第115話 弟子入り志願

「弟子にして下さい!」

 ディーノとジェイルが振り向くと、

 ……

 小学生?が3人いた。

 子供だ。冒険者の格好をしているが、子供だ。

 男の子が2人と女の子が1人。

「えーっと……」

 困った顔を見て、

「私たち、プレイヤーです。」

 驚いた。しかし、こうなると邪険に出来ない。

 3人ともプレイヤー、そして、

「来年、中学生です。」

 3人とも小学生だ。

「仲間にしてあげたいけど、僕、実は弱いんだ」 

 一緒にいても、守ってあげられない。これが本音だ。

「僕達見てました。中ボス倒すとこ。強いんでしょ?子供だからダメなの?」

 あの場にいたのか……でも、

「強い敵しか倒せないんだ。」

「???」

「本当なのよ。」

 ジェイルさんも多分、同じ気持ちだ。

「……それでもいいです。」

 と、女の子。

「だって、ボスは倒せないって人より、

 100倍すごくない?」

 [世界]へ来て、一番感動した言葉を貰った。

 もう、断われなかった。断りたく無かった。

「君たちはどのくらい強いの?」

 そうだ。彼女は冷静だ。いてくれて助かった。

 フィールドで何とかなりそうなら、一緒に行動できる。

 こうして、街の外で戦って見ることに。

 ……やはり、一番弱かった僕。

「……ホントにポンコツだったんだ。」

 子供は正直だ。だが、子供にポンコツと言われるのは、悲しいものがある。

 口にナイフを咥え、二刀流で戦うレン君。職業は剣士。レア特典は[二刀流]。しかしこれは、

「レン君の三刀流は、海賊狩り?」

「はい!」

 やっぱりだ。こだわりの三刀流だ。

「海賊狩りは、本当に強い奴とやるとき以外は、一刀流か二刀流で戦ってるの知ってた?」

「……そうかも、」

「まずは一刀流、二刀流から極めよう。」

「はい!」

 偉そうに指導しているけど、僕がゲーマーなだけ。知識だけ。彼の方がずっと強い。

 剣士(彼)は戦士(僕)より、剣が使える。

 次はハルト君。得意はブーメラン。

「俺も剣が良かった。」

 しかしハルト君、聞けばブーメラン『A』投射も『A』、剣技は『C+』だが、レア特典、当たりを引いた感がある。

「ブーメランはね、カッコいい技が多いよ。」

 そう言っても、レン君を羨ましそうに見ているので、投げない時の持ち方を、バナナのように持つよう薦める。攻撃するとき剣道のようになる。

剣技スキルを成長させるため。『C+』は『B−』への成長が早い。剣技『B−』は普通に剣士と呼べるレベル。

 最後はヒナちゃん。魔法使い。

 能力は普通かな?普通の魔法使いかな?

「私、得意魔法とか無いの。レア特典とかもへんなのだったし……」

 ちょっと寂しい顔をするヒナちゃん。可哀想。

「何種類くらい使える?」

 火力低くても、3種類くらいあれば、結構役に

「5種類。」

「えっ?全属性?!」

「うん。」

 それはすごい。魔法は弱点を探る用途でも使える。最初から全属性使えるのは優秀だ。

「すごいよ!大当たりだよ、きっと!」

「ほんとに?」

 あまり喜んでいない。火力が出ないで悩んでいるのかな?

「レア特典は、どんなの?」

「変なグローブだった……」

(魔法使いで、グローブ?)

 見せてもらった。

[魔装グローブ]革製の黒い手袋みたいな感じ。

(Sレア?!Sレアのグローブ?!)

 武器に魔法を付与できる、これは凄い!

「メチャクチャすごいよ、これ!」

「……でも、全然使えないの。」

 ああ、そうか。A+以上の武器に付与できる、

この子たちは、まだ持っていない。

 スマッシュブレードを取り出した。

「僕の剣に、ちょっとやって見て。」

 グローブを装着、両掌でなぞるようにすると、

「わあ!」

 炎をまとった剣になった。

「これからみんながいい武器を持つようになったら、ヒナちゃんは切り札になるよ。」

 初めて喜んでくれた。

 嬉しい。

 この子は僕のこと「100倍すごい」と言ってくれた。僕を認めてくれた2人目の人だ。

 いや、この子たちみんなそうなのかも。弟子入りしたいと言ってくれたんだから。

「すごいね。」

 とジェイルさん。

「ほんとすごいよみんな、」

「あなたがよ。」

「え?」

「教え方、すごいうまい。」

 微笑むジェイルさん。この人が、僕を最初に認めてくれた人。ボス魔物を倒す前、何の実績もない僕と仲間になってくれた人。


 武器を買いに街に戻った。

 何故か入口の正面に、謎の柱がある武器屋。でも、この街にはここしか武器屋がないので入る。

 レン君には大きめの剣。見た目の良いのを背負わせた。左右の腰の鞘と合わせて3本。

「これで(ナイフ咥えなくても)3刀流を名乗れるよ。」

 と言ったら喜んだ。使わなくても3本持っていれば、三刀流だ。

 ヒナちゃんには杖と装飾品、ジェイルさんにも欲しいものを選んで貰った。

 宝石(イミテーションかな?)の付いた杖と装飾品、楽しんで選んでいた。

 この店には高レアの装備は置いてないが、見た目がそれっぽいのが多くて良かった。

 ハルト君用に買ったブーメラン4つを実演。

 剣士より戦士に利点があるとすれば、ほとんどの武器を使用可能なこと。戦士は使えるだけ。忍者は全て使いこなせる、という違いはあるけど。

 ブーメランを両手に持ち、まず右手投げ、3個目を取り出し、ブーメラン二刀流で斬りつけ、左手投げ、4つ目を取り出し、右投げ、最初のが返ってきたのをキャッチして二刀流斬りつけ……とやろうとして、キャッチ失敗。

「ハルト君の適正なら、もっと連続技ができるようになるよ。」

 気に入ってくれたようだ。

 そこに、後で投げたのが戻ってくる。わざと取らない。地面に刺さった

「基本的に、自分や仲間に当たらないようになってる。ただ、絶対じゃないから一応注意してね」

 それから、どうしても避けられないウィークポイント、やはり威力が剣に劣る。格段に劣る。

 でも、今から剣を持たせると、不遇の日々、辛抱の日々が続く。不得手なまま、鍛錬の日々になる。1人ならそれでもいいが、レン君と比べてしまうだろう。楽しみながら剣技スキルを上げた方がいい。

 再びフィールドへ。

 各々試している。みんな強いな。僕よりずっと強い。僕は見てるだけだ。

 そして、ジェイルさんも、僕の隣で見ている。戦闘技が無い彼女。でも、貴重な回復役、役立たずの僕とは違う。

「ねえ、ダンジョンに入ってみない?」

 すぐ近くにある。前のパーティで、僕が「入ろう」と主張してた場所がある。

 子供たちは乗り気だ。何かあったらという不安も少し浮かんだが、いや、前のパーティよりも、もうすでに強いかも??

 ジェイルさんも、思ったのかも知れない。


「ダンジョンボスは任せてね。」

 守って貰いながら進む。説得力がまるで無い。

 街でのボス戦を見てなければ、この子たちは信じなかったろう。今でも半信半疑かも知れない。

 奥まで来た。街の側のダンジョンだ。それほど深くない。

 ボスも弱いなんてこと、ないよな?

 ちょっと不安になる。弱いと困る。弱いと勝てる気がしない。

 出た!

 迫力あるダンジョンボス!

 よし、体が反応した!勝てる!

 双頭の熊、ゾッゾよりデカい、が、一刀で一頭の熊、真っ二つになって消えた。

「すっげー!」

「やっぱホントだった!」

 なんとか面目躍如。

 ドロップ報酬は[連携のミサンガ]。コンボや補助、バフデバフの効果が上がる。全員分入手。いいチームと言われてるみたいで、嬉しかった。

 帰り道……やっぱり足手まとい。

「不思議。」

「謎。」

「……でもやっぱすげーよ!」

「うーん……」

「じゃあどっちがいい?」

「?!そっか、ボス倒せる方がいい!」

 なんとか、ギリ、面目躍如?

 

 街へ帰る手前で、別パーティと遭遇。

 げっ?!前のパーティだった。

「子供と組んだのかよ?!」

 思いっきり笑われた。

「お似合いだな、お似合い!お似……」

 後ろを歩いていたヒナちゃんとジェイルさんに気付いた。

「手だけは早いってか?」

「ガキ連れてままごとごっこか?」

 嘲笑ムードから険悪ムードに。

「オジさん達はそこのダンジョン攻略したの?」

 ガキと言われてカチンときたレン君、逆なでしてしまう。

 囲まれたが、暴漢撃退アイテム[乙女の守り]を持っているジェイルさんは素通り。迂闊に触れるとスタンガンみたいな電撃を食らう。

 子供たちも、乙女の守り子供バージョンみたいなのを持っていた(防犯グッズ?)。性別関係なく初期装備なのか、3人とも、それを見せてスルー。つまり、僕だけが囲まれた。

「みっともないよ。」

「こういうの取ってから文句言ったら?」

 ドロップ報酬の連携のミサンガを見せながら抗議、いや挑発しているレン君。

「うるせえ、クソガキ!」

(ほんと、みっともない。でも、子供に守られているだけの僕もみっともない……)

 あれ?

 ジェイルさんの姿がない?

 何故なのか、すぐに解った。

「私の恩人をどうする気だね?」

 街の外なのに、

 市長と自警団の兵士たちが現れた。

 傍らにジェイルさん。彼女が呼んでくれたようだ。


 市長の屋敷で豪華な食事の接待を受ける。

 元仲間達は街を追放処分となった。未だに入口付近で雑魚退治してた連中、次の街まで行けただろうか?

「お、これ美味い。」

 ご馳走を遠慮なくがっつくハルト君。

「みっともないぞ。」とレン君。

「口の周りソースだらけよ。」とヒナちゃん。

「自由に食べてくれ、マナーなんて気にしなくていい。若者は元気が一番だ。ディーノ殿の仲間なら、君たちもVIPだからね。」

「びっぷ?」

「お客様ってこと。」

 現実でも仲のいい幼なじみの3人。見ていて微笑ましい。

「君は妻と、子供を守ってくれたんだ。」

 改めて感謝される。動けなかった妊婦さんが、市長さんの妻だったらしい。

「あのとき、実はさっきの彼らも近くにいてね。一目散に逃げてったのを覚えている。もちろん、そのことを咎める気も、蔑む気もない。私だって妻の事しか考えてなかった。」

 でも、と市長は続ける

「何もしなかった」事と「何もしなかったのに、後からイチャモンつける」事は、全然違う。後者は許せない。だから追放処分にした。

「私の家族もすぐ側にいた。」

「私の友人も。」

 同席している兵士たちが次々声にする。

「俺は救世主様のために動いた訳じゃないぜ。」

 まだ完治していない右手で、ぎこちなく食事している隊長だ。

「また美味いご馳走が食える。これは、まだすぐ側に魔物がいたのに、回復処置をしてくれた嬢ちゃんのお蔭だ。俺は、嬢ちゃんの頼みなら何だってするさ。」

 そうだ。戦えないのに逃げなかった彼女の方が立派だ。


 宿屋への帰り道、武器屋の前を通ると、中央の邪魔な柱が無くなってた。

 誰かが引き抜いたのかな?

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