【 第5話: ニヤ国のグルメ 】


 ミャーは、恥ずかしそうに顔を赤らめてうつむきながら、猫ニャンニャンの手を胸の前でわちゃわちゃしていた……。


 こいつ……、完全に勘違いしている……。

 俺の話を聞いていただろうか……、とても不安だ……。


 すると、俺の目の前に、おいしそうな料理が運ばれてきた。

 見るからにこれは、俺の大好物の『白子しらこ』だ。


 「(うん、これは普通にうまそうな白子だ)」


 俺は、それをスプーンですくって、一口頬張ほおばった。


「もぐもぐもぐ……、んっ……? うげげげげげげげぇ~~!! 何じゃこりゃあーーっ!!」


 すると、ミャーはまたしても俺にこう言った。


「タロー? ひょっとして、猿の脳みそ、口に合わなかったにゃ……? 羊の脳みそに変えるにゃ?」

「はぁ? 猿の脳みそも、羊の脳みそもいらねぇーーーーっ!! うげげげげげげぇ~~っ……」


「ねぇ、グリフ! どうもタローは冷たいのは苦手みたいだから、熱いのに変えて差し上げてにゃ!」

「はい。熱い猿の脳みそでございますね。ミャー姫!」

「グリフ、うげぇっ。持ってこなくていいから……。うげぇぇ~~っ……」


 次に運ばれてきた料理は、何やら見たことのある斑模様まだらもようの厚い皮を被った、真ん中に骨らしきものが見える丸く太い棒状のもの……。


 多分、これは、『』だろう……。


「あれっ? タロー、アナコンダのバター焼き、お口に合わなかったにゃ?」


 やっぱり、そうだった……。

 食べなくて、正解だ……。


 そして、最後のデザートには、何やら得たいの知れないプルプルとしたゼリー状の『濃い赤い色』をした食べ物……。

 この色からして、このデザートは、絶対に『』が入っている……。


「タロー、このデザートおいしいにゃ♪ ミャーが『あ~ん』してあげるにゃ♪」

「あっ……、遠慮しとく……」

「どうしてにゃ? 遠慮しちゃいけないにゃ。はい『あ~ん』……」

「いらねぇから……」

「えっ……? ど、どうしてにゃ……?」


 ミャーは、少し涙目になっているようだった……。

 すると、慌てたように、グリフが俺の元に駆け寄ってきて、小声でこう言う。


「タロー様、皆さまがご注目されています。一口だけでも、お召し上がり下さい」


 そう言われて周りを見ると、いつしか出席者の人たちは、皆、俺たちの方を見ており、この『あ~ん』の行方を固唾かたずんで、見守っているではないか……。


 俺はもう、この状況から逃げることができないことを悟った……。



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