【悪魔の絶頂】第43話 地獄の拷問の開演

 「トントン」


 501号室のドアがノックされた。


 無用のノックだとばかりに、部屋主の返事を待たず、キィーとドアが開かれた。


 女は恰も通い慣れた愛人のように、そっとドアを閉め、靴を脱ぎ、屈んでそれを揃えた。

 

 靴を揃えた女は、立ち上がり、男の居るベットを見た。


 男はやはりベットに座り、煙草を蒸していた。


 男と女の視線が合った。


 女の瞳は既に濡れていた。


 女は昨日とは違い、ベージュのコートを羽織っていたが、やはり、白いセーターを着込み、ジーンズを履いていた。


 女はコートを脱ぎ、軽く折り畳み、片手で抱えると、ゆっくりと男の座るベットに近づいた。


 男は昨日と同じように女を睨んでいた。


 女は男の座る前まで来ると、恥じらう乙女のように下を向いた。


 男は女の抱えたコートを取り、ベットサイドに置いてあげた。


 そして、男は何も言わず、ベットに横になった。


 女は尚も佇み、男が声を発するのを待っている風であった。


 破廉恥な言葉、罵りの叱責、恨み節


 女はどんな言葉でも良いから男の声を待っていた。


 いや、優しい言葉は要らないと思っていた。


 痛ぶられ、虐められ、犯され、逝かされる代わりとしての、優しい言葉は滅相なく、要らないと思っていた。


 そう。


 女は、太々しく怠惰に横たわり、無精髭の中に埋まる口に煙草を咥え、埃しか喜びそうもない僅かな光に対しても、無情に紫煙を吹き散らし、懲らしめている悪魔のような男に、既に感じていた。


「また、やられる。きっと、やられるのよ、私。散々に痛ぶられるの…」


 女の身体は言葉の意味とは裏腹に内部は既に行為に備え、潤滑油である体液を放出しようと準備に入っていた。


 女の心も同じであった。一言も声を掛けてくれない男に感じてしまっていた。


「愛のないセックス、それは私の結婚から始まったもの…、感じる芝居をしていた。


 でも、違うの…


 結婚のと違うの…


感じてしまうの…


 あんなに下品に扱われ、あんなに乱暴に扱われ、愛の言葉一つも投げかけてくれないのに…


 死ぬほど感じてしまうの…


 貶されれば、貶されるほど、感じてしまうの…


 お願い…


 ま、ま、また、痛ぶって、虐めてぇ~、弄んでぇ~、


 お願い…」


 内心こう願う女は、後ろ向きに男の横たわる隙間にそっと小さな尻を落ち着かせた。


 男は何も言わない。


 男は何も施さない。


 ただ、煙草を蒸している。


 女は仕方なく、娼婦のように服を脱ぎ始めた。


 丸く小さな尻にフィットしたジーンズを腰をくねらせながら脱ぎ、そして、また、立ち上がり、昨日と同じ白のセーターを脱ぎ捨てた。


 そして、女はブラジャーをゆっくりと外し、小さなスキャンティーのみとなった。


 その女の陰部をやっとのことで包み隠している小さな布切れは、既にしっとりと濡れて、秘口に食い込んでいた。


 小さな布切れ一枚となった女は、暫し、男にこの姿を見て欲しそうに立ち尽くしたが、それも叶わぬと諦め、女はそっと屈み込み、男に被さるようにゆっくりと身体を寄せていった。


 そして、紫煙に煙る男の無精髭を犬のようにクンクンと匂いながら、舌で舐め上げ、そして、咥えた煙草の邪魔にならないよう、遠慮がちに男の唇を突くように舐めるのであった。


 それでも男は何も言わない、何もしてくれなかった。


 女は男の脚に白く細い長い脚を絡ませ、右手を男の股間に伸ばし、掌でそっと揉むように触り始めた。


 止めろとも言わない男に、女は安堵した。


 女の表情の強張りは次第に緩み始め、笑みのような淫靡な表情を浮かべ出した。


「怒ってない。良かった…、怒ってないわ…」


 女はそう思い、男に気に入られようと、正に娼婦のように、男に愛撫を施し始めた。


 その時


 男は煙草をベットサイドの灰皿に擦り消し、そして、煙草を消した指で、急に女の乳首を強く摘み、捻った。


「あぅっ」と


 女は仰け反り、喘いだ。


「や、やっと、してくれる…、待ってた…、やっと、感じさせてくれる…」


 そう思う女の顔は、乳首を捻られた痛みに苦痛の表情を浮かばさせながらも、食いしばった口元から唾液が流れ落ち、いかにも甘く感じ至った表情を浮かべており、その白い裸体は紅潮し、体内の体液は溢れる用意に取り掛かっているようであった。


 男は女の反応を良しとした。


「昨日よりも感度が高まってる。


 良し!


 とんでもない快感を味合わせてやる!」


 男は女に言った。


「何が欲しい?」と


 女は迷わず、真顔で即答した。


「お○ん○ん。貴方のお○ん○ん。」と


 女は、恥じらいなどするものなら、男にお預けを食わされると警戒し、恥も外聞もなく明確に答えた。


 正に飼い犬、性に飢えた雌犬であった。


「舐めたいのか?」と男が言う。


「舐めたい!」と女が答える。


「舐めろ!」と男が言う。


 女は急いで、地中から宝物を掘り探すよう、急いで、男のベルトを外し、ズボンをずらした。


 女の待望が現出した。


 黒い凶器がそそり立った。


「す、す、凄い…」と女は囁きながら、頬ずりをし、舌を絡ませ、そして、大きく口を開き、凶器を咥え込んだ。


 グシュ、グシュと卑猥な液体音がまたしても501号室内に響き渡り始めた。


 昨日と同じ、淫靡な拷問の開演であった。


 凶器を咥えながら、女は既にぐっしょりと濡れた小さな布を自ら片足首までずらしていた。


 そして、女は自分の指で陰部の小豆を擦り始めた。


 女は、女性が施される前戯は全て自分で済ませようとした。


 女は何としても、この黒光の凶器で突き刺しにされたいと願っていた。


 自分に出来る事であれば、男の手を煩わすことなく、健気に行い、決して、男のやる気を削がぬよう一生懸命に努めていた。


 女は下からずっと凶器を咥えたまま、男の合図を待っていた。


 男が女の顔を掴んだ。


 女はやっと、遂に、あの時が来たと思い、凶器から口を離した。


 女は男の目を見た。


 男の目は閉じていた。


 女は男の合図を待った。


 目の合図、声の合図


 女の五感は全て、その合図を逃さないよう集中した。


 その時であった。


 「あぁ~」


 突然、女の喘ぎ声で沈黙が引き裂かれた。


 女は予期せぬ快感に声を発してしまった。


 女が全神経を集中していた視覚、聴覚は見事に裏切られた。


 男の凶器が女の乳首を跳ね上げたのだ。


 大きく稼働する男の凶器は、男に被さり、無防備であった、女の垂れ下がった乳首を擦るように跳ね上げていた。


 男は、喘ぐ女の両脇を押さえ、女の垂れ下がった無防備な乳首を女の唾液で黒光に濡れ光る亀頭でピンピンと何度も何度も擦り続けた。


「あぁ~、いぃ~、あっ、あっ、い、い、いく、いく。」と、女は感じ捲った。


 男が咎めた。


「お前、乳首だけでも逝くのかよ!

 

 我慢しろ!


 これくらいで逝ったら、終わりにするぞ!」と


 女は「はっ」と逝き顔を改めて、唇を噛み締め、


「う、うん、が、我慢するぅ~、逝かないぃ…から、」と震える声で返事をするのであった。


 男はもう一つの垂れ下がった無防備な乳首を下から指で強く捻った。


「あぅ~」と女が喘ぐ。


 女の両脇は男の腕で押さえられ、女は仰反ることも出来ず、片乳首を亀頭で筆のように擦られ、もう片乳首は万力のように強く捻られ続けた。


「あっ、あっ、あっ、も、もう、だ、だ、だめぇ~、も、もう」と


 女が涎を垂らしながら、震える声を途切れ途切れ発し始めた。


 女の下の口からも白い液体が内太腿を流れ始めた。


 男は「良い塩梅だ!」と呟き、女にこう命令した。


「逝きたいか?逝きたいのか?


 それなら、こう言え!


 乳首で逝く!と大きく叫べ!」と


 すると、女の丸い尻はプルプルと震え出し、男に跨る女の両太腿はワナワナとガクつき出し、


「イクゥ~、イクゥ~、わ、わ、私ぃ~、ち、ち、乳首でぇ、イクゥ~」と


 女はタンチョウの如く一鳴きし、ガックリと男の胸に顔を埋めた。


 女の口からは涎が流れていた。


 女の膣からは愛液が溢れ流れていた。


 女の目からは感涙が流れていた。


 女はワナワナと震える唇を半開きにしながら、虫の息でこう囁いた。


「も、も、もっと、い、い、逝かせてぇ~、く、ください…」と

 

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