第24話 一日の終わりは終わらない

 ショタコン変態脳筋にクズがプラスされたショタコン変態脳筋クズ教師のグリア先生。


 あの後、二人っきりの時は先生のことをお姉ちゃんって呼ばなくちゃいけなくなってしまったり、疲れた時にハグさせてとか、様々な条件が追加された。自分もいつバレて社会的地位が危ないことわかってないのかな。なんなら言っちゃおうかな。


 でも、神の使いだってばれたらもっと面倒だろうし……。


 はぁ、神の使いだって言わなきゃよかった。


 俺は止まらないため息を付きながら、授業が終わり、グリア先生の元へ集まっている生徒たちの元へ重く感じる足取りのまま向かった。



「ぼっふぁぁぁぁぁ……疲れた。本当に一日? これ」


 ありえないほどの疲労感。ベットがこれほどまでに心地よく感じたのは初めてだ。


 それもこれも、早速退学なりそうになったり、変な奴に絡まれたり、変な奴に絡まれたり……したせいだ。


 赤髪から始まり、ミディアも今日は特にすごかったし、フールド? だっけ、ジャスミンの弟も変人というか、普通にやばい奴だったし最後の最後に伏兵もいたし。


 受付の時と、担任の先生って知った時と、授業の時と、ショタコン変態脳筋クズ教師の時と表情豊か、というのか定かではないがグリア先生もとりあえずやばい奴なことには間違いはない。


 はぁ、と改めてため息を付きながら備え付けの無機質な時計を見ると、時刻はすでに就寝していてもおかしくない時間。


 今日ばかりは早く寝付けるだろう。そう思って部屋の電気を消す。


 暗い部屋だけはどこかの喧騒からは離れているような気がして。なんだか、落ち着く。


 自然と吐息がゆっくりになっていくのを感じる。そして、意識を手放——。


『ゴンッゴンッゴンッ』


 部屋に鳴り響く怒号のようなノック音。せっかく寝付けそうになっていたというのに。


 重い瞼を擦りながら、容易に予想ができる訪問者を出迎える。


「……やっ!」


「…………もう寝る直前だったんだけど? 俺、今日めっちゃ疲れてるんだけど……?」


「むー! 何言ってるの!? エイドは中級魔法使えるから今日は何もしてなかったじゃん!! 私は初級魔法を打って打って打ちまくったんだよ!? だから頑張ったから疲れたの! だから寝かせて!」


 頬をぷくりと膨らませながら言うミディア。昨日のしゅんとした雰囲気もどこへ行ってしまったのか。


「疲れたんなら、自分の部屋でゆっくり寝ればよかったんじゃ……?」


「むーーーーーー!!!」


 まるで限界までドングリを頬に詰め込んだリスのよう頬を膨らませるミディア。どうやらそう言う事じゃなかったらしい。


「……はぁ、わかったよ。すぐ寝るから邪魔しないでね?」


「こっちのセリフ!」


 ふんっ、と鼻を鳴らしながら部屋に入ってゆくミディア。しかし、ちゃんと「お邪魔しまーす」と言ってるのはえらい。


 二日目にして、慣れた様子でミディアは俺の布団に潜り込む。相変わらず枕は持ってこない癖に自分はちゃっかり枕を使っている。俺があげた人形を抱きながら。


 まぁ、これに慣れていかなきゃなのかなぁ。


 なんとなくこれからを察して、諦め半分で俺も布団へと入り込む。シングルサイズのベットは六歳児二人だとどうしても開いているスペースの方が広い。


 昨日と同じようになんとなく、ミディアに背を向けて寝る。ミディアはこちらを向いて寝ているようなので、反対を向いてしまえばなんとも言えない気まずい空気の完成だ。


 背中に視線を感じるというのはなんともこそばゆい気分だが、仕方がない。これも慣れだ。


 そう意を決して、再び目を瞑る。さっきみたいな睡魔はないが、十分寝れるくらいだ。


 少しづつ、少しづつ、睡魔に堕とされていく——途中だった。


「ねぇ、エイド。寝た?」


「…………」


 寝る。寝るんだ俺は。そう決心したからには徹底的にミディアを無視だ。


「……グスッ。寝ちゃったんだ……うぅ」


「どうしたんだ」


 嗚咽を漏らすミディアに心配して振り向いた、のだが。


「……ちか」


「えへへ。何だ、寝てないじゃんっ」


 吐息を感じられるほどに近いミディアの顔。その顔には天使のような笑みを余すことなく存分に浮かべていた。



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