第38話 俺君、合宿に危険を感じて秋月に相談するが、温泉に沈められる

俺はちびはるちゃんに合宿で天津風さん、つまりアリーさんに告って撃沈して心を病んで不登校になるリスクより、保護者のちびはるちゃんがいるとはいえ、女の子が男の子が俺一人に対して二人っきりになるシチュが多数考えれる合宿に無理がある点を指摘した。


「だから、先生が俺の気持ちを心配してくれるのはありがたいのですが……」


まあ、大きなお世話なんだけどね。


「俺と天津風さんが二人っきりになるシチュが多い合宿って問題ですよね?」


「あ! そういえば、磯野君が勘違いして天津風さんを突然押し倒して間違いを起こす可能性がぁ!」


陰キャに対する偏見酷すぎない? いくらなんでもそんなヤツおるかぁ!


陰キャはヘタレでむしろ安全だ。そんな度胸があったら陰キャなんてしてないだろ!


「先生、俺はそんなことしません。彼女いるし、それにいなくてもそんな度胸ありません。せいぜいドキドキする位です」


「う、嘘……磯野君に彼女がいるなんて……磯野君、もしかして二次元の話?」


失礼だな……。


「ちゃんとした3次元の人間です!」


「三次元の妄想の産物なのね。ごめんね。先生、磯野君の病気がそこまで悪化してるなんて思ってなくてね……知っていたらいい病院紹介してあげたのに……。」


どんな病院なんだ? 何科?


「俺は妄想癖の病気は持ってません!」


「じゃ、相手は誰なの?」


しまった。ついムカついて言ってしまったけど、俺の彼女は義理の妹で同棲してるなんて言えない。最悪秋月に頼めば大丈夫だけど、この場に秋月いないから、すぐに職員室で案件にされる可能性がある。


「……い、いや、それは」


「ごめんね。磯野君を追い詰めたりする気はなかったの。大丈夫、先生……ちゃんとわかってるから、明日から不登校は勘弁してね」


ああ! もう!


「そんなことより、この合宿が世間体に問題あることはわかりましたよね?」


「うん、先生も自体の深刻さはわかったわ。このままだと磯野君が性犯罪者になるし、何より私がきっと懲戒免職とか巻き込まれて大変だね」


先生、もうちょい、自分のことより生徒のこと考えようよ。


何より俺がアリーさんを襲うに決まってるという決めつけが酷い。


「秋月に相談してみます。臨時で部員になってもらって何人か部員を増やせば解決します。それでいいですか?」


「そ、そうね、秋月君なら安心ね♪」


心なしか声の語尾が上がる先生。これは思わぬことから秋月と一泊の旅行ができると喜んでるな。これはちょっと釘をさしておこう、ついでに仕返しだ。


「秋月とする時はちゃんとゴムしてくださいよ。俺も友人として応援はしてますけど、そこまで行くと秋月の将来がまずいですから……それと、俺、磯野じゃなくて磯風です!」


「ひ、ひぃやあああああ! い、磯風君?」


「心配しないでください。秋月は親友です。当然ちびはる先生の味方です」


「じゃあ、身体の提供しなくていいの?」


「変な小説の読みすぎです!」


ほんと、この先生時々部室から本借りて行くけど、変なのが多いんだよな。


『クッ殺せと言った姫騎士はオーク達に蹂躙される』


『リョウジュク学園の女教師』


『女教師を徹底的に調教して○○○まで開発』


貸出記録を前見て、なんか凄く変な傾向にあるなとは思ったけど、この先生ヤバいな。


☆☆☆


そんな訳で俺はちびはるちゃんを連れて秋月の元へ行った。


秋月はバスケ部の部員だ。あんま練習してないけどレギュラーだ。


神様って絶対いないよな?


「わかった。友達の磯風とちびはるちゃんの頼みだ。俺も文芸部の合宿に参加する。それと冬月も呼んでいいか?」


「俺はもちろん冬月さんなら歓迎だ。しっかりしてるし、アリーさんの監視役には適任だな」


「……磯風。お前、多分冬月のこと誤解してるぞ。俺のこと恨むなよな?」


「は?」


「いっくんと冬月さんが一緒なら心強いな♡」


「「先生、ここ学校の中!」」


俺と秋月の声がハモる。この先生大丈夫か? バレたら懲戒免職だぞ?


先生のおかげで秋月の冬月さんに関する謎の発言のことをすっかり忘れてしまったことを後日後悔するのだが、それは後日の話。


☆☆☆


そんな訳で放課後の部室で初めて大人数の臨時部会が開催された。


俺がアリーさんのLi○eのアドレス知っていたことにちびはるちゃんが驚くが、秋月と二人の関係の方がよっぽどびっくり仰天な案件だと思う、一般的には。


メンバーは俺と秋月の男子二名、アリーさんと冬月さんと陽葵の三名、それに部の顧問のちびはるちゃんだ。


陽葵は何も言ってないけど、何故かいる。いつもランダムに文芸部に出現してるから気にしないけど。


「そんな訳で週末は合宿な! 恨むのはちびはるちゃんを頼む!」


「ふふふっ、これは凄いチャンス?」


「へへへッ! お兄ちゃんとの距離を更に縮めるチャンス!」


「えへへへへッ! 磯風君の赤ちゃん作るチャンスだー!」


「はい?」


なんか冬月さんが最後に変なこと言ったような気がしたけど、きっと幻聴だ。


☆☆☆


そんな訳で、俺は合宿先のお風呂に浸かってる訳だが……。


「磯風ぇ! 背中流しにきたわよー! 安心して何も着てないぞ♡」


「お兄ちゃん、アリーちゃんには気をつけてね♪ 赤ちゃん狙ってるからね。あはッ、陽葵もなんだけどねぇ♪」


「磯風君、赤ちゃんはこの冬月さんのモノだからね、もちろん生まれたままの姿だから安心してねぇ♪」


ブクブクブクブク


俺は温泉に沈んで行くのだった。

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