第4話「お前は首にする。それと村からも追放だ」
この世界で数多居るワンオブゼム。
最弱なNPCモブキャラの俺。
毎日毎日…
元冒険者のたくましいオヤジ店主に、超こきつかわれながら、何も抵抗出来ない。
そんな中、俺は考えた。
これでは前世と同じ!
社畜、もしくは奴隷のままだろ!と。
何とか現状を変えたい。
そしてこの先、どうやって生きて行こうかと。
思考停止はいけない。
そして、無為無気力に過ごし、腐って行くのはもっともっとイヤダ!
今、俺が生きるのは、あれだけやり込み攻略、熟知したゲーム
『ステディ・リインカネーション』の世界である。
「何とか、現状打破の方法はないものか」と考える。
『ステディ・リインカネーション』のキャラクターには、
どんなNPCモブキャラでも特徴、特技が設定してあるはず。
それを知り、見極め……
何とか、新しい人生に踏み出したかった。
だが、現世でPCやスマホのモニターを見て確認出来た、自分のスペックは、
この状況では全く分からない。
良くあるゲームや小説の、
「心で念じれば、スペックが浮かぶ」というお約束の裏技も使えなかった。
だから、自分の体力、魔力はどれくらいあるのか不明だし、
設定されているであろう、特技やスキルも、全く分からない。
ただ自分のスペックを知る方法が全く無いわけではない。
そうだ!
俺は、はっきりと思い出した。
スペック確認の方法……はある!
『ステディ・リインカネーション』の世界では、
「心の扉を開く」という特別な方法があるのだ。
もしも心の扉を開けば、『心の内なる声』が明確に聞こえるようになる。
『心の内なる声』が明確に聞こえると、
通常のスペック確認は勿論、レベルアップや能力獲得の際は、
特別なファンファーレで
本能的な危機回避能力もアップし、『心の内なる声』が
なので、騎士、兵士、そして冒険者など危険を伴う仕事の従事者は、
「心の扉を開く」事が多い。
「心の扉を開く」為の方法は、魔法、スキル等々いろいろある。
だが、元々その人が特別な魔法習得やスキルを持ち合わせない限り、
スペックの確認は出来ないとも思い出す。
但し「心の扉を開く」為には有料の方法もある。
創世神教会で金貨200枚……200万円をお布施するか、
冒険者ギルドの本部、支部で登録の際、金貨100枚……100万円を別途支払う事で、
「心の扉を開く」のが可能である。
だが、料金が相当高額なので、一般庶民では「開かない」人が多いのだ。
当然、貧乏NPC、俺ロイク・アルシェも、そんな大金は持ち合わせていない。
それゆえ、スペック確認は無理なのである。
という事で、悩んだ挙句、話は振り出しへ戻ってしまった……
やはり俺は大多数の中で、完全なワンオブゼム。
平々凡々な一般庶民のモブキャラ、それがこの世界の俺、ロイクなのだ。
『ステディ・リインカネーション』のNPCのスペックを思い出せば、
キャラクターの各数値がMAX10,000なのに、
ロイクのHPは、おそらく10から、せいぜい50の間。
魔力も多分、数字ひとけた。
当然、魔法も全く使えない、『超弱キャラ』であろう。
所持金は、薄給をコツコツ貯めたわずかな貯金のみ。
村外のフィールドには、様々な魔物がうろついていて、
経験値と金を稼げるが、現状では絶対ムリ。
リアルに死んで、即ゲームオーバーになるのは確定である。
旅立つにも、その先、生活するのも、いかんともしようがない。
現世でも厭世的であったが、転生しても所詮は同じ。
年齢こそ、25歳から9歳も若く、16歳となったが、俺の人生は変わらない。
ただただ『働きあり』のように、
この『ステディ・リインカネーション』の世界でも、
そんな変わらない日々、むなしく人生を送る予定だった俺。
無為できつい労働に明け暮れる時間だけが過ぎて行った……
しかし、「予定は未定だ」と誰かが言った通り。
転機は、いきなり訪れた。
何と何と何と!!
ある日俺は、勤めているダークサイドよろず屋のオヤジ店主から、
冷たく言われたのである。
「おい! ロイク、お前は首にする。それと村からも追放だ。村長と話をつけた」
「え? 俺が首? 更に追放ですか?」
おお、これがラノベで大流行りの『追放イベント』なのか!
まさか、実際に異世界で体験出来るとは思わなかった!
なんて、感動している場合じゃないぞ!
オヤジ店主は更に言う。
ふん!と鼻を鳴らす奴の目は、
完全に上から目線&蔑みの視線で俺を見ていた。
「ああ、そうだ。それと、これは多すぎるが、手切れ金だ。お前が見聞きした、一切の事は他言無用! 絶対にしゃべるなよ、しゃべったら、どうなるか、覚悟しておけ!」
何だよ!
3年間、毎日17時間働いて、日給が銀貨1枚の1000円だぞ。
その上、たった金貨10枚……10万円が手切れ金!?
多すぎるって!
ふざけるな!
このヤロー!
密かに
そんな俺へ「ぽいっ」と、たった金貨10枚ぽっちの『はした金』を渡し、
肩を怒らせ、オヤジ店主は俺を脅したのである。
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