浮気者な婚約相手との関係を精算したら、大事件になったお話

キョウキョウ

第1話

 男爵令嬢のシエラ・パークスには婚約相手が居た。名前はイアン・ダウズウェル。シエラと同じ、男爵家の長男だ。


 二人が婚約したのは、シエラが十歳でイアンが十一歳の頃。今から約五年前のことである。領地が隣同士だったパークス家とダウズウェル家は、これから先はお互いに協力していこう、という話し合いが行われた。


 その時に、協力関係を結ぶ証として二人の婚約が決まったのだ。


 シエラとイアンの二人は、一ヶ月に一度お互いの領地を行き来して、会っていた。その頃からシエラは、結婚してからの生活を想定して精力的に活動するようになっていった。


 パークス家やダウズウェル家の領地経営に意見を出して、雇っている使用人たちの仕事を指示したり、雇用条件を見直したり。婚約相手であるイアンの、日頃の態度や振る舞いなどを注意して、次期当主にふさわしい人物になれるように教育した。


 最初の頃は、イアンも素直に婚約相手の言うことを聞いていた。だが、歳を重ねていくうちに鬱陶しく思うようになった。


 なんで俺が、年下の女にあんな事を言われなくちゃならないのか。


 そんな不満を募らせていったイアンは、徐々にシエラのことを避けるようになる。シエラが話しかけても、無視するようになった。顔を合わせる頻度も、徐々に減っていく。シエラも仕事が忙しくなって、イアンのことを気にかける余裕が無かった。


 二人の仲が元通りになる前に、イアンが学園に入学する年齢となった。彼は先に、王都にある貴族学園に入学するために、旅立つ。


 シエラは、その一年後に入学する予定だった。


 領地に残されたシエラは仕事の合間に、王都の学園に居るイアンに手紙を送った。けれども、彼から返事の手紙はなかった。何度も手紙を送ってみたが、一度も返ってくることはなかった。


 自分の手紙は読まれたのか、ちゃんと手元に届いているのか。それすら分からないような状況で、シエラはパークス家の領地で一年を過ごした。


 ようやくシエラも、学園に入学する年齢になった。イアンの入学から遅れて一年、彼女も貴族学園に入学するため、今まで暮らしてきた領地から旅立った。


 久しぶりに婚約者と会える。そんな期待に胸を膨らませていたシエラ。だが、その光景を見て彼女は唖然とする。


 ひとつ上の学年で先に入学していたイアンが、シエラとは別の女性とイチャイチャしていたから。入学初日のことだった。


 シエラはショックを受けた。一年間頑張って、やっと婚約者と会えると期待して。ようやく会えたと思ったら、裏切られていたなんて。

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