第21話 天使様はポッキーゲームを所望する
俺はアリーさんとのランチでHPを大幅に削られて午後の授業を受けていた。
アリーさんに耳たぶを甘噛みされた。
妹のことを脅されて抵抗できない。その癖耳元でデレるアリーさんを可愛いと思ったし、耳たぶを甘噛みされる度にゾクゾクと背徳的な快感が俺を襲った。
一番好きな陽葵がいるのに他の女の子とあんなことして快感を感じている自分がいる。
授業が終わり、みなざわざわと喧騒に満ちる。
だけど俺は近づいて来るアリーさんが視界に入って思わず緊張した。
こちらに向かって歩いて来る。
俺のとこに来るかと思ったら、意外と素通りしそうだったので一瞬安堵するが__。
アリーさんは突然俺の耳元に顔を寄せると__。
『私、磯風の耳たぶ噛むの大好き♪』
そうボソッと呟いた。
思わず顔が赤くなる。お昼のことが頭によぎる。
「(アリーさん、俺は陽葵が好きなんだ、だから__)」
『私も磯風のこと__好きだぞ』
またデレた。ほんの3ヶ月前なら小躍りして喜んだ展開だけど、今の俺は困惑するしかなかった。
俺のそばを通り過ぎたアリーさんは自分の椅子に座ると、ニマニマと笑顔を湛えていた。
ふふっ、とか、時々笑みが漏れる。
それを見たアリーさんのファンが悶えてる。
そして周りから殺意を感じたような気がする。
__俺、遺書書いておいた方がいいかもしれん。
☆☆☆
放課後、幸いアリーさんはちょっかいを出して来なかった。
姿が見えない、俺は安心していつものように文芸部の部室に向かった。
文芸部は俺一人の部で、ここに来るのは妹の陽葵位だ。
ようやく安全な場所に来て、俺は安堵する。
しかし。
「__磯風」
突然声をかけられた。いつの間にか部室のドアにアリーさんが立っていた。
「来ちゃった♪」
『来るな』とは言えなかった。
でも、俺はささやかな抵抗をした。
「どうして俺なんかがいいの? 助けたこと? でも、俺、アリーさんと釣り合うような男じゃないよ」
「磯風はもっと自信持った方がいいよ。磯風の男気とか__カッコいいと思うぞ」
「うッ!?」
しれッとカッコいいと言われて顔が赤くなる。
金髪の天使様はまるで女神様か何かで、本当は存在してないんじゃないかと思わせる存在だ。そんな人から出たカッコいいと言われて、測らずともダメージを受ける。
しかし、俺は気になっていたことがあった。
ひとけがないこの場所なら聞ける。
「アリーさん__あのぶしつけなこと聞くけど、この間の裏オプとか__突然俺を誘惑したりとか__アリーさん達では普通のこと?」
そう、俺は気になっていた。妹の陽葵が一番好き、でも憧れていたアリーさんがそんなふしだらなことをしてるとか思いたくない。否定して欲しかった。
「__あ、あれは出来れば触れて欲しくないぞ__裏オプとか知識では知ってるけど私には無縁の世界だぞ。そ、それに__私__経験ないよ」
「本当?」
「確かめてみる?」
アリーさんの言っている意味がわかると顔が赤くなる。
「アリーさん。からかわないで欲しいな」
「妹さんにあんな大胆なことした癖に?」
「うッ!?」
海の時、灯台からこっちは丸見えだったらしい。
秋月から聞いた。だからアリーさんに妹とのこと見られたと__思う。
「口止め料」
「口止め料?」
何のことだ?
「ポッキーゲームして♪」
「しないと?」
「私のグループLi○n、100人以上いるぞ」
「わ、わかりました」
俺はあえなく論破された。
☆☆☆
「はむ♪ 磯風、来い♪」
「あ、ああ」
口にポッキーを加えたアリーさんは__。
エロかった__。
ほんのり頬を紅色に染めたアリーさんは綺麗で__それでいてエロかった。
「ん、ん__ちゅっ__ん、れろ、れる__♪ ああん。んん、れろれろ、ん__♪」
ポッキーをかじるのではなく舐め取っていくアリーさんの声がエロい。
それに近すぎない?
ポッキーゲームって、恥ずかしくなって止める女の子を楽しむとこあると思う。
でももう、アリーさんの顔はもうすぐ目の前だ。
俺はドキドキして来た。それも背徳感に満ちたドキドキだ。
一番好きな人がいるのにアリーさんと__キス?
それはダメだ!
アリーさんの顔をこっそり薄目を開けて見ると、アリーさんは目を閉じていた。
そして、顔を真っ赤にしている。
「い、磯風……♪ んん、ぢゅ……ん、うむ、れろ……♪」
ああ、俺の理性が……。
ダメだ。アリーさんの方からポッキーを折ってくれるという期待は止めよう。
ヘタレと言われても、アリーさんにこのままキスされそうで、怖かった。
アリーさんの息遣いが目の前に迫ってもう数mmの距離になった時。
これもう触れてしまうとそう思った時。
ポキッ!
俺はアリーさんの誘惑に勝って、ポッキーを折った。
「え?」
口でポッキーを折った俺はアリーさんを見て驚いた。
目を開けたアリーさんはそのまま俺に顔を近づけた。
ちゅっ♪
「磯風、私のファーストキスだぞ」
「ちょっ、ちょっと!?」
俺は驚いたが、その時__。
『コトッ』
それはドアを閉める音だった。
「ひ、陽葵__」
俺は今のを陽葵に見られたと思って、ただ呆然とした。
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