第35話「青い奴と言われそうだが……」

俺は『防御』『格闘・殴打』『攻撃魔法』『防御魔法』『シーフ職』の基礎クラスを楽しみながら、1日でクリア。


受講したオール5クラス、

全ての科目の『上級応用クラス』への申し込みを済ませた。


『防御』の基本動作は、やはりボクシングのディフェンスに近かった。


バックステップ、サイドステップ、スウエー、ダッキング、

ウェービング等々の身のこなしを……

そして盾の使い方は基本的な攻撃の防ぎ方から、シールドバッシュまでを習得。


『格闘・殴打』もやはりボクシングのジャブ、ストレート、拳法の突きに近いパンチ、

空手に近い前蹴りを、また殴打武器は、メイスの基本的な使い方を習得。 


次の『攻撃魔法』は、スキップして一番後に述べよう。

少し補足説明をしたいからだ。


3番目の『防御魔法』は自己をビルドアップする身体強化魔法。

物理的な防御力を上げるディフェンスの魔法を習得。


4番目の『シーフ職』はといえば、

迷宮、遺跡探索に必要なシーフ職の能力が、付呪エンチャントされた真鍮しんちゅう製の指輪が威力を発揮。


先日ゲットした『大盗賊の指輪』装着で大楽勝。


気配読み、気配消し、忍び足、罠確認及び解除、開錠など……

出された課題を全てクリアした。


そして、そして!

オミットして、最後に述べる『攻撃魔法』は、発動により、

隠しパラメータだった俺の『属性』が初めて分かる記念すべき科目なのだ。


……発動の結果、俺の属性はやはり、アラン・モーリアと同じく、

『風』だと判明した……のだが、それは表向きで、実は違う。


今回の講座で『攻撃の属性魔法』を発動し、改めて判明した。


その瞬間、ロイク・アルシェに転生して俺は最大の喜びを得た。


実は俺、全ての属性魔法を行使出来る、

全属性魔法使用者オールラウンダーだったのだ。


補足しよう。


この『ステディ・リインカネーション』の世界には、

絶対的な魔法のことわりがある。


魔法使いなら誰でも習得出来る、かまどに火を点けるとか、水を出すとか、

洗濯物を乾かすとかいう初歩の『生活魔法』を除き……

得られる真の魔法属性は、ひとりの魔法使いに対して、4大属性のうち、

たったひとつだけなのである。


つまり、風の属性魔法を行使する、『風の魔法使い』たる俺は、

基本的に他の地・水・火、3属性の『本格的な属性魔法』を習得する事は出来ない。


しかし時たま……

イレギュラーな術者として、ふたつの属性魔法を行使可能な魔法使いが現れる。

例えば、火と風、『両方の属性魔法』が行使可能であると。


このふたつの属性魔法を使いこなす魔法使いを、『複数属性魔法使用者マルチプル』と呼び、数万人にひとりの天才だとうたわれる。


加えて言えば、複数属性魔法使用者マルチプルの中でも、『3つの属性魔法』を使えるのは、超天才と称えられ、数百万人にひとりだと言われている。


更に更に!!


『全属性の魔法が行使可能』な『全属性魔法使用者オールラウンダー』は……

ひとつの時代にたったひとり、現れるか現れないかという類まれな希少さであり、『神の使徒にも匹敵する』という伝説の存在なのだ。


俺のアバターたるアラン・モーリアが、この『全属性魔法使用者オールラウンダー』だからこそ!

まるで全知全能の神様が地上へ降臨、

この物語の冒頭で、人間に生まれ変わったような能力といえる、

自慢のキャラだと言い切ったのである。


プレイヤー仲間に尋ねても、あらゆる攻略サイトを見回しても、

全属性魔法使用者オールラウンダー』の存在は確認出来なかった。


俺のアバター、アラン・モーリアは全プレイヤー中、

唯一の『全属性魔法使用者オールラウンダー』だったのだ。


そのアラン・モーリアの初期設定が、俺ロイク・アルシェ。


但し!

俺がとんでもない存在である『全属性魔法使用者オールラウンダー』という事がバレたら、街中どころか、王国中が大騒ぎ。

いずれは分かるにせよ、しばらくは内緒にして、

自由にのんびり暮らしたいと決めた。


……まあ、自慢はこれくらいにして、

攻撃魔法に関しては、『風弾』『風矢』を習得。

他の属性魔法は、内緒で修行しておこう。


という事で、繰り返しにはなるが、受講したオール5クラス、

全ての科目の『上級応用クラス』への申し込みを済ませたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


更に嬉しい事が起こった。


講座で仲良くなった冒険者女子達3人から、


「ロイク君、お疲れ! 基礎クラスのクリアおめでと! 一緒にお夕飯ゆうはん行こ!」


と誘われたのである。


今日の『習得無双』もあり、俺の評判はますます良くなっているらしい。


これは嬉しい!

過ぎ去った青春時代にも、女子から誘われて食事に行くなど、

ケン・アキヤマの人生ではついぞなかった。


食事をした経験が皆無とは言わないが、

誘うのは、「お願いします!」という低姿勢で、

いつも俺の方からばかりであったから。


え?

女子3人連れて、ハーレムうはうは?


ムーディな店へ連れて行って盛り上げ、全員ホテルへお持ち帰り確定?


いやいや、そんな事はしない。


何故なら!

俺が食事に誘われた先は、『ギルドの食堂』!

甘いムードは皆無だから。


え?

ならば、どこか、おしゃれな店に誘え?


いやいや、明日も講座受講の予定が朝から晩までがびっしり入っているし、

ムーディな店へ連れて行って盛り上げ、お持ち帰りしようたって、

俺が泊まっているのは、ルナール商会の経営するホテル。


女子を連れ込んで酒池肉林などしたら、ホテルにもろばれ。

支配人から、即座にルナール商会会頭、セドリックさんへ通報。


セドリックさんは、『誠実で強い少年』だからこそ、

ロイクがお気に入りなのだ。


せっかく、請負契約をしたのが、ご破算確定となってしまう。


そんな『若さゆえのあやまち』など、

中身が25歳の大人である俺はやらない。


青い奴と言われそうだが……

仕事と同様に「恋愛も相手に対し、誠実であれ!」が俺のモットー。


いずれ、この世界で『運命の想い人』に出会う日が絶対に来る!

俺はそう信じている!


お夕飯に誘ってくれた3人の女子がまじめなタイプだった事もあり……

俺は、清く正しく懇親を深めた。


その後、俺はホテルへ帰って入浴。

予習をして早めに就寝したのである。

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