第24話 天使様と妹ちゃん俺君に悶絶する

陽葵ひまり Side


「美容室?」


なんで? と思っていたが、天津風先輩と一緒に出て来たお兄ちゃんは。


『かっ! こいぃぃぃぃぃぃいいい〜〜〜〜ッ!』


そして私とも何度も行ったことがあるファションモールで服を着替えたお兄ちゃん。


その姿は。


『ひぃやあああああああああああ!


__か。__かあっっっこいいいいい〜〜〜ッ!!』


思わず声が出そうなのを堪える。


そして二人が品川でデートを始めると、あちこちから女の子の視線を集めるお兄ちゃん。


そして、あの金髪のクソ女、天津風は。


「__へへ。__うふふふふふふふッ!」


気持ち悪い笑みを浮かべる。


「あのクソ女ぁー」


私は思わず叫んでいた。


☆☆☆


冬月さんふゆつきさんSide


全く世話の焼ける磯風君__。私の気持ちも知らずにあっちこっちの女の子たらし込んで。


天使様が磯風君を美容室に連れ込んだ時は“はっ?” と思っていたが、出て来た磯風君は。


『__か。かっこいいいいいいいいぃぃぃぃいッ!?』


何なのあの磯風君?


磯風君のくせに__。


あんなにカッコよくなったら私から遠くに行っちゃう。


思わず切なくなる。


そして天使様と磯風君が品川でデートしてると__これがまあ目立つこと、目立つこと。


金髪の美少女天津風さんと磯風君は__その__めちゃめちゃ目立っていた。


もちろんいい意味で。


男子は天使様に、女子は磯風君に__。


カップルだと知れると羨望の的になっていた。


そしてなんとあの金髪の天使様が。


「__へへ。__うふふふふふふふッ!」


謎の笑みを発症する。これはあれね。


「天使様ってチョ、ぷぷっ」


「人のこと言えんだろ?」


「秋月いたの?」


「酷いな。最初から最後までいたぞ」


まあ、そうなんだけどね。


☆☆☆


朝陽 (お兄ちゃん)あさひ Side


『磯風カッコいいぞ』


さっきからアリーさんのデレがカッコいいばかりで語彙力が落ちた?


俺も陽葵と何度もデートしてたから最低限のマナーは勉強した。


道の車道側は男性が立つ。段差があれば手をとって注意を促す。歩くペースはアリーさんに合わせる。登りのエスカレータではアリーさんの下側に立つ(短い制服のスカートから下着が見えないように)。


陽葵のために一生懸命勉強した。少しづつ覚えて陽葵の笑顔が増えることで勉強の成果は確認済みだ。


水族館を出る時。


『好き♡』


突然ストレートなデレが耳元に来て、ちょっとビックリした。


☆☆☆


水族館を出て、近くの公園で写真をたくさん撮られた。


いや、アリーさんの方を撮るべきだと思うが、陽葵に見つかるとヤダから目の前の天使をスマホのデータに加えるという欲求は我慢した。


更にツーショットの写真を撮られる。これも脅しの材料にされるんだよな、気が重い。


そしてアリーさんを家まで送り届けると、ようやく解放された。


ほっとした。今日は誘惑されなかった。


でも、服も着替えなきゃダメだし、セットした頭を直さないとまずいことに気がついて途方に暮れた。


☆☆☆


アリーさん(天使様)Side


『磯風カッコいいぞ』


語彙力ないと思われそうだけど、それしか言葉が出ない。


何、この包容力? 男の子に無理やりデートに誘われたことあったけど全然違う。


車道側を歩いてくれる。歩くスピードを合わせてくれる。疲れてくるとさり気なく__休む? と聞いて来る。その上飲み物何か飲む? と聞いてくれて自販機に買いに行ってくれる。


__お姫様になったみたい。


長門君とは比べ物にならないわね。


あの人、たくさん他の女の子ともデートしてる筈なのに。


その上、容姿がもう断然磯風の方が上。


☆☆☆


水族館を出て公園に誘う。目的は今の最高の状態の磯風の姿をスマホのメモリーに永久保存するためだ。もはや人類の宝を記録するつもり位の心意気だ。


写真を撮っていいか聞くと。


「俺なんか撮っても__でも別にいいよ、俺なんかで良ければ」


「あ、ありがとう」


やった。この無自覚系イケメンは簡単に撮影の許可をくれた。


周りを見るとちょうどいい感じのベンチがあった。


「ねえ、そこのベンチに腰掛けて物憂げに頬に手を添えて、フッと笑って♡」


「え? 別にいいけど、恥ずかしいな」


ポリポリと頭を掻いて、ベンチに座る磯風。


「そっ! その感じでぇ! そう! あと、足を組んで、そ! そして、いい! その表情! そこで右手をね、頬に添えてねぇ!」


「ちょっと恥ずかしいよ。アリーさん」


そう行って、恥ずかしがって、他所を向いてしまう磯風。


だ、だけど__。


完成した。


そこには好青年がカッコよく長い足を組んで恥ずかし気に照れながら右頬に手を添える姿があった。


『あわわわわわッ!?


カッコよすぎるぅうううううーーーーー!?』


「えへ、えへ、えへ、へへへへへへッ!」


「ちょ、アリーさん?」


いや、磯風が驚いているがこのチャンスを逃すはずもなく連写していた。


磯風は目をパチクリしている。気がつくと周りの女の子も磯風にスマホを向けていた。


わかる、わかる。自分のスマホに__イケメンの、イケメンのメモリーがどんどん増えて行く__。私は知ってはいけない世界の扉を開けてしまったようだ。涎が垂れているが、それはもうどうでもいい。最高の道楽を覚えてしまったようだ。


『また今度もやろっと♪』


こうして私は磯風のおかげでイケナイ世界を知ってしまった。

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