第7話 お兄ちゃんに生乳見られた妹ちゃんの悶々

陽葵ひまりSide


「ひぃやあああああああああああ!」


部屋に戻った途端我慢していた悲鳴を思わずあげてしまった。


「お兄ちゃんのバカァー!!」


思わずお兄ちゃんに怒りをぶつける。


「お、乙女の胸をー!」


うう。涙が出そうになる。恥ずかしいよう。生の胸をお兄ちゃんに見られるなんて。


はっ!


「私の胸って形良いのかな?」


思わず気になる。


お兄ちゃんに生の胸を見られちゃった。__まだ誰にも見せたことないのに。


恥ずかしさで涙ぐんで来たけど、それよりお兄ちゃんは私の胸見てどう思ったかな?


ただ大きいだけで、形悪いな。とか、色が今一つだな、とか思ってない?


そもそも男の人ってどんな胸が好みなの?


慌ててスマホでググる。


「基本、おっきいのはたいていの男の子が好きみたいって__稀に薄いのが好みの男性も__。」


一瞬お兄ちゃんが薄い方が好き派だったらどうしようと動揺する。__だけど。


「大丈夫。ベッドの下のグラビア写真は胸おっきい子のが多かった♡」


大丈夫。お兄ちゃんはおっきい方が好きな筈。


テンションが上がって来た。


「良かったぁーって! そうじゃないでしょ、私!」


そうだよ。見られちゃったんだよ。


これ、もう結婚すべき案件だよ。


明日お兄ちゃんにそれとなく言ってみよう。


お兄ちゃんだって、きっと責任を感じている筈だよ。


あー! だけど、お兄ちゃんが私の胸の形とか色とか不満だったらどうしよう!


「男の子の好きな胸の形とか色とかはどうなの?」


更にググる。


「上向きのバストがいいと思っている男の子が多いのね」


鏡を見る。


「良かったぁ~! 多分、私のバスト上向き! あ!? でも、い、色は?」


スマホにはほんのりピンクが1番人気とある。


私の胸の先、ほんのりピンクだよね?


でも、ほんとにそうなの?


みんなのはどうだっけ?


__お、覚えてない。


そもそもみんな人の前に胸さらす子いない。


ましてや男の子、ううん、お兄ちゃんの前でさらす子なんて私位だと気がついてますます羞恥で顔が赤く染まる。


「そもそもお兄ちゃんの好みはー!!」


わかんないよー。


「でも、なんかこのままだとお互い変な意識しちゃう」


帰りの電車でほとんど会話しなかった。


私が無言で無表情だったからだと思う。


だってお兄ちゃんに胸見られたんだよ!


また恥ずかしさがこみ上げて来る。


「お兄ちゃんのバカー!」


思わずベッドのクッションを壁にぶつけてお布団をかぶって隠れる。


__このままだと嫌だな。


私はそう思うと例の物を持ってお兄ちゃんがいるリビングに向かった。


☆☆☆


朝陽 あさひ(お兄ちゃん) Side


俺と陽葵は水着を買って二人で帰ったけど、陽葵は一言も喋らないし無表情だった。


「(やっぱり怒ってるのかなぁ)」


そんなことを思っていた。不可抗力なんだど、その、陽葵の胸見ちゃったから気まずい。


陽葵は帰るなり部屋に逃げ込んで悲鳴を上げてドタバタ、ブツブツと何か暴れたり独り言を言い続けている。


俺は動揺している可愛い妹のため夕食を作り始めた。


もちろんピーマンは少なめだ。陽葵はピーマン嫌いだけどピーマンは栄養あるから少しは食べた方がいいと思う。成長に必要だと思う。


一瞬、栄養が全部あの綺麗で大きな胸に行ってしまっているのかなと昼間見た陽葵の胸を思い出してブルブルと首を振る。


わ、忘れろ! 俺!


陽葵との関係がギクシャクするのは嫌だ。


最近彼氏彼女として仲良くやっていけている。


それに水をさすことになるのは嫌だ。


そんな時。


「お、お兄ちゃん」


「陽葵か? もうすぐご飯出来てるぞ」


俺はできるだけいつも通りを意識して言った。


__だが。


「ひ、陽葵?」


陽葵は何故か黒いナイフみたいな物を手にしていた。


いや、みたいじゃなくてナイフだと?


鞘からナイフを抜く陽葵。


「お兄ちゃんは悪くないの。私が悪いの、私が勝手に胸見せちゃったからね」


そう言って、陽葵は黒いナイフを持って、ジリジリと俺に近づいて来る。


「陽葵、ね? 殺人はよくないよ。学校で教わったよね?」


「心配しないで、このナイフは痛くないよう毒を塗ってあるの。だから痛くないよ」


「嫌、痛くなくても死ぬだろ!!」


「大丈夫なの。ちょっと刺すだけだから。この毒は都合の悪いことを忘れてもらうために何もかも忘れてしまう毒なの」


嫌、何もかも忘れるとか、それ人として廃人じゃ?


「いや、それじゃ陽葵のことも忘れちゃうだろ! 俺、そんなの嫌だよ! てかどこでそんなの売ってるの!」


「アマ○ンでポチったのよ。大丈夫だよ。お兄ちゃんのことは私、一生忘れないから!」


「いや、それやっぱり俺を亡き者にしようとしてるだろ?」


「大丈夫だから!」


何を根拠に? ていうかアマ○ンの品揃えどんだけ?


そして陽葵は俺との距離を一気に積めて来た。


__だけど。


「あんッ!?」


天然な陽葵はつまずいて転びそうになる。


「危ない! 陽葵!」


俺は思わず転びそうな陽葵を助けるため、陽葵を支えようとした。


だけど陽葵のナイフは俺の腹に吸い込まれていった。


俺、死ぬの?


「ギャハハハハハハッハッ!! 引っかかったぁ!」


驚いた俺は腹を見た。腹にはナイフが深々と刺さっていた。


__けど。


全然痛くない。


「これ、こういうヤツなの」


そう言って陽葵はナイフの先端を押す。すると先端が引っ込む。


これはどうも演劇とかで使う小道具だ。


「ふふ、ダメなお兄ちゃんね。私の胸見ておかしくなってたんでしょ? ちゃんと忘れるのよ。思い出しちゃダメだよ。私が恥ずかしくてしょうがないからね」


いやおかしくなってるの陽葵の方だから。


__俺もちょっと意識しちゃってるけど。


いつもの意地悪な表情を浮かべて俺に一矢報いたつもりの陽葵。


__だけど。


「なあ、陽葵__悪いんだけど、今ので陽葵の大好きなレンコン全部落としちゃった」


「え?」


俺はピーマン少なめレンコン増し増しの料理を作っていたけど、さっきの騒ぎでレンコンを全部床に落としてしまった。


「今日の夕食レンコン抜きな」


俺は仕返しにいい放った。だって陽葵はレンコン大好物だから。


「ひぃやあああああああああああ!」


陽葵はまた自爆した。

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