第34話「そして、一度ある事は二度あった」

結局、ジョアキムさんと話がつき、

俺は円満な形で、クラン猛禽ラパスには入隊しない事となった。


何故なら、ルナール商会のように、折り合いがつけば、臨時でメンバーとなったり、

仕事を請け負う事ともなったからだ。


そして、ジョアキムさん、イネスさんには、呆れられ、

しまいには苦笑されてしまったが……


俺は、新たに『剣技』『回復魔法』『召喚術』上級応用クラス、

『防御』『格闘・殴打』『攻撃魔法』『防御魔法』『シーフ職』の基礎クラスの

8科目を受講する。


というわけで、冒険者ギルド総本部を出て、ホテルへ帰宅。

大量の教科書を持ち帰り、部屋で予習。

就寝まで、丹念に教科書を全て読み込んだ。


INT:インテリジェンス:知性が4,030、MND:マインド:精神が4,100と、

高い数値を示したせいなのか、記憶力も抜群。

教科書の内容は読めば覚えるの連続。

全て暗記してしまった。


え?

ゲーム異世界に来てまで、そんなに勉強してどうするって?

がり勉とか、いかがなものかって?


いやいや、今の俺にとって、勉強もゲーム感覚なんだって。


俺ロイク・アルシェの現スペックは、最強の魔法騎士アラン・モーリアの初期設定。

全てのパラメータをMAXに育てあげ、完全体にすれば……

まるで全知全能の神様が地上へ降臨、

人間に生まれ変わったような能力といえる自慢のキャラだ。


で、あれば、俺ロイク・アルシェも、

同じく全てのパラメータをMAXにし、習得スキルも更に増やし、完全体へ。


出来るのなら、

アランを更に超えるキャラに育て上げたい! 極めたい!というのが、

やり込みゲーマーの欲というか、執念である。


つまり、俺ロイク・アルシェを育成して、完全体にする事が、

リアルな能力のビルドアップにつながり、

素敵な地位と名誉、莫大な収入も、もたらしてくれる。


何を幸福の基準にするかにもよる。


だが、素敵な地位と名誉、莫大な収入を得る事は、

俺の人生目標「前世より1億倍、幸せになる」

為の、エネルギー及び潤滑剤になってくれるはずだ。


そして、これだけ勉強するのは、他にも理由はある。


ギルドの講義自体がとても楽しいと感じたからだ。


今日『剣技』『回復魔法』『召喚術』の基礎クラスを受講した際、

とうに過ぎ去ってしまった青春時代が戻って来たみたいで、嬉しかったのである。


まず、勉強と訓練が楽しい。


俺の中身は、アラン・モーリアの初期設定。

中身は25歳の大人、ケン・アキヤマ。

知識と実践が、砂漠の砂が水を吸い込むように、どんどん習得されて行く。


GAMEに例えれば、EASYモードで無双して、突き進むようなものだ。

前世でも、こうだったら、俺は超エリートになっていたに違いない。


またクラスの環境もGOOD!

何せ、一緒に講座を受講する講習生は、ほとんどが10代半ばから後半。

それも女子が6割くらいとやや多い。


クラスには年上女子も居るが、一番年かさで25歳くらい。

中身が25歳のケン・アキヤマであるロイクとは精神年齢が同じ。

話すのに全く違和感がない。


俺は就職して、結構長い間。

辛い事がある度、「学生時代へ戻りたい」が口癖となっていた。


過ぎ去った時間はけして戻って来ない。


それゆえ、所詮は現実逃避なのだが……

「分かる」「激しく同意」と、理解して頂ける方は絶対に居ると信じている。


しかし、奇跡は起こった!


どうしてこうなったのか、理由は不明だが、俺はゲーム異世界へ転生。

ケン・アキヤマから9歳若返った少年ロイク・アルシェとして生きて行く。


明日から、しばらく学生時代へ戻る!

否! 青春時代へ戻るんだ!


嬉しくなった俺は、その夜、ぐっすりと眠ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


翌朝……

俺は意気揚々と、冒険者ギルド総本部へ。


これから10日間、朝の9時から、夜の8時まで、ぎっしりと予定が入っている。

今日は、『防御』『格闘・殴打』『攻撃魔法』『防御魔法』『シーフ職』

の基礎クラス、さすがに昼休み、休憩をはさむが、

ほぼ一気の5連ちゃん、講義受講である。


但し!

もしも、『剣技』『回復魔法』『召喚術』基礎クラスのように1日。

いや、7日予定の講義が3日で『合格』が貰えれば、すぐ上級応用クラスへ。


否!

もっともっと違う科目の、更なる習得も可能かも。

そして、アラン・モーリアの能力を超えてやる!


何て、つらつら考えながら、昨日の『剣技』と同じ教習場、闘技場『中』へ。


『防御』の講座、やはり、簡単な話があって、

準備体操……ストレッチの指導である。


次に防御行動における、体さばき、足さばきの練習と続く。

このさばきは、ボクシングのディフェンスに近いような気がする。

更に盾の使い方を教授して貰い、即座に上達する事で、

俺は習得にのめり込んで行く。


これがまた、習得無双の開始であった。


仲間の講習生達は、最初呆気に取られていたが……

『剣技』『回復魔法』『召喚術』基礎クラスで、

一緒だった同窓生が、俺の事をいろいろしゃべったらしく、

情報は共有された。


そして、一度ある事は二度あった。


昨日の繰り返しである。

俺は『防御』『格闘・殴打』『攻撃魔法』『防御魔法』『シーフ職』の基礎クラスを楽しみながら、1日でクリア。


受講したオール5クラス、

全ての科目の『上級応用クラス』への申し込みを済ませたのである。

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