第8話 妹ちゃんは海に向かってざわざわする
「__うう、寝不足だよー」
陽葵は寝不足みたいだ。昨日、俺に生の胸を見られた上、大好物のレンコン抜きの刑に処された彼女は夕ご飯の後、直ぐに自室に戻ってドタバタと音を立てたり何事がブツブツと呟き続けた。そしてかなり遅くまでおきていたみたいだ。
「お兄ちゃん! だ、抱きしめてぇ~。それかいっそのこと胸もんでみてぇ〜♪」
「なんでおっぱい揉まなきゃいけないの? それ! こんなとこだと性犯罪だろ!」
「もう、寝不足で今にも寝ちゃいそうで、何か刺激が欲しいの__だから胸を揉みほぐしてくれたら__きっとシャキってなれるとおもうんだ__多分」
だから、それやったら、即捕まるだろう? ここ電車の中だろ?
「揉んだら俺が犯罪者になるだろ? ていうか、見られてあんなに恥ずかしそうだったのに揉まれる方はいいの? 同じ位恥ずかしくないの?」
「恥ずかしいけど__ただ、お兄ちゃんにダメ押しの責任をとってもらえたらいいなと思って」
「責任って何?」
「__婚姻届にサインしてよぉ、恥ずかしいよぉ、女の子にそんな事言わせないでよぉ♪」
いや、それはむしろ可愛い! どちらかと言うと人前でおっぱい揉みほぐして欲しいって言う方が恥ずかしいだろ!
気のせいか周りの人がざわざわしてる。
皆、お兄ちゃんという言葉と胸揉んでという陽葵の言葉に耳ダンボになってる。
だめだ。多分周りの人は実の妹に手を出したダメ人間という認識だろう。
血は繋がってないから!
そう叫びたい衝動に駆られるが、血が繋がってなくても高校生の俺たちがそんな関係だと思われるとやっぱりヤバい奴という理解にしかならないと思う。
俺、陽葵の胸なんて揉んでないよー!
胸は見ちゃったけど不可抗力だろ?
パンツも見たけど、あれも不可抗力だし__。
でも、キスはいっぱいしてるな。
兄妹なのに__血は繋がってないけど一般的にアカン関係だと思う。
やっぱり俺は一般的にヤバい兄だという理解に行きつき、魂が抜けた。
でも、俺は妹が二番目の彼女だったことを思い出した。
陽葵に言われるがまま仮初の彼氏彼女になったけど、今の俺の一番。
それはもう陽葵だ。
でも、陽葵には一番の憧れの人がいる。
俺は陽葵に聞いた。
「ねえ、陽葵。俺たち二番目の恋人同士だよな。陽葵は__その二番じゃダメなの?」
「わ、私は一番がいい! 二番じゃ嫌だよ。一番好きな人に添い遂げたい。だから!」
やっぱり陽葵は一番の人の方がいいんだ。
俺じゃダメだよな。そうだよな、俺なんてフツメン、それに比べて陽葵の憧れの人は学校でも凄く目立っているイケメンで金髪の天使様の彼氏の長門。
それに俺には資格がない。陽葵を二番目の彼女にしてしまった。
冗談から始まってしまった関係。でも俺の罪悪感は陽葵に惹かれるほど強くなっていた。
☆☆☆
もう、お兄ちゃん! この際だから胸揉んでいいから責任とって結婚してよー!
胸見たんだよ? もう、これ男なら責任とらないといけない案件だよね?
なのに何を遠慮してるの!
男なら荒々しく胸を揉みしだいて『陽葵! 今すぐ結婚してくれッ!!』て言うべきでしょ!
私、そんなに魅力ないのかな? 私、意地悪だからかな?
でも、大好きなお兄ちゃんを見るとからかいたくなるもん。仕方ないもん。
大好きなお兄ちゃん、でもお兄ちゃんの一番の人はあの金髪の天使様__か。
お兄ちゃんをからかいに部室に何度も出入りしたけど、お兄ちゃんがあの天使様にぼーと思いを寄せて見ているのを見ていたら、激しい嫉妬に駆られて__。
気がついたら二番目の彼女にして欲しいって言ってしまった。
もちろん、ずっと二番目の彼女のままだなんて思わない。
絶対一番になってやる。
意気消沈しているとお兄ちゃんが話かけて来た。
「ねえ、陽葵。俺たち二番目の恋人同士だよな。陽葵は__その二番じゃダメなの?」
「わ、私は一番がいい! 二番じゃ嫌だよ。一番好きな人に添い遂げたい。だから!」
私は一番がいい! お兄ちゃんの一番になりたい。
でも、お兄ちゃんは私に『お前は二番だからな!』って念押ししてるんだろうな。
お兄ちゃんは私の手を握ると__。
ああー! もうなんでこんなにさりげなく私の手を取るかな?
もう心臓がバクバクだよ。でもお兄ちゃんの言葉は__。
「陽葵__俺が必ずお前の憧れのあの天使様の彼との仲を成就させてやるからな。陽葵は可愛いから必ず上手く行くよ」
「か、可愛いッ!」
もう、いきなりなんて告白するの!
可愛いと言われてテンション一瞬上がったけど、お兄ちゃんが言っているのは例の天使様の彼氏との仲を取り持ってやるということだった。
そうよね。私が天使様の彼を落とせばお兄ちゃんの恋は成就するかもしれないもんね。
でも__。
酷いよお兄ちゃん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます