第7話

やる気が出るように信頼されていることを思うようにしました。

「そうは言っても俺は人を殺して生きているからな。まっとうな生き方ではない」

面倒くささを消すことはできません。


やる気が出るように友人を思い出してみました。

「あの時は感謝してくれたけれど音信不通になってしまった。確かに俺の存在は脅威なのだろう。この道は自分で選んだのだからあいつを恨んだことなどないが、あいつの不安は消えないだろうな」

友人を気遣うことはあっても、それがやる気に繋がることはありません。


「ならば、今まで奪った命の重みを考えてみるか。命を数えて、その分をちゃんと生きてみるか? 無理だな。数えたって奪った命は戻ってはこない。ちゃんと生きるかどうかは奪った命とは何の関係もない」


親分に感謝したりもしました。

「俺を立派な殺し屋に育ててくれた。仕事をくれるのも有難い。多分、頼りにされているとも思う。感謝はしている。でもだからといって」

考えるのも面倒くさいのでした。


すると、その時、どこかから音楽が聞こえてきました。

下の階の部屋からです。

静かに聞いていると不思議なことが起こりました。

心に力が貯まっていくのがわかるのです。

体中にやる気がみなぎっていくのがわかります。

元気。

そんな気分を久しぶりに感じています。


殺し屋にやる気を出させたのは音楽でした。


「屋敷に戻るか」

親分と話がしたい。

今後について語りたい。

そんな気分でした。


刺客は一瞬でやっつけました。

まさに「瞬殺」でした。


そして、大きな伸びをしました。

面倒くさいと感じていた時の伸びとは違って、足のつま先から手の指先まで命を行き渡らせるような、そんな流れのある伸びでした。

自分が空まで届くんじゃないか。

目を瞑って大きくなるところを想像していました。

想像する。

子どもの頃ぶりでした。

懐かしいな。



殺し屋の体は伸びをした体勢のまま倒れました。

親分が雇ったもう一人の殺し屋が遠いビルの屋上から頭を狙ったのでした。

即死でした。



殺し屋は子どもに戻って野原を駆けて行きました。


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めんどうくさがりの殺し屋さん 丸 子 @mal-co

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