第3話「いきなり、ゲーム内転生はしたけれど……」

……『寝落ち』から目が覚め、気が付いた俺ケン・アキヤマは、何と何と!!

中世西洋風の異世界へ転生していた……


それも都会ではなく、へんぴな田舎の村にある、

暗黒面バリバリな、ダークサイドよろず屋の少年店員となっていたのだ。


補足しよう。


よろず屋とは、漢字で万屋と書いて『よろずや』と読む。

よろずとは全てのもの、もしくはあらゆるものという意味であり、

すなわち何でも扱っている小規模な店の事をそう言うのである。

分かり易く言えば、現代のコンビニみたいな店だ。


転生した俺の生まれ故郷である村は、店がこの店1軒しかない超田舎。

なので、よろず屋は、いくつもの店を兼ねている。


この店は、食料品、酒は勿論、し好品、生活必需品、

雑貨、薬品、薬草、魔法ポーション、武器防具に護符、

宝石や、指輪、アクセサリー等々、様々な商品を扱っていた。


そんな店で、俺は働いていたのである。


そして、転生という感覚が、どういうものなのか、俺は体感した。


この世界における生まれてからこれまでの記憶が甦り、

ケン・アキヤマという自我を持ちながら、

完全体?の少年となって行く感覚なのだ。


そして、少年の記憶と、人々の話から、

俺が今居るこの国が、ファルコ王国で、王都がネシュラだと知った時、

「ここは俺が熱中していたゲーム、『ステディ・リインカネーション』の世界だ!」と、はっきり悟ったのである。


そう、俺はゲーム『ステディ・リインカネーション』の中へ転生したが……


自分がやり込み最高レベルにまで育てた、

主人公の、究極&華麗なイケメン魔法騎士、

アラン・モーリアのようには、なれなかった。


「ごらあ! ロイクぅぅ!! きりきり、働けぇ!」


……何て事はなかった。


ゲームの世界へ転生しても、地獄の状況は変わらなかったのだ。


俺の目の前には……

前世の社長と部長を足して2で割ったような、

顔の半分がひげでおおわれた、ごうつくオヤジ推定50歳過ぎが居て、

ひどく偉そうに怒鳴り散らしていた。


この威張りオヤジが、ゲーム転生した俺、少年ロイク・アルシェの勤める、

『よろず屋』のオヤジ店主なのである。


この世界に生きる『俺』の記憶がどんどん甦って来る……


ロイク・アルシェ16歳。

どが付く平民。

家族ナシ、天涯孤独。


……3年前、俺が13歳の時。

両親がほぼ同時に流行はややまいで亡くなり……

天涯孤独てんがいこどくの『みなしご』になった。


そんな薄幸な俺を、このオヤジ店主が表向き、

「親が死んで、ロイクは気の毒、可哀そうだ」と同情し、引き取ったようだが、

実は、同情したのは、上っ面の言葉だけの超大ウソ。


俺を引き取ったのは、けして善意からではない。


何故なら、


「孤児のてめえなら、飯を食わせるだけで、ガンガンためらいなく、一生働かせる事が出来るぜ! 誰にも文句は言わせねえ!」 


と得意げにオヤジ店主が言うのを聞いて、ドン引きした。


ああ、前世同様、異世界でも、

俺はダークサイドな店に勤務して一生を終えるんだ……

と、絶望感に陥った。


その上、このオヤジ店主。

前世社長のように、超・絶対的支配者のようにふるまうし、

一方で、村長にはごますってばかり。

手心を加えて貰い、店の経営が上手く行くよう、裏からわいろまで渡していた。


更に100倍くらい盛りに盛った昔の自分自慢語り、

冒険者時代の武勇伝を語りまくり……

意味のない精神論に終始するのは、前世の社長、部長と全く一緒であった。


まあ、さすがに無給ではなく、給料は一応、支払ってくれたが。


しかし、朝5時の掃除、品出しから、夜の10時の掃除まで働かされ、

日給がたった銀貨1枚、日本円で約1,000円のみ。


16歳にしたって、この異世界でも、相場の1/10くらいの子供の小遣いレベル、

とんでもない薄給なのである。


その上、酷い事に休みも週に半日しか、くれなかった。


断言しよう。


ロイクは16歳で若いから何とかもっているが、いつか絶対に倒れる。

これでは、前世以上の地獄じゃないか。


ゲーム転生した俺は嘆き、しかし、どうしようもない中……


故郷である、ひなびた村のよろず屋で必死に働き、毎日を生きていたのである。

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