第33話 秋月君と冬月さんはわちゃわちゃする
結局昨日はアプリを3回ほどタッチして頓挫した。
どうもあのアプリは彼氏には厳しい肉体労働が、彼女には凄いエッチな要求が命令されるというモノだった。男がヒーヒー言うのは彼女のエッチなとこ見たくて頑張り過ぎてヒーヒー言うこと__以上Hpedia情報。
ちなみにあの後、俺は腕立て500回に水2L一気飲み__そして陽葵はパンツを下ろしてM字開脚という、まさしくヘルモード。いや、エロモードの間違いじゃないかという目にあった。
もちろん絶対服従させて見てしまった最低な兄がここにいる。
だけど次の陽葵への命令が。
『バキュームフェラ♡』
と、ちょっと行き過ぎていたから止めた。
いや、陽葵自身は何故か俺の下半身を凝視して。
「ひ、陽葵、頑張るねぇ♪」
「頑張らんで、えー!」
思わず拒否った。エロいのは好きだけど、そこまで行くとちょっとな。俺がそんなことする陽葵を見たくない。陽葵の方はやる気満々だったけど__。
☆☆☆
そんな訳でカラオケルームにいるのである。
「日吉先輩、私テニス部で試合してるとこ見たことあって、凄いカッコよかったです!」
「そ、そう? 照れるな。私ってテニス位しか取り柄がなくて__陽葵ちゃんみたいに可愛い子から言われると照れるな」
「そんなことないです。日吉先輩カッコいいだけじゃなくて綺麗だから、きっとファンがいっぱいですよ!」
いや、日吉さんは男子より女子のファンが多いんだよな。
ボーイッシュなショートカットの日吉さんは陽葵の言う通り綺麗だけど、その男前ぶりから女子の人気が凄くって__なんで女の子って同性でも憧れるって言うか、半分異性みたいな感覚で見るんだろ? 男も憧れの先輩とかいるけどなんかそれは異性とは全然違う。
「陽葵ちゃんて優しいんだね。あれ、日吉さんの隣をキープしてるのね」
「冬月さん。それ、冬月さんの役割じゃなかった?」
そうなのである。たいていそういう気の効いた役割をいつも果たして来た冬月さんは何故か俺の隣にいるのである。川崎はまだ来てない。だからそれまで日吉さんの隣の席をキープする必要がある。
今回のカラオケは件の日吉さんとカラオケの達人川崎君をくっつける恋のキューピット作戦なのだ。
「まあ、私は磯風君をクラスの女子から守る役割だから♪」
へ? どういうこと?
「いや、完全に役割忘れて我先に磯風の隣に座ったろ、お前?」
ちょっと怒った声で秋月が冬月さんに毒を吐く。
「磯風、冬月には気をつけろ。こいつ__エロいぞ__」
「秋月、それ以上言うと子供の頃に私にキスしたこととか『お嫁さんにする』とか恥ずいこと言ったのバラすぞ?」
「お前だってダメージ受けんか?」
は? この二人ってどういう関係なんだ?
カップルにしか見えないけど、秋月の彼女は担任のちびはるちゃんだ。二股してないって言ってたけど、逆にそうでないと、この二人ってどう言う関係?
「ねえ、前から不思議だったんだけど、秋月と冬月さんってどうみてもお似合いのカップルなのに付き合ってないって言うし、そのくせいつも一緒にいるし、どういう関係?」
「私と秋月はね__幼馴染ってヤツなの」
「まあ、腐れ縁だ」
「それなのに付き合わないの?」
秋月と冬月さんは顔を見合わせると。
「まあ、中学の時に付き合った時期もあったけど」
「__ほんとしっくり来なくてね」
「俺達、もう家族なんだ。家族みたいにいつも一緒だったから、恋愛感情が起きないんだ」
「そう、なんかできの悪い息子みたいに思える」
そこは兄じゃないのか?
「俺たち隣同士でな、親同士も友達で__ずっと一緒に育って」
「気がついたら、秋月のお母さんみたいになってた」
「違うだろ? お前はできの悪い娘だ!」
幼馴染ってそんなモノなのか?
「まあ、全員がそうじゃないと思うけど、中学生の時に付き合おうとして、お互い違うと気がついたんだ。俺たちの場合はそう」
「でも、いつか一緒にいられなくなる日が来るなってことは__わかってるんだ」
寂しげに遠い目をして言う冬月さん。
「なんで? なんで幼馴染同士がいつか一緒にいられなくなるんだ? ずっと一緒でいいじゃん!」
「磯風は自分の彼女に幼馴染の男がいて、しょっ中会っていたらどう思う?」
「__そ、それは」
俺は二人の関係性がわかった。二人はいつか結婚する。お互い違う人と__そしてそうなると滅多に会えない。もしかしたら二度と会わないとか考えてるのかも。
「お、俺は結婚しても彼女に幼馴染がいてもいいと思う!」
俺は冬月さんを励ましたくてそう言った。
「ほ、ほんと? 磯風君はいいの?」
そう言って、俺の手に腕を絡めてくる。
冬月さんからこんなボディタッチ受けるの初めてでびっくりする。
「こら、冬月、磯風が真っ赤になってるだろ?」
「あ! ごめん。ボッチにあんまり気軽に手なんか組んだらダメね、刺激強過ぎね♪」
「いや、お前、どさくさに紛れて触ったろ?」
「ケチー。これ位の役得頂戴よー」
「お前なー」
秋月と冬月さん。カップルにしか見えん。お互い知り過ぎて恋人同士になれないのか?
そんなことを言っている内に川崎君と長門がやって来た。
今回、秋月が長門も呼んだ。陽葵のお願いで__。
俺が一声歌って、何故か爆笑が起きるという謎現象が起きてその後、川崎君の美声が__。
__俺、可哀想。
でも、何故か可哀想な筈の俺にクラスの女子が群がって来た。
冬月さんはジュースのおかわりに行ったんだろう。決しておしっことかは思わない。
「ねえ、ねえ、磯風君♪」
「ねえ、一緒にデュエット歌おうよぉ♪」
「ああ、あずさズルい! 私の方が先よ」
「あのね。駅前に新しい美味しいケーキの店できたの。今度一緒にね♪」
な、何事?
「おい、磯風__」
秋月が女子をかき分けて俺のとこにたどり着いた。
そして真剣な顔でこう言った。
「__陽葵ちゃんが長門と二人で__消えた」
俺は目の前が真っ暗になったような気がした。
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