第3話 ダンジョンの中
ほぐし屋が硬く閉ざしたダンジョンの入り口──超巨大ゴブリンの肛門──に取り付くと、リュックから羽根のようなものを取り出した。そして肛門をじっと見つめている。その表情は先程までの飄々としたものと打って変わって、真剣……いや、妖艶だ。
「おい、ベン。あれは何をしているんだ?」
ブジーが首を捻るが俺だって分からない。2人で困惑しているとほぐし屋が動き出した。
サワサワサワサワ。
羽根で肛門の外側をくすぐり始める。手の動きはしなやかで緩急自在だ。そして徐々に動きが現れる。
ヒクッ。
ダンジョンの入り口が反応した。まるで老婆が皺くちゃの口で喋っているように、モゴモゴと動き始める。それを見てほぐし屋がニヤリと笑った。
「そろそろほぐれてきたっすよー!」
その声に俺とブジーは身構える。いよいよダンジョンの中に入るのか。一体どんなところなのか? 期待感が高まる。
「キタキタキタキターッス」
ほぐし屋の操る羽根が激しく動き、どんどんと核心──肛門の中心──へと近づいていく。そして──。
パカンッ!
唐突にダンジョンの入り口が大きく開いた! 一体どんな理屈なんだ!!
「ブジー、行くぞ!!」
「おう!!」
俺達はヒクつきながらぱっくりと開いたダンジョンの入り口に飛び込んだ。心臓は耳につく程に早鐘を打っていた。
#
光を放つ魔道具で辺りを照らす。ダンジョンの中──超巨大ゴブリンの肛門の中──は生暖かい空間だった。ゴブリンの深緑の外見とは違い、薄い桃色の壁が延々と続いている。そして──。
「お、おえぇぇ」
とにかく臭い。何故か深呼吸をしたブジーが無様にえずく。俺は臭気に耐えながら香草で燻した布をリュックから取り出し、鼻と口を覆うように顔に巻いた。爽やかな香草の香りが広がり、全然息も苦しくない。
「早くお前も布切れを顔に巻くんだ」
「……お、オエエエエ。……持ってない」
はぁ? こいつ馬鹿なのか? ルーキーの癖になぜギルド職員の話を聞かない?
「耐えられるのか?」
「お、俺様を誰だと思って、オエエエエ……。はぁはぁ、大丈夫だ」
全く大丈夫ではなさそうだが、心はまだ折れていないようだ。ならば俺がとやかく言うことはない。それは野暮ってもんだ。
「よし。進もう。山ほど魔結晶を持ち帰って今晩は豪勢に宴会といこう」
「お、おうよ。俺様の凄さを見せて……や、る……オエエエエ」
こいつ、本当に大丈夫か?
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