシェの人生をひっくるめてもだ!
つらつらと、俺は考えていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ジョルジエット様、アメリー様の要望に応え、
生い立ちと王都へ来た経緯を話した俺。
では、と思い、お願いする。
これから請け負う仕事に必要な情報収集の意味もある。
今度はジョルジエット様、アメリー様の順番。
差支えないレベルで、生い立ちと今の暮らしぶりを、俺へ教えて貰えないかと、
頼んだのである。
さあ、ふたりのお嬢様はどう答えてくれるだろうか?
いや、そもそも答えてくれるか、どうか分からない。
お嬢様の私生活はベールに包まれているというのは、良くある話。
果たして、と思っていたら……………………
ジョルジエット様、アメリー様は意外にも、即座に快諾してくれた。
まずは、ジョルジエット様が……
リヴァロル公爵家の初子として生まれたが、幼い頃、母が亡くなった事。
今は亡き母を深く愛していた父は再婚を拒み、唯一の子で、母そっくりの自分をとても可愛がってくれている事。
現在は、俺が知る限り王族、貴族のお嬢様が通う学校、王立ロジエ女子学院の高等部に通学している事。
そろそろ見合いをしようと、父から結婚話が出ていた事。
だが、結婚願望が全くなく、見合いで愛のない結婚をしたくはない。
日々見合いの話をされ、ストレスが溜まっていたところ、
つい息抜きで、護衛なしの外出をしてしまった事。
そして、愚連隊に絡まれ、誘拐未遂事件が起き、救った俺と運命の出会いをしたと、この部分を特に強調し、嬉々として話してくれた。
中でも愚連隊から、自分を奪還してくれた事がとても嬉しかったと言う。
次にアメリー様は、サニエ子爵家に長女として生まれた事。
跡継ぎに指名された3つ下の弟が生まれたが、5年前に病気で亡くなった事。
父から入り婿を取って、家を継ぐ事を命じられた事。
王立ロジエ女子学院の中等部に通学しているが、
花嫁修業の一環として、寄り親であるリヴァロル公爵家へ行儀見習いに入り、
ジョルジエット様に侍女として仕えている事。
そして、ジョルジエット様誘拐未遂事件が起き……
主を護ろうとして愚連隊に殴られたところを、俺が回復魔法で優しく癒した上、
強い狼犬を召喚。
ジョルジエット様を救っている間、しっかり自分を護らせたと、嬉々として話してくれた。
話しているうちに、救われた時の記憶を思い出し、感極まったのか、
またも、うるうる目となって、俺を熱く見つめるジョルジエット様、アメリー様。
成る程……ジョルジエット様、アメリー様の生い立ちと近況は理解した。
でも俺が助けたシーンを、少し美化し過ぎていないだろうか?
ここで「はい!」「はい!」と挙手をして発言を求めたのは、
俺と一緒に話を聞いていた、アンヌさん、ジュリーさんの女子騎士ふたりである。
「ジョルジエット様! アメリー様! おふたりのお話をお聞きし、同じ女子として、とっても、共感出来ます! 白馬の王子様って、本当に居るのですね!」
「私もアンヌ同様に共感致しました! 運命の出会いって、……素敵ですね!」
アンヌさんとジュリーさんはそう言うとふたりで顔を見合わせる。
あれ?
女子騎士のおふたりさんも、何か凄く盛り上がってます?
と俺が思った瞬間。
「ロイク様とのご恋愛が上手く行くように、私、応援致します!」
「私も! おふたりを精一杯サポート致します!」
ふたりの女子騎士は「主の話に感動した!」という面持ちで、
目をキラキラさせながら、はっきりと言い放ったのである。
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