【 第8話: お城へ行くにゃ♪ 】


「ミャ、ミャーちゃん……? こ、これは、一体どういうことなのかな……?」


 ミャーは、俺からゆっくり離れると、涙を拭いながらこう言った。


「タロー……。タローをお父様に紹介したいから、一緒に来てほしいにゃ……?」

「えっ? 君のお父さんに……? 今から……?」

「うん……、今からミャーと一緒にお城へ来て……」

「は? お城……?」


 こうして、俺は、訳も分からず、ミャーと騎士グリフに連れられて、お城へ向かうことになった。


 今いる丘からは、お城は見えてはいたが、結構な距離がありそうだ。

 そう思っていると、騎士は隠しておいたもう一頭の馬に俺を乗せた。


「タロー様は、こちらの馬にお乗り下さい」

「あ、ああ、ありがとう……。(さっきとえらい対応が違うな……)」

「ミャー様は、私の後ろに一緒にお乗り下さい」

「ありがとう。グリフ」


 お城へ向かう道中、この不思議な世界のことと、この姫だという『ミャー』のことを色々考えていた。


「(何で地下なのに、空があるんだ? しかも、青じゃなくて緑色だし。それに、このお椀をひっくり返したような木々は何だ? 道はあるけど、アスファルト舗装されている訳じゃなく砂利道じゃりみちだ……。文明はどこまで栄えているんだここは……?)」


 そんなことを考えていると、前を行くミャーが俺の方へ振り返ってこう言った。


「タロー、どうしたにゃ?」

「へっ? あ、ああ、何でもないよ……。き、綺麗な景色だなぁ~なんて思ったりしてて……」

「そう。もうすぐだからね♪」

「あ、ああ……」


 ミャーのその猫ちゃんコスプレで、八重歯を見せてニコッとする姿に、俺は不覚にも胸が『キュン』としてしまった……。

 32歳のおやじなのに……、こんな小娘に……。

 いかん、いかん……。俺の妄想は暴走しそうだった……。


 緑の木々を通り、川の上の木でできたかっこいい橋を渡ると、そこには意外に大きなお城が姿を現した。

 お城と言っても和洋中をミックスしたみたいな、色は何だか統一感のないカラフルで、どこかアンバランスなお城……。


 んっ? 待てよ。

 このお城の感覚……、どこかでこれを一度味わったことがある……。

 そ、そうだ……。間違いない!


 このデザインセンスは、『織田 信長おだ のぶなが』のセンスに似ているんだ……。

 見事にアンバランスなお城……。何故、尾張でもないこの国に同じセンスが持ち込まれたんだ……。


 そんなことを思っていると、グリフが突然、こう叫んだ。


「ミャー姫のお帰りだぁーー! 扉を開けーーい!」



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