【 第6話: 『あ~ん』だにゃ♪ 】


「タロー様、お願いです。どうか、ミャー様の『あ~ん』をお受け取り下さい」


 グリフはそう言うと、ひざを付いたまま、俺に深々と頭を下げた。

 もう、ダメだ……。

 逃げられない……。


 皆は俺に注目している……。

 俺が、ミャーの『あ~ん』を受け取るのを期待して、ジ~ッとこっちを見ている……。


 俺は、完全に追い込まれた……。


「さあ、タロー様。ミャー様の『あ~ん』を……」

「あ、ああ……、わ、分かった……。食べるよ……」


「ミャー様、もう一度、タロー様に『あ~ん』を」

「ありがとにゃ……。グリフ……」


 ミャーはそう言うと、涙を拭い、もう一度スプーンにすくった、『』が入っているであろうゼリー状のものを、俺の口へ近付けた。


「タロー、はい『あ~ん』……」


 俺は観念し、渋々しぶしぶ口を開ける。

 やはり、鉄臭い匂いがしている。

 そして、ミャーの持つスプーンから、そのゼリー状のものがスルリと、口の中へ滑り込んでくる。


 呼吸を止めて、とりあえず、噛んでみる。

 甘くもない。予想通り、うまくもない。

 まさに『鉄味てつあじ』のゼリーだ……。


 俺は、皆の視線を浴びながら、一気にそれを飲み込む。


『ゴクリ……』


 そして、俺は一言こう言った……。


「ミャー姫、大変おいしゅうございます……」


 すると、観衆はそれを待っていたかのように、大きな歓声を上げて、俺たちを温かく祝ってくれた。


『ワ~ッ! パチパチパチパチパチ……』


 恥ずかしい……。

 実に、恥ずかしい……。

 俺は、今日ここに来る時に出てきた、時空の『ぽこ』にでも、今すぐ入りたい気持ちだった……。



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