第40話 俺君、伊豆の海でのエロい展開で海底に沈められる

「伊豆に向かってゴーと電車で行って。そのあとはきっとバスがあるわ。うん、きっとある♪」


いや、予め調べろ! ほんとに大丈夫か?


「じゃあ、横浜駅のホームで集合ね。一番先頭の第一車両で待ち合わせね♪」


ずさんなちびはる先生の計画だけど、あとで秋月がフォローするだろう。


そんな訳で宿までの行き来の件は秋月がなんとかすると踏んで俺はちびはるちゃんから聞いた宿の情報から周辺の観光スポットの調査に余念がなかった。


当然、陽葵とデートする気だ。それ位の時間は多分あるはず。


☆☆☆


「まあ、そんな訳で宿までのバスがあることはわかったし、最寄りの駅は川奈駅だ」


「助かるよ秋月、あと周辺の観光スポット調べたからサイトのリンク送るな」


「サンキュ、助かるよ。旅のシオリを作るのに役立つ」


シオリまで作るのか?


この男はどこまでマメなんだ?


「それより、磯風?」


「どうしたんだ? 秋月?」


「ちびはるちゃんが新しい水着買ったんだ。それに冬月も」


「ちびはるちゃんはともかく、冬月の水着になんで興味あるんだ?」


「お前? 変なやつだな? 恋愛感情は置いておいて、冬月の水着をエロい目で見ることはできるだろ? 妹とか姉の水着で興奮することってない訳じゃない」


「まあ、俺も陽葵以外の女の子の水着に興味がないわけじゃないけど……」


まあ、男とは基本そんな生き物だけど……。


「アリーさんも新しい水着を買ったという情報を得た」


「いや、アリーさんも冬月も学校の体育の時間で何度も水着姿見てるだろ? 今更なんで?」


「磯風? お前? わかってないのか? スクール水着は女子が選択の余地がなく仕方なく着てるだけなんだぞ? だが、プライベートの水着は自分の意思で……それもあんなに布面積が小さいやつを自分の意思で着てるだぞ? これは興奮モノだろ?」


「いや、俺はむしろスクール水着の方が凄いと思う。女の子が選択の余地がなく、半強制的に無理やりだぞ? その方がそそるだろ?」


「お前……すげぇな。レベル高くてその発想はなかった」


ふっ、長いグラビアアイドル写真収集家の悟りの境地を理解できたか。


最強の水着はスクール水着だと……。


そこ引かない!


俺は秋月と冬月さんと陽葵の入部届を処理して、合宿の準備を整えた。


秋月も冬月さんも所属してるクラブあるけど、二つまでは掛け持ちで入れる校則でよかった。


まあ、俺達文芸部みたいな弱小クラブへの救済措置だろう。


幽霊部員を認めてくれないと三分の一位のクラブが消滅する。


俺の文芸部は幽霊部員すらいなかったけど……。


☆☆☆


翌日の合宿初日は快晴に恵まれた。濃く鮮やかな青い空と強い日差しの下では全てのものがくっきりと明るく輝いていた。そう、特に水着姿の女の子は。


俺達文芸部一行は無事電車とバスを乗り継いで伊豆の川奈駅のペンション近くのビーチにいた。


「秋月……サンキュ……最初はちびはるちゃんのおかげで面倒な合宿なんてと思ってたけど、これ最高だな?」


「うん? 磯風何言ってんだ? みんなでどこかに行くって、楽しいに決まってるだろ?」


いや、このリア充はわかっていない。


「あのな。今回のメンバーでな……俺の知らない人が一人もいないんだぞ。これ、凄いことだぞ。過去にこんなこと一度もなかったぞ! 俺、全然ビクビクしてないし、何処で一人で時間潰そうとか、全然考えなくていいんだぞ?」


「……えッ? あぁ……まあ、喜んでもらえると嬉しいよ」


何故か秋月の表情に憐れみを感じたのは気のせいだよな?


「それに……秋月の言う通りだった。俺は反省するよ__」


「何を?」


「いや、スク水最強と思ってたけど、やっぱり違うわ」


「んん? 何でだ? 俺も確かにスク水最強かなと思い始めてきたぞ?」


「よく考えろよ? このメンバーの女子、全員文芸部のメンバーだぞ? 同じ部活動してる女の子が全員水着なんだぞ? こんな経験……俺は最初で最後だと思う」


「確かに……普段身近にいる女の子があんな露出の多い水着を普通に着てるとか……海とかプールという免罪符を手に入れた女子はあれほど露出したがるとはな……」


「ああ、普段露出がほとんどないスク水でもちょっと見ただけで恥ずかしいとか言っておきながら、下着同然のかっこを自ら進んで平気でしてんだもんな」


「ヘソ平気で出してるとか、ある意味異次元に来たような錯覚を覚える」


俺と秋月が女子の水着に興奮して友情を深めているが、決して女子の胸やお尻のあたりを凝視することに夢中になっていた訳じゃない。


レジャーシートを広げ、テントを貼って、パラソルを砂にさす。男の子の仕事をこなしている最中だ。


「何よりジロジロ見たり、ガン見しても問題がない……むしろ見られて喜んでくれるとこ」


「いや、磯風……あんまガン見するとキモいとか言われるぞ」


はっ!


そうだったのか? 俺、夏の海に行くと凄いガン見したことしかなかったけど、睨まれたのって、そのせい?


「夏の海の女の子の水着は見ないと失礼にあたるって法律なかったッけ?」


「あるか! そんなもん! ほどほどにしないと、むしろお巡りさんの案件だ」


そうだったの?


俺、ヤバいヤツと思われてたの?


「磯風ッ!」


「磯風君?」


「お兄ちゃん!」


そう言って俺のそばに集まって来たのは陽葵、アリーさんそして冬月さんだ。


「「「海で遊ぼぉ!!」」」


三人揃って元気よく俺のことを遊びに誘ってくれる。


こ、こんな幸せな現実初めて……水着の女の子三人に囲まれて海で遊ぶなんて……。


「さあ、磯風君! 早くしないと置いてくよ!」


冬月さんが海で遊ぶだろうアイテムNo.1のビーチバレーのボールを片手に俺の手を引いて海に連れて行ってくれる。


秋月はと言うとなんかシャチのフロートを膨らませてる。傍にはワンピースの水着のちびはるちゃんがいる。


ボール遊び、水のかけっこ。


俺は今日という日を決して忘れない。俺は水着の女の子達と海で遊んだという既成事実を作った。俺は勝ち組の陰キャなのだ。例えこれから長い孤独な日々が待っていたとしても、俺は余裕で生きることができる……そう……この経験は俺の一生の宝物。


空を見上げるとどこまでも青い空が続いてた。


「わっ! ちょっとぉ!」


気がつくと俺は冬月さんにスイカ割用のスイカをぶつけられて海に沈んでいった。


『俺、生きててよかった!』


死にそうになりながらそう思った。

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