第58話「今の俺なら出来る!! 超必殺『五段』突きぃぃ!!」

「応援して頂き、そしてお気遣い頂きありがとうございます! おふたりの為にも、一生懸命頑張ります!」


麗しき女子ふたりへ、俺は、はっきりと告げた。


さあ!

腕相撲の次は、練習用の雷撃剣を使った模擬戦である。


この模擬戦は、ステディ・リインカネーションの世界ではポピュラーなものだ。


冒険者ギルド総本部でサブマスター、

エヴラールさん秘書のクロエさんのアナウンスがそのままルール説明となっている。


改めて記載しよう。


「試合制限時間は10分。先に5ポイント先取した方が勝利者となります。時間が来て5点にポイントが満たない場合はポイント上位が勝者。同点の場合は、魔導審査機が戦況を判断し、判定で勝利者を決定します」


先ほど実施された腕相撲試合は広いフィールドの中において、

酒樽上板のみという狭いリングであったが……

この模擬戦は広大なフィールドを目いっぱい使って行われる。


しかし問題なのは、所要時間だ。

ひとり一本勝負の腕相撲よりも、全然時間を要する。


聞けば、騎士50人のうち、棄権者は皆無。

全員が俺と戦うという。

それにグレゴワール様が加わるから、

腕相撲に引き続き、最大で51戦しなければならない。


こうなるとひとりひとり10分ずつ、目いっぱいまともに試合をしたら、

その前後の交代を含めた時間を除き、単純に試合時間のみで510分、8時間30分。

とんでもない時間がかかってしまう。


いくらスペックが向上しても、こちらの体力は無限ではない。


よし!

どこまで出来るかわからないけれど……


腕相撲のように『全員全勝瞬殺』を目指し、戦ってみよう。

戦いの修行も兼ね、少し気合を入れて!


当然、勝たなければ、その時点で試合は終了だと、グレゴワール様からは言われた。


「勝っても、負けても報奨金2億円は渡す」

と言うのは凄く嬉しいし、安心なのだが……

こうなると、戦う理由はどうあれ、俺も「負けたくない」と意地になる。


つらつら考える俺へ、包みを開け、ジョルジエット様、アメリー様は、

持って来た料理を、昼食としてふるまってくれる。


一見、そんなに凝った料理はなく、シンプルな料理が多い。

でも凄く美味しそうだ。


「ロイク様! 当リヴァロル家の料理長には、だいぶ手伝って貰いましたが、今朝、私とアメリーで早起きして一生懸命に作りました」

「パンは仕込んでおいて先ほど焼きあがったんですよ! ぜひぜひ! 召し上がってくださいませませぇ~~!」


え~!?

ふたりで作ったんだ。

凄いな、いくら料理長に手伝って貰ったとはいえ……頑張ってくれたんだ。


「果汁も魔導水筒に入れ、お腹を冷やし過ぎないよう、ほどほどに冷やしてあります」

「ご希望があればと、温かい紅茶もお持ち致しましたあ!」


出会った時と、いきなりチョロイン化した時には、

正直、いかがなものかと思ったが……


ジョルジエット様、アメリー様って、案外良い子じゃないのかなあ。


失礼な言い方だが……

料理はそこそこ美味しいというレベルだった。

なので、逆にふたりの言葉が信じられた。

もしも料理長に丸投げしていたら、もっともっと美味しいはずだから。


でも当然、俺は完食。


「美味しかったです! 心と身体にしみました! ありがとうございました! ごちそうさまでした!」


と、元気よく丁寧にお礼を伝えたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


さあ!

麗しき女子ふたりに熱い応援をして貰った俺。


否が応でも気合が入る。


そもそもSTR……

ストレングスのみが求められる腕相撲よりも、模擬戦の方が自信はある!


さてさて!

大闘技場には、模擬試合用の設備も整っていた。


大きな魔導水晶付きスコアボードがあって、練習用の雷撃剣と連動している。


つまりHITしたら、5つ取り付けられてある魔導水晶が、

ひとつずつ点灯して行くという仕様だ。


腕相撲の時と違い、闘技場のフィールドに対戦者以外は皆無である。


グレゴワール様、ジョルジエット様、アメリー様、セドリック・ルナール会頭他、

直近の出場者以外、10番目以降の出場者も全員が観客席に居た。


進行役はやはり家令のセバスチャン。

ちなみに今更だが、急所への攻撃、魔法の使用は特例を設ける以外、

禁止のルールとなっている。


対戦順は、腕相撲と一緒。


一番手は、俺に毒づいた少年騎士である。


先ほど、俺がジョルジエット様、アメリー様と、

仲良くランチをしていたので、目が腕相撲時以上の殺気にギラギラと燃えている。


今度こそ、殺してやる!

という念を込め、俺をにらみつけていた。


しかし、上司のリヴァロル公爵家警護主任騎士、バジル・オーリクさんが、

俺へ非礼を詫び、丁寧に謝罪をした。

なので、さすがに表立って暴言は吐かなかった。


ここは容赦なく、全力を尽くした方が良い。


ジョルジエット様、アメリー様からの声援がまたも俺へ飛ぶ。


「ロイク様あ! 必ず勝って! くださあい!」

「私達を迎えに来てくださいませぇ! ロイク様あ!」


同時に、魔導拡声器から、セバスチャンの声が響き渡る。


「両名! 開始位置についてください!」


俺は開始位置へ、少年騎士も開始位置へつく。


「開始!」


セバスチャンの声が試合開始を告げた。


敢えてツーテンポほどスタートダッシュを遅らせた俺。


フライングと抗議されるのを防ぐ為だ。


どんっ!!


闘技場のフィールドを蹴り、ダッシュ!

あっという間に少年騎士へ肉薄!


DEX:デクステリティー:手先の器用さ、行動の機敏さ。10,000《MAX》

AGI:アジリティ:機敏さ。素早さ。DEXと連動し、身体能力、特に回避能力に大きな影響を及ぼす10,000《MAX》


双方の最大能力値を誇る俺。


更に『俊敏』』『軽業』『刀剣』『格闘』『防御』のスキルが、

俺を後押し。


俺には密かに考えていた必殺技がある!


イメージは、幕末の天才剣士、沖田総司の必殺三段突きを……超える必殺技だ。


今の俺なら出来る!!

超必殺『五段』突きぃぃ!!


やはり少年騎士の動きは超が付くスロー。

動きがゆっくりのコマ送りに見える。

そして、サブマスターの剣聖エヴラールさんと違い、俺にとっては隙だらけ!


どご! どご! どご! どご! どご!


ぐ! が! ぎ! ご! げ!


突きを5連発!

充分に手加減をした上で、的確にHIT!!

少年騎士の小さな悲鳴も交錯する。


ぱぱぱぱぱ!

と、スコアボードの魔導水晶があっという間に全て点灯!!


まさに瞬殺!!


開始して、10秒立たないうちに、俺は少年騎士に勝利していたのである。

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