第64話「俺は、ジョルジエット様、アメリー様に情が湧いているのかもしれない」

紆余曲折あり、

いきなり貴族令嬢ジョルジエット様、アメリー様ふたりの、

イレギュラーな護衛役を務める事になった俺。


自分にあてがわれる部屋に続き、10間もあるジョルジエット様の豪華な私室に連れて行かれた。


ここで、「自分の役目が済んだ」と、

リヴァロル公爵家警護騎士をまとめる主任騎士、バジル・オーリクさん、

同じく家令のセバスチャンさんが退場する事に。


バジルさんは、

部下の警護女子騎士アンヌ・ベルトゥさん、ジュリー・バイエさんへ、

契約金額だけ未記載の俺の契約書の控えを渡し、

「内容を熟読した上で、俺のに指示に従う事」を命令していた。


セバスチャンさんも、「使用人達も同様に従います」と言う。


俺は、バジルさん、セバスチャンさんへ、改めて丁寧にあいさつし、

今後の事をお願いしておく。


当主グレゴワール・リヴァロル公爵閣下の命令もあり……

バジルさんは部下の騎士達に、セバスチャンさんは部下の使用人達へ、

ジョルジエット様、アメリー様の護衛役となった俺の存在と仕事を周知してくれるはずだ。


「失礼致します。何かあればお呼びください」

とバジルさん、セバスチャンが去り……男子は俺だけとなる。


不慣れな事もあり……

綺麗な女子4人とひとつ部屋に居るって、プレッシャーが半端ない。

仕事として引き受けたから仕方ないが、慣れるまでしばらくかかりそうだ。


さてさて!

バジルさんが、渡した契約金額だけ未記載の俺の契約書の控えを基に、

早速、打合せを行う。


俺は休日前日の午後4時くらいまでに出勤し、自分の部屋で待機。

5時にアンヌさんか、ジュリーさんが呼びに来て、

この部屋へジョルジエット様、アメリー様を訪ねて勤務開始。

今のように部屋に詰めながら、護衛役と話相手を務め、就寝時間が来たら、

自室へ戻り、就寝。


翌朝は午前7時に起床し、待機。

同じくアンヌさんか、ジュリーさんが呼びに来て、ジョルジエット様、アメリー様を訪ねて勤務開始。


昼間は、ジョルジエット様、アメリー様が外出したら、外出先へ同行。

未外出の場合は、ジョルジエット様、アメリー様と一緒か、自室で待機。

午後5時になったら、勤務終了で、屋敷から退去……というスケジュールだ。


ちなみに平日、俺が不在の時、

侍女を務めるアメリー様は午前5時30分、主のジョルジエット様は午前6時前に起床。

馬車を使い、通学している王立ロジエ女子学園へ午前8時にふたりで登校、午後3時45分に下校。

アンヌさん、ジュリーさんは、屋敷において常に付き従い、登下校時には同行するという。


ここまで話して、俺はアンヌさん、ジュリーさんとも打ち解けていた。

試合に圧勝した俺が腰を低くし、丁寧に接したので、

女子騎士のふたりは、俺に好感を持ってくれたらしい。


アンヌさんが言う。


「平日毎日、私達騎士は、朝4時から1時間、午前5時まで邸内の闘技場他で訓練を行います」


ジュリーさんも追随。


「イレギュラーで夜間訓練も行いますよ」


グレゴワール様からは、屋敷内の施設を自由に使ってOKと許可を得ている。

騎士達とコミュニケーションもとれるから、俺も明日の朝、訓練に参加するか……


こういう場合は、まずジョルジエット様、アメリー様に許可を取り、

アンヌさん、ジュリーさん経由でバジルさんに伝えて貰い、OKを取るという煩雑さ。


でも、それが宮仕えというもの。

仕方がない。


俺が騎士の朝訓練に参加の希望を伝えると、ジョルジエット様、アメリー様は快諾。

そして、アンヌさんも、ジュリーさんも歓迎という事で安心した。


またアンヌさん達は、


「先ほど、参加しなかったので、ぜひロイク様と模擬試合で戦ってみたい」


と希望した。


話がまとまり、ジュリーさんが部屋を出て、バジルさんへ伝えに行ってくれた。

彼女はすぐ戻って来て、俺も「騎士達の訓練に参加OKだ」と告げてくれた。


ここで、ジョルジエット様、アメリー様へ注意をしておく。


父グレゴワール様から詰問されても、ジョルジエット様は悪びれていなかったが……


先日の愚連隊による誘拐未遂事件は、アンヌさん達護衛の同行を断り、

アメリー様とふたりきりで、街中へ外出したのが原因。


平日俺は不在なので、護衛は出来ない。

何かあったらと思うと、さすがに心配になる。

俺は、ジョルジエット様、アメリー様に情が湧いているのかもしれない。


「今後は、護衛なしでの外出は絶対にやめてください」


とお願いしたら、ジョルジエット様、アメリー様は、


「申し訳ございません、反省しております」

「ロイク様にご心配をおかけするような事は二度と致しません」


とふたりとも素直に謝ってくれた。


俺に従順なジョルジエット様、アメリー様を見て、

アンヌさん、ジュリーさんはびっくり。


まあ、俺と出会った当初の、ジョルジエット様の傲慢な態度を見ていれば、

どんな経緯で護衛なしにて、出かけたのか、大体想像がつく。


多分、ジョルジエット様主導で、家臣のアメリー様はやむなく従ったのだろうが、

いずれ分かるだろうし、この場でこれ以上追及はしない。


そんなこんなで、仕事の打ち合わせが済み……

落ち着いたところで、ジョルジエット様、アメリー様から、俺へ要望が出る。


「お父様が作らせた調査書には、ロイク様の生い立ちから、故郷シュエット村を出られ、山賊を倒し、王都ネシュラへ来て模擬試合で剣聖に勝ち、冒険者になるまでの記載がありました。その事をもう少し詳しくお聞きしたいですわ」


「はい! ロイク様のご経歴には興味が大いにありますわ! ぜひぜひ! 教えてくださいませませ!」


対して、俺は快諾。


「分かりました。お安い御用です」


……さすがに、ここがゲーム『ステディ・リインカネーション』

の異世界であり、「俺は転生者ケン・アキヤマです」などとは言えない。


だがそれ以外の部分、ロイク・アルシェが生まれてから、今までの人生を……

よろず屋退店のややこしい経緯いきさつを除き、俺は詳しく女子4人へ話したのである。

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