片思い中の女の子、俺同端拒否らしい

雫乃裕翔

WEB作家

第1話「WEB作家」

 ――――――――――――――――――――

「ひっ…!!」

 目の前に化け物…だと思う。

 本当に、変で。で…でも、人間だと思う。

 人間が変形したようだ。


 ザシュッ


「…え…?」

「げ。」

 い、今あの化け物…?を片手で倒した!?

「ちっ…一般人がなんで軌圖憂きとうといるんだよっ!?しかもえてるし」と、彼。

 …怒りっぽいのかな??

「きと…う…ってなんですか。」

 思わず聞いてしまった。

「はぁ?お前さっき視てただろ?

 わかんねーとか、ばっかじゃないの。」

「初対面で馬鹿って言うのは失礼だと思います。」そう言おうと思ったけど、

 多分正論だと思う言葉を言うと、火に油を注ぐことになると思ったから…

 あ、あと、一応助けてもらった仲(?)だし、言わないでおいた。

 私、偉いと思う。空気を読んでる私すごい。

「まぁ、教えてやるよ。

 あれはまぁ、殺人鬼と化した人間だ。」

 あ、やっぱりあれ人間なんだ。

「ふむふむ」とメモを取りながら聞く。

「ん~なんつったらいいんだろ。

 まァ…この世界にはでけぇマフィア…殺し屋だな。が二つある。

 その一つが軌圖憂きとう

“爆撃”を謳っている。

 首領トップはまだ分かっていねぇ。」

「え?それって危険じゃ…。」

「だからだよ。」そう言って近くにあった石を真ん中においた。

 石…?

これを人間だと思え。」


「―――滅。」


 そう彼が唱えた瞬間。石…人間に火花が散った。

 でも、何故か石にはかけた様子がない。

 というか…。

「魔法っ!?術っ!?すごっ!?えっ!?どうしてっ!?」

「あー…それは後で説明するからとりあえず待て。」

「はいっ!!」

 タネとかあるのかな?マジックみたいに。

「…で、本題に戻る。

 何故、この石は割れなかったと思う?

 火花は散ってた。少しだけ爆発もしてた。」

 んー。なんでだろ。

 すると「こんなことも分からないのかよ。」と言って呆れた素振りを見せ、答えをいった。

「簡単だ。

“護っていたから”。」


「もう一つのマフィアは俺等の…白龍ホワイトドラゴン

 政府公認で、軌圖憂きとうと互角で闘えるよう作られた殺し屋チームだ。」

「へ〜かっこよ…。」

 …、

 …………、

 ……………………。

「ってマフィア!?殺し屋!?え!!」

「気づくのおっそ。」

「まぁいいや。」そう言って、後ろに背を向けた。

「このことは誰にも言うなよ。」

 静かに目を細めて言った。

 どこか行ってしまいそうで、それが怖くって。

 ついには言ってしまった。

「また、会える…?」

「っ…?」

 彼は笑って言った。

「さぁな。」

 その言葉から、やはり彼らしいと思った。

 ――――――――――――――――――――


 ふぅ…と息をついて目を開く。

 俺は現在、「心綺しんきマフィア」という小説を書いている。

 まぁ、ようするにウェブ作家だ。

 最近名がやっと上がってきたくらいの。

「公開」というところを押して、「今すぐ公開」というところを押す。

 毎日それの繰り返し。

 でも、読者からのコメントや、PV…まぁ、プレビュー数。他のユーザーがページを表示した回数と説明したほうがいいか。

 それらが俺の書く気力を出させる。

 スマホを見ながらたまにニヤついてるし…うえっ、想像しただけで嫌だわ。

 …まぁ、ニヤニヤしているのは本当だけどな。

 おっと、失敬失敬。

「うわっ…もうこんな時間っ…!!」

 時計は午前七時二十分を指していた。

 うちの学校…三月学園は、登校八時十五分厳守。

 三十分からHR…ホームルームが始まる。

 いやまぁ…生徒指導室に後で呼ばれるのが厄介なんだよなぁ。

「…間に合うかな。」

 そう言って、自転車を走らせた。

 三月学園は中等部、高等部と別れていて、俺は高等部。

 中でも高等部からの入学者はほとんどが有名中学卒業生だ。

 編入なんかは特に難しい。

 …っていうか、見たことないけどね。

 自転車走らせて美少女とごっつーんっ、って言うことはない…か…??

 …まて、自転車だとそういう演出はできない。まさに事故になる。

 歩いていけばそういう演出ある…?と、小説みたいなシチュエーションを妄想しがちな俺だが、今はそれどころではない。

 とにかく自転車を漕ぎまくった。


 ❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑


「間に合った…か…?」

 はぁ…はぁ…と息をつきながら腕につけていたデジタル時計を見る。

 八時十七分…ホームルームは始まってないが遅刻だ。

 どーしよ…。

「おはようございます。そして、遅刻です。武嚠さん。」

 にっこりという表示が付きそうな笑顔にびびった…っ。

 そう門のそばに立っているのは…。

 …俺の片思い相手、兼、生徒会長の真心…サンだ。

 容姿端麗、才色兼備、スポーツ万能、成績優秀。

 この言葉どれもが似合うほど。

 高嶺の花と言っても過言ではない人物だ。

「ぁ…おはよ、うございます…っ。」

「『おはようございます』ではありませんよね?

 これでニ回目です。そろそろ高校三年生という自覚を持ってですね…。

 …今日こその今日は許しませんよ?

 どうせ寝坊とかでしょう?」

「いいえ、違います。今回は小説を書いてました。」とは言えなかった。

 何故かって?そりゃあ真心サンとかだと

「…小説、ですか。まず、赤点回避をしたほうがよろしいかと。」とか、

「休日などではいいと思いますが、平日なので学校がありますよね。

 それがわかっていてするなんて馬鹿じゃないんですか。」

 …とか言われそう…。

「…何も言わないんですね。

 事情があったんですか。」

「今回も許しますが、次こそは許しませんよ?」と、一言。

 ありがたい。

「ありがとっ!」

 俺はニコッと笑って言った。

「別に。」

 静かに彼女は応えた。

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