第2話

 イアンが浮気している現場を目撃したシエラは、問い詰めることは出来なかった。その女は誰とか、いつから浮気しているのとか。気になることは沢山あったけれど、その場で聞き出すことは出来なかった。話しかけることなく早々に、立ち去った。


 浮気相手の女性とイチャイチャするのに夢中だったイアンは、シエラの姿に気付くことはなかった。


 学園の寮に泣きながら戻ってきて、世話してくれる使用人たちに心配されながら、一晩寝込んだシエラ。しかし、翌朝には気持ちを切り替えていた。


 あの浮気男と結婚するなんて考えられないから、婚約関係を精算する。そのために、浮気の証拠を集めようと考えた。言い逃れが出来ない状況を整えてから、私から婚約破棄を言い渡す。感情的にならないように自分をコントロールしながら、婚約を破棄するために綿密な計画を立てるシエラ。


 まずシエラは諜報員を雇って、イアンの学園生活を調査するよう命じた。すると、彼が浮気している現場や証言が続々と集まってきた。


 数日の調査で、イアンが複数の女性と浮気している事実が明らかになった。しかも一年前、入学してすぐ恋人を作っていたらしい。彼の浮気情報を入手したシエラは、ダウズウェル家に連絡した。


 貴方の息子は、学園で浮気している。しかも、複数の女性と。そんな状況なので、彼と結婚することは出来ない。彼との婚約破棄を認めてほしいと、お願いする手紙を送った。


 しかし、いつまで経ってもダウズウェル家からの返事がなかった。


 シエラは同時に、自分の家であるパークス家にも事情を伝える手紙を送っていた。返ってきた手紙を読んでみると、どうやらダウズウェル家が無視しているようだ。


 これは領地に戻って、直接会って話す必要があるのか。王都に来たばかりなのに、戻るなんて面倒な。


 せっかく学園に入学したというのに、婚約相手や家の事情に悩まされることになるなんて不幸ね。そう思いながらシエラは悩み、とりあえず返事を待つことにした。


 その間に、浮気調査も続けて行った。




 催促の手紙を何度も繰り返し送り続けて、三ヶ月ほど経った。ようやく、シエラの手元にダウズウェル家からの手紙が届いた。


 だが、その手紙の内容にシエラは落胆する。


 浮気はない。ただの勘違い。だから、気にする必要はない。婚約を破棄するようなことじゃない。


 ダウズウェル家は、イアンは浮気していないとシエラの訴えを否定した。イアンが浮気していることを、一切認めなかった。


 手紙を読んだシエラは穏便に済ませようとしていた考えを改め、容赦しないことに決めた。イアンもダウズウェル家も、絶対に許さない。


 覚悟を決めたシエラは、三ヶ月の調査でさらに集まった、イアンが浮気をしていた証拠を持って、とある場所に向かった。そして、彼女は婚約者と話し合う前に様々な手続きを済ませる。


 シエラは全ての準備を整えてから、婚約者のイアンに会いに行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る