第16話 授業②
先生が言った内容を大まかにまとめると、初級魔術師から中級魔術師に上がるためには一年後の試験までに中級魔法を扱えるようにならなければならないという事。そして、中級魔術師になってからは一年に一度昇級試験があるが、基本的に中級魔術師から高級魔術師に上がるまでは大体3~5年かかるらしい、ということ。
また、高級魔術師を卒業するのにも様々な実績などを残すことが必須らしい。まぁ、高級魔術師の話は今の俺達には関係ないだろうけど。
そして、それを話し終えると、ちょうど授業終了のチャイムが鳴り、つかの間の休憩時間となった。
周りを見てみると、わいわい騒いだりするわけでもなく、ほぼ全員が渡された分厚い本を読んでいた。ミディアもさすがにここで騒ぐわけにはいかないと察したのか、周りの人たちと同じようにミディアも試しに開いてみていた。だが、すぐに口と頭を押さえて机に突っ伏していた。きっと吐き気と頭痛と戦ってるんだな。うん、頑張ったミディア。えらいぞ。
俺もなんとなく開いてみたが、まったく理解はできなかった。というか、理解するのがめんどくさすぎる。一応、使えるはずなんだけれど。
すこしすると、どこかへ行っていた先生も戻ってきた。手には俺たちと同じような分厚い教科書を持っており、それから察するにおそらくもう授業が始まるのだろう。
「はーい、みんなよくわからないはずの教科書と睨めっこしててえらいえらい! だけど、今から本格的にいやになるようなこといっぱい詰めさせられるから覚悟しててねー」
「…………」
静まり返る教室。先ほどの元気はどこかへ飛んでいるのは先生の突然のSっけあふれる言葉になのか、休み時間に見た教科書の影響だろうか。俺はどっちもだ。
「まぁ、最初はそんなものよねー! まぁ、さっそくだけど授業を始めていきます! いいですかー?」
「「「「「は、はーい」」」」」
どこか元気のない返事になってしまうのも仕方のないことだろう。
※
「——ということで、魔法は天から授かるもので、君たちも六歳の誕生日を迎えた時にそれを感じたと思います。そして、魔法には誰しもが使える初級魔法、訓練と理論理解で使えるようになる中級、高級魔術。そして、魔法を極めようとする中で才のある者だけが使える王級魔法。そして、神に選ばれし者だけが使える神級魔法。まぁ、上の魔法が使えれば使えるほど魔法への理解が高まり、魔法適正が上がる、という事なので、必然的に魔法の威力や効果が上がるのです。そして先ほど話した王級、神級魔法は初級、中級、高級とは一線を画します。難易度はもちろん、威力、効果、どれを取っても最高峰なのです。と、まぁ、かなり遠い先の未来の話をしてしまいましたが、この教室に一人でも多くの優秀な魔法使いが出ることを先生は願っています!」
と、最後だけおまけにトレードマークのつもりなのか、すでに怪しい元気を付け加えるグリア先生。
「では、魔法についての簡単な説明をしていきましょうか。まず、先ほど言ったように、初級、中級、高級魔法には難易度の差異があり、もちろんその魔法によっても効果が違います。攻撃に富んだものもあれば、移動に富んだ物など、様々な種類があります。そして、それらの魔法の威力は魔力の込め具合によって変わるのです。まぁ、簡単に言えば、魔力を変換して使えるようにするのが魔法で、魔法はその込めた魔力量で威力が変わるのです。難しいかもしれませんが、理解はできましたか皆さん?」
「…………は、はーい?」
「うん。大丈夫そうですね! まぁ、いざとなったらバーンって打ったらどうにかなるので! 落ち込みすぎず頑張りましょう!」
と、何の元気も出ない励ましを送られたところで授業のチャイムが再び鳴った。果たして本当に大丈夫なのだろうか。ミディアが。
※
「…………エイド、ジャスミン……私、もうダメみたい。中級魔術師にはなれないみたい」
「諦めたらだめですわよ……そう、諦めたら……」
ジャスミンもついでにダメみたいだ。二人お揃いで机に突っ伏している。
「ま、まぁ、あと一年あるんだし、大丈夫だよきっと。な? ミディア、ジャスミンさん?」
「「…………うん」」
相変わらず元気は底をついているようだが、それをさらに地へ落とす声が聞こえる。
「はーい、じゃあさっきの続きやっていくよー!」
始まりのチャイムと共に俺たちは重い腰を上げ挨拶をするのだった。
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