第31話「俺の事は、 ギルド内で結構な噂となっているようだ」

本日の講義第1時限目、『剣技』基礎クリア~!

次回から『剣技』応用だあ!


何か、学生時代を思い出す。


就職して辛くなった時、いつも学生時代に戻りたい……

そう思い悩んでいた頃が懐かしい。


さあ! 本日の講義第2時限目、『回復魔法』基礎行ってみようかあ!


という事で、俺は別棟の魔法教授室へ。


いよいよ魔法習得だ。


とは言っても、学ぶのは爆炎とか、絶対零度とか派手な攻撃魔法ではない。


あくまでも『私見』だと断っておきますが、

攻撃魔法に比べれば、回復魔法は少し地味である。


しかし、少し地味と言っても、

俺が攻撃魔法より先にこの魔法を選んだ事で、優先度は理解して欲しい。


長年RPGをプレイして、俺は痛感している。


回復魔法は、人間にとって無ければ生きられぬ、いわば水、酸素のようなものだと。

まあ、当たり前。

今更言われなくても常識という感じだが。


何故今更そう言うのか?


回復というと、俺の知り合いの某女子ゲーマーを思い出すからだ。


彼女は、クラン編成の際、回復役を入れるのをたびたび失念。

特薬草のみ持参、ボス相手にいっつも全滅していた。


一応……

彼女のクランは相当強かった。

なので、回復役は不要という考えだったらしい。


意図的なのか、確信犯的に毎度全滅。

「あ、回復役入れるの、また忘れた」

というセリフがお約束の彼女は、ズバリ反面教師である。

多分、今この時も、同じ失敗を繰り返しているに違いない。


前置きが長くなったが……話を戻そう。


講義が開始され……

先ほどの剣技同様、魔法発動前の準備体操が指導された。


剣技などの身体を動かす運動系の場合、主にストレッチが指示されるのだが……

魔法の場合、体内魔力を高め、精神を集中、安定させる為の『呼吸法』なのである。


呼吸法で体内魔力を高め、精神を集中、安定させた後は、

初歩の回復魔法『治癒』を発動する言霊ことだまの詠唱訓練である。


それもただ詠唱するだけでなく、発動した際のイメージトレーニングも行う。

今回の課題は回復の初歩魔法『治癒』が発動し、対象者の体力回復が成就した事をイメージするのだ。


回復魔法治癒は初歩中の初歩魔法。

術者により個人差はあるが、対象者の体力を100から500くらい回復させ、

ショックを受けたメンタルを癒す効果もある。


ちなみに、ステディ・リインカネーションの世界では、魔法を発動するワードを、

呪文と呼ばず、言霊と呼ぶ。


呪術的効果を望んで唱える言葉……呪文ではなく、

古代、言葉が持っていると信じられた神秘的な霊力……

「『言霊』が発した通りの結果が表れる力こそが魔法だ」という概念なのである。


さてさて!

教官の指示で、言霊の詠唱練習を1,000回行い、

次に魔力を込め、魔法発動を試みる。

上手く行かない場合は、言霊詠唱を再び行うか、呼吸法までさかのぼって、行う。


それでもダメな場合は、次回改めてチャレンジする。


冒険者ギルドの講座は、極めてシビア。


本日は第1回目の講座だから、発動出来ずとも問題ない。

だが、第5回目の講座における発動でダメだったら、

『適性なし』だと切り捨てられてしまう。

残る2回の講座は受講不可となり、当然、支払った受講料は戻って来ない。


俺はといえば、ここでも、DEX:デクステリティー:10,000《MAX》

器用さが最高値という効力、

そして習得済みの『回復』初級スキルが後押ししてくれたのだろう。


詠唱を30回で手ごたえを感じ、

魔力を込めた発動訓練は、まるで車のエンジンが一発でかかるような気持ち良さ。

初回のチャレンジで、楽々と回復魔法『治癒』を習得した。


魔法を習得したら、制御と発動安定のトレーニングを行う。

まあ、トレーニングと言っても魔力が尽きるまで、詠唱あるのみだ。

このトレーニングは熟練度の向上も見込める。


ここで、INT:インテリジェンス:4,030、MND:マインド:4,100から、

生成された体内魔力、つまりMP4,015が大いに役に立った。


回復魔法『治癒』の消費MPはわずか『3』

無尽蔵とは言わないが、楽に1,300回以上発動可能だ。


しかし、そこまで『治癒』を発動する必要はなかった。


100回まで発動したところで、回復魔法の教官が「ストップ」をかけたのだ。


「ストップ」が悪い話でない事は、教官の笑みから分かる。


「ロイク君、君の発動は完璧だ」


「ありがとうございます」


「君の事はサブマスターから聞いている。もう『治癒』は完璧に習得したな。次のレベルまで進んでくれ。『回復』と『解毒』を習得するんだ」


「分かりました」


「ははははは、教官室で剣技の教官に聞いたが、ロイク君は初日で基礎をクリアしたそうだな」


「はい、クリアしたから、上級応用のクラスへ行けと言われました」


「うむ! 我が回復魔法基礎のクラスも、楽勝でクリアしてくれ。ロイク君にはギルドも大いに期待している」


「ありがとうございます! 頑張ります!」


おおおおおおおおお!!!!!


どよめく講習生達。


何人かと話したが……

新人でランクB……ランカーとなった俺の事は、

ギルド内で結構な噂となっているようだ。


その後……

俺は無事、『回復』……対象者の体力を500から1,000くらい回復させ、

ショックを受けたメンタルを癒す効果の回復魔法。


『解毒』……文字通り、毒消しの効果がある回復魔法。


……ふたつの回復魔法を習得。


『回復魔法』基礎クラスをクリアし、

剣技同様に次回以降は、上級応用クラスを受講する事となったのである。

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