第2話「胸糞悪い」

真心こころSide


 くっっっ…!!

 更新待ってたっっっ…!!


 校門の前に立ってスマホを見る。

 これが私の至福の時間だ。

 生徒会長は朝七時登校で…、生徒会室の花瓶の花を変えたり、水を注いだりするのだ。

 …このためだけにスマホがいい高校を選んだのだ。

 この間ねむくん作の初作品がやっと完結して、新作…そう、心綺しんきマフィアを連載開始した。

 この間、雑談部屋で設定とプロローグを見て今回も神作品だな、と思ったけれど、やはり、今見ると凄い…神作だ。

 こんな語彙力私にはない。

「えっと…っ。」

 そう言ってコメント欄を開いた。

 私のアカウント名は「アロ」。

 まぁ…自分の名前、天野真心の最初の文字と最後の文字を繋げただけだけど、割といい名前だと思う。自分なりに。

《今回も神作品ですね。》

 そうコメント欄に打った。

 ピコンッ。

「ん?」

 スマホが鳴ったので見てみたら…。

《@アロ に返信

 わかるっ!》

 …誰かは知らない子から返信がきた…。

 有名になったもんだなぁ、と思う。

 けど、ねむくんを応援するって…。あんまり他の人と交流はしたくないんだよね。

 これって、同担拒否って言うのかな…?

「っふぅ……。

 落ち着け私……。」

 私は生徒会長、と言い聞かせる。


「おはようございます!!」

 生徒たちの声が響き渡る。

「おはようございます。」

 それに冷静に応えるのが私の仕事。

 あと、

「…、胸元締めてください。」

「あ?こっちはあちぃんだよ。分かんねぇのか?」

「わかるも何も校則違反ですので。」

 注意するのも生徒会の仕事。

 特に夏、男は胸元開けたり、女はスカート短くしたり。

 …一回殴りたいくらいの人数が毎日校則違反している。

 でも、冷静に。冷静に自分を落ち着かせて言う。

 はぁ…。

「やっぱり小説だけが私の癒やしだぁ…」

 とぼそっと呟く。


 ❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑


 一時間くらいが経ち、八時十五分になる。

 あー、遅いっ!!遅すぎるっ!!

 殆どの生徒の登校を見守った。

 あとは…。

「あいつか…。」

 強敵…、武嚠だ。

 常習犯…まぁ、二回目だけど。

 自転車で来た…らしいが、これこそ代表する校則違反だと思う。

 遅刻だ。

「おはようございます。」

 ゴゴゴゴッと漫画でありがちな演出で「おはようございます。」と言う。

「ぁ…おはようございます…。」

 彼は反省模様だ。

 …珍しい。

 この前は完全に寝坊だった。

 だって髪がはねてたから。

 でも今日は違う。だからこそ許した。

「…何も言わないんですね。

 事情があったんですか。

 今回も許しますが、次こそは許しませんよ?」

「ありがとっ!」

 彼はニコッと笑って言った。

 …無駄にドキッとしたのは気のせいであろう。そう信じたい。

 私にはねむくんがいるんだからっ…そう言い聞かせて。

「別に。」

 周りにとっては冷たい反応をした。


 …胸糞悪い……っ。

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