第32話 妹ちゃん、カラオケでノリノリで俺君のこと_どうしたー?

「ひぃ、ひゃあ!」


アリーさんが元々真っ赤だった顔を更に赤くして悲鳴をあげる。


まあ、この状況を見られたら、女の子は自殺もんの恥さかもしれん。


「わ、私、用事思い出しちゃったぁ! か、帰るねぇ!」


そう言ってバタバタと帰っていった。ブラを残して__。


「アリーさん。よっぽど恥ずかしかったんだね♪」


俺は完全におかしかった。仁王立ちの陽葵を前に平気でいる神経とかヤバい。


「お兄ちゃん? 何をあのクソ女と乳クリあってるのかなぁ〜!!」


「ひぃやぁあああああああ!」


思わず悲鳴が出た。だって、陽葵が釘バット出してきたから。


あれで殴られんの? 俺?


しかし、流石に陽葵は俺を殴らなかった。


「わ、私は二番目の彼女__でもでも__お兄ちゃんなんて__だーい嫌いぃ!」


そう言って部屋にこもってしまった。


☆☆☆


昨日陽葵はしばらく閉じこもっていたが、出てきて夕食を作ってくれた。


陽葵の当番だけど、俺、めっちゃ怖かった。


1.「アリーちゃんの胸揉んで、エロいこと言って、ほんとうにダメなお兄ちゃんね! 鼻の下伸びまくりなとこ、殺意が湧いたよ!」


2.「どうせ私は二番目の彼女だから__でもすごく腹がたったからねぇ!」


3.「私が帰って来なかったら今頃赤ちゃん出来てたかもねぇ! ダメなお兄ちゃんは感謝しなさい!」


散々罵倒された。酔いが覚めて我にかえった俺は自分のしたことにフルフルと震えた。


でも。


陽葵はアリーさんに嫉妬している?


まるで俺の一番の彼女みたいに話している?


俺は少し嬉しかった。


「ぎゃぁあああああああああ!!」


密かに陽葵の嫉妬を喜んでる時、口にした陽葵の料理に尋常じゃない量の唐辛子が入っていた。


「お兄ちゃん。それ全部食べるのよ? 食べるわよね?」


「は、はい__陽葵の料理はなんでも美味しいから__ぜ、全部食べさせて頂きます」


俺の口と肛門はヒリヒリしておかしくなった。


味覚がなくなったのは言うまでもない。


こうしてなんとか陽葵に許して? もらった俺は、今クラスで秋月と冬月さんからカラオケに誘われている。


磯風いそかぜ絶対にカラオケ来いよ !」


「頑張ってね! 引き立て役は必要だから、心が砕けたら、私が膝枕で慰めてあげるからね♡」


「なんで心が砕け散ることが前提なんだよ!」


俺は秋月あきづき初月はつづき さんにカラオケに誘われた。


「だからその自信は何なの? 逆にあの音痴を自覚してないとこ怖いけど?」


「お、俺って音痴なのか? そうなのか?」


ぽん


秋月がそっと肩に手を置く。なんか慰められてるような感じで__。


「人間、カラオケで価値が決まる訳じゃない__」


「慰めるフリして塩塗り込むな!」


「だから、磯風君が引き立て役になって川崎君が目立つっていう手筈だから」


俺? なんでいつも引き立て役に抜擢されてんの? それも手加減なしの実力で?


「まあ、今回陽葵ちゃんも来てくれるそうだし」


「よろしくお願いしまーす!」


何故か陽葵がクラスに来てる。


「嘘! あれが磯風の妹? 遺伝子って残酷だな!」


「いや、あれはどっちが突然変異なんだ?」


クラスメイトは俺の心に棘をこれでもかと突き刺して来る。


陽葵が秋月の耳に近づいてコソコソ話す。俺には聞こえてしまった。


「(私、長門先輩にお近づきになりたくて__その__)」


「(任せてくれ、そういうの上手くいくよう手伝うの好きなんだ)」


や、止めてくれ。俺は大声で言いたかったが、言葉を飲み込んだ。


俺にそんな資格はない。昨日だって__陽葵を裏切った。お酒を呑んでてもダメだ。


☆☆☆


家に帰ると陽葵は機嫌が良さそうだった。


カラオケパーティに期待してるのかと思うと気持ちが下がる。


だが、陽葵は突然言い出した。


「ねえ、お兄ちゃん。昨日アリーちゃんと変なことしてたよね? これは罰を受けないとダメだよね?」


「ば、罰? 罰なら昨日すげ〜辛い料理食べたじゃん?」


「あれ? あれはちょっとした間違いで別に罰じゃないもん」


嘘だろ? あれより酷い罰あるの?


「じゃあ、夕飯前にやっとこうね」


「は、はい。わかりました」


俺は観念した。どんな罰が待ってるんだ?


「じゃあ、このアプリやるよ」


「何それ?」


「カップル用の罰ゲーム♪」


「はっ?」


ゲームは王さまゲームみたいなヤツだった。


ただ普通の王さまゲームと違って二人きりで、ただアプリの言われるがままにしなきゃいけないらしい。


「じゃあ。まず、名前と年齢入れるよ」


「いいけど、これの何処が罰ゲームなの?」


「それはね。このアプリは男の人がヒーヒー言うゲームだからよ! しかもよ、しかもこのアプリ、イージーモードからハードモードまであるけど__」


「イージーモードからがいいかな?」


「一番辛いヘルモードにしたからね♪」


いや、俺、どんなけ辛い目に合うの?


「じゃあ、まず宣誓!」


「何それ?」


「これはね。どんなに厳しい命令が出ても絶対服従を誓うの♪ さあ、誓って!」


「わ、わかったよ。俺、絶対服従を誓います」


「ふふふっ、全くお兄ちゃんはダメなんだから、たっぷりお仕置きだよ、私も一応宣誓、絶対服従を誓います。お兄ちゃんを蹴り上げるとかへーきです!」


ク、クソー。この罰厳しそう。


「じゃ、まず最初ね」


『彼氏君、腹筋100回』


「ひ、ひぃーーー」


「ふふっ、絶対服従だからね!」


俺は腹筋100回をこなしたけど、俺大丈夫?


「じゃ、次ね♪」


楽しげにアプリをタップする陽葵。だが、陽葵は何故かプルプルと震えてる。


陽葵のスマホを覗きこむとアプリには__。


『彼女ちゃん。パンツを下ろしてスカートをたくしあげる』


「絶対服従な♪」


俺は情け容赦なく言った。


「ひぃやあああああああああああ!」


陽葵はまた自爆した。

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