第25話 俺君、妹ちゃんを前にオタオタする
俺はセットされた頭と服をどうするか困っていた。
「__ネットカフェで何とかするしかないか」
駅前に向かう。だが、俺は絶対会ってはいけない人物と出会してしまった。
「お兄ちゃん♪」
「__ひぃえええええええ!!」
わあー! 鳥肌が立つ位ビックリした。
「ひ、陽葵、ね、違うの? これ、ほんとに違うの!」
「__何を浮気した悪い男みたいな言い訳してるの?」
「い、いやね」
「秋月先輩と一緒に買い物と__髪切って来たのね」
「う、うん」
俺は浮気した悪い男という言葉に凹んだ。
あながち間違いじゃない。
脅されたとはいえ、陽葵に嘘をついてアリーさんとデートした。
「ねえ、今日は外で外食しよ♪ お兄ちゃんの奢りでね♪」
「あ、ああ、もちろんだよ」
俺は陽葵への贖罪だと言わんばかりに簡単に奢りを承諾してしまった。
普段ならここでイヤイヤといつものお約束のやりとりがあるけど__マズイ__自分から罪を告白したようなものだ。
「もう予約してあるの」
「へ?」
俺は手際のよさに驚く。陽葵らしくない。妹は俺にべったり甘えてそんなことしない。
「駅前にちょっと小洒落たアジアンレストランがあるの♪」
「あ! 少し前にできたとこだよね?」
「うん、お兄ちゃん遅かったから、今日は外食かな〜朝帰りかな〜て思ってね♪」
「ゴホンゴホンッ!」
俺は冷や汗がダラダラと出た。
「別にいいんだよ。私は二番目の彼女なんだから」
「ち、違うんだ。俺は、俺は」
「男が言い訳しない。それに私は二番なんだから」
だからそれが違う__でも後ろめたいことには変わりがなく。
そして陽葵はどうもアリーさんとのデートのこと察しているみたいだ。
俺は変な汗が更に増量された。浮気男の心理ってこんななのかな?
知りたくないけど。
「お兄ちゃん、行こ。罪滅ぼし__してもらうよ」
そう言って、俺の手を引いて行く。
これはあれだ__全部バレてる。
「へへへへへへへっ」
陽葵は俺に腕を絡ませて来る。いつものことだけど今日はいつもより距離が近いような気がする。
街中を歩くと、何故かやはり周りの人から見られているような気がする。
特に女の子から?
普段から視線は感じていた。陽葵という可愛い女の子の隣にいると必ず浴びてしまう視線。
だけど、普段は一瞥されただけで終わるのに、今日は長い間見られているような気がする。
「__うふ__。うふふふふふふふ__。」
「陽葵?」
陽葵が何故かアリーさんみたいな謎の笑い声を上げる。
「か、快感!」
なんだ? 薬師丸ひろ子? 俺、古ッ。
そんな時。
「い、磯風君?」
突然声をかけられた。それは同級生の葉山さんだった。アリーさんの友達で、以前海で三浦君と仲良くなるキッカケを作ったら、その後上手くいって付き合いだした子だ。
「葉山さん? 偶然だね」
俺は妹と二人でいるところを見られて心臓がバクバクとした。
いや、陽葵が妹なことは海の時に俺の口から紹介してたからいいけど__。
今の陽葵はすごい俺にくっついていて、もう胸が思いっきり当たってるんだけど。
こんなの兄妹の関係だとかえって話題になりかねない案件だ。
「ビックリした。もしかして磯風君かなって思ったけど、気の迷いかと思った」
「へ?」
意味がわからん。
「磯風君の妹さんがブラコンだって有名だけど、納得したわ。これはブラコンになるわ。これは新聞委員としては放置できないわね。だから写真撮らせて♡」
「は?」
「撮らせてくれないと、磯風君が妹さんとぴっとりくっついて、もう胸当たってて、鼻の下伸ばしまくってたとグループLi○eにたれ込もうかな♡」
「わ、わかった。わかったから、陽葵とのことはそっとしておいて」
葉山さんに写真を撮られた。何故かキザなポーズを要求されて恥ずい。
陽葵も何故かバシャバシャと撮りまくっている。
「じゃね、妹さん、大切にするのよ。変なことしちゃだめだからね♡」
そう言って葉山さんは嵐のように去って行った。
「一体、何だったんだ?」
「お兄ちゃん、無自覚なの?」
「何が?」
「教えない♪」
陽葵が訳の分からんことを言う。今日はとても変な日だ。
葉山さんと別れて目当てのアジアンレストランに到着。
ウエイトレスさんに促されて席に座る。
眺めのいい窓際に案内してくれた。カップルと思われたのかも。
当然、陽葵を奥のソファーの方に勧める。
「何食べる? 陽葵?」
「う〜ん。悩む〜。これとこれ、どっちも食べたいよー」
「なら、俺がどっちか頼むから二人で分けよう」
「ほんと? ありがとうお兄ちゃん♪」
そうして俺は二人分の食事を二人でシェアして食べた。
陽葵は満足そうに食べる。
なんかあれだよな。女の子が食べてるとこって可愛いよな。
二人での外食は久しぶりだな。デートは何度かしたけど、仕送り頼みの高校生にはそんなに自由になるお金はない。進学高だからバイトしながら成績維持するほど頭良くないし。
俺は美味しそうにご飯を頬張る陽葵を見て、幸せを感じていた。
そんな感じで会話も弾んで、食事も終わりかな、と思った時。
「お兄ちゃん。私もデートしたいな〜。品川の水族館で__天津風先輩みたいに__♪」
陽葵はとびっきり意地悪な顔をしていた。
「ひぃやあああああああああああ!」
俺は陽葵の言葉に思わず悲鳴をあげてしまった。
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