第5話 妹ちゃん、デートでご機嫌になる
「なんか去年より育ったような気がしてね」
「ああ、多分育ってると思うぞ」
「ああ! お兄ちゃん何げにチェックしてた? 妹の胸の発育?」
「馬鹿ッ!」
いや、ほんとはそうだけど。
だって元々大きいのに育つの止まること知らん胸なんだもん。
「Fカップだよ」
陽葵がドヤと言った顔で言う。
その気になったら揉める?
俺は慌ててその気持ちを振り払った。俺たちは仮そめの二番目同士の恋人。
だからあまり進みすぎちゃいけない。自重しないと。
「陽葵、はぐれないように、手、繋ご?」
俺は陽葵に手を差し出して手を繋ぐよう促した。
街は人でいっぱいで気をつけないとすぐ離れ離れになりそう。
陽葵が俺の手を取る。そして恋人繋ぎしてくる。
自分から手を繋ごうと言った癖に急に恥ずかしくなる。
「お兄ちゃんから私の手を繋いでくれた! あれ? なんか地球の重力がおかしいよ♪ 身体がなんか飛んでるよ。あ、あはははっ__♪」
な訳あるかぁ!
「何言ってるの? 陽葵が可愛すぎるから心配なんだよ! 自分でも気を付けて! 今、初夏だから、女の子の服は露出多いんだからな!」
「__か、可愛い♪……やっぱり、今、重力おかしいよ。なんか私、上に引っ張られてるよ♪」
はっ? 重力がおかしいって、気持ちが上に向いているっていうか? 天にも昇る気持ちっていう事? 俺なんかと手を繋いだだけで? 可愛いって言っただけで?
陽葵! __可愛すぎるだろ!
陽葵が顔を赤くする。止めてくれ! 可愛い過ぎて俺まで顔が赤くなる。
そんな事を考えていると不意打ち。
「お兄ちゃん、ほ、褒めてくれて、あ、ありがとう。お兄ちゃんも……その……カッコいいよ♪」
「ええっ!」
俺の顔は多分より赤くなったと思う。全部陽葵が悪い、俺のせいじゃない。
「ありがとな。冗談でもカッコいいだなんて言われると嬉しいよ」
「お兄ちゃん、自信持ってよ。ちゃんとフツメンなんだから」
逆にメンタルめげるんだけど?
陽葵が下を向いて静かになった。俺も下を見てしまった。自分でも恥ずかしい。
☆☆☆
「あっ! 着いたよ。女性の服のフロアだよぉ」
照れ隠しだろう陽葵が急にテンション高く言い出した。
女性のファッションのフロアに到着して、水着のコーナーは割とエスカレーターの近くだった。
うう、水着だらけで、俺、ビビる。
「陽葵、じゃあ、俺は少し時間をつぶしてくるよ。水着コーナーに男がいると困るよな?」
男の俺が水着売り場にいることはいけないことだと思う、女の子は嫌だろう。
陽葵だって__でも陽葵の反応は違った。
「ええ? 一緒に選んでくれないの? 一緒に選ぼうよ! 自分の彼女の水着だよ♪」
「ええっ!! 俺に水着姿見られるし、水着のコーナーに男いたらまずいだろ?」
「彼氏はいいの! 他の女の子も彼氏連れているよ。私を一人にするつもり?」
なに、陽葵? ほっぺを膨らませたリスみたいで可愛いんだけど?
最強の可愛い生き物に__ゲームのラスボスに突然エンカウントしてしまったような感じ。
いや、そんなにハードルが高い任務を突然与えないでくれ!
女の子の水着選ぶの? 俺が? 二人で? 嬉しいけど、俺も重力の異変を感じ始めてきた。
「お兄ちゃんだって、ほんとは私の水着姿みたいくせに。お兄ちゃんてほんとダメだから妹の水着姿見たくてしょうがないよね?」
「いや、陽葵! 人ぎきの悪いこと言うなよ」
「じゃ、なんでベッドの下にあんなに女の子の水着のグラビア写真あるの?」
「い、いやあれは、その__」
いや、男の子なら仕方ないだろ?
「全部捨てておいたから、見たい時は陽葵に言うんだよ」
はあ? 水着姿見せてくれるの?
いや、いや、いや!
頭から湯気が出そうな状態で水着のコーナーの前に来てしまった。
女性のあんな下着みたいな水着のコーナーに入る勇気ないよ! ゆ、許して陽葵ぃいい!
「ひ、陽葵なら何でも似合うよ、お、俺がいなくても、だ、大丈夫、大丈夫、俺、ファッションのことわからんし!」
「彼女の水着を選ぶのは彼氏の義務よぉ! 駄目よ、逃げちゃ!」
陽葵は今度はプリプリと頬を膨らまして、俺を睨む。睨んだ顔も可愛い!
ツンツンしながら、俺の手の袖を掴むと、むくれた顔のまま、急に引っ張っていかれた。
陽葵、大胆過ぎる!
『あの子達高校生のカップル? 最近の子は進んでるわね』
『でも、初々しくて、かわいい』
何処の誰かしらないけど、大人の女の人が俺達をからかう。俺の羞恥心のHPは0。
「わかったから、だから引っ張らないで!」
結局陽葵に引っ張られて水着コーナーに来てしまった。ここであまり抵抗すると、かえって悪く目立ちそうで怖いから、陽葵の水着選びに協力する事にした。
高校生のカップルって、目立つだろうな。みな、微笑ましい笑顔で俺達を見てる。俺が抵抗すると、大人の女性からクスクスと笑いがおきる。
俺たちが兄妹で、お互い二番目の彼氏彼女という爛れた関係だと知ったら皆、俺のこと軽蔑するだろうな。俺は陽葵に振り回されて嬉しい一方、いつも罪悪感を感じていた。
『二番目の彼女。こんな関係、ほんとにいいんだろうか?』
そんなことを考えているうちに陽葵に手を引かれて水着コーナーに来てしまった。
大半がビキニ__女の子って、よくあんな布面積の少ない水着で平気だな。お尻半分出てない?
「ねえ、お兄ちゃん♪ これとこれだとどっちがいいと思う?」
そう言って、陽葵が二着の水着を両手に持って寄ってくる。
片方は普通のピンクの三角ビキニで、凄く布面積が少ない、もう片方はチューブ型でストラップレスのやはりピンクのビキニだ。陽葵は女の子らしい可愛いピンクの水着が好きなのかな?
俺に相談されてもわかんないぞ__ピンクは似合うと思うけど、布面積が広いヤツの方がいい気がする。
だって他のヤツにも陽葵の水着姿が見られてしまうんだぞ?
こんな時、なんて言えばいいのだろう? 正直に言うか?
俺にはよくわからん。うん、ここは自分の気持ちに正直に言おう。
「陽葵は可愛いから何着ても似合うと思うよ、でも、フリルとかついた可愛い水着でもうちょっときわどくないヤツのほうがいいんじゃないかな?」
すると、陽葵はニヤッと嗜虐心丸出しの意地悪な笑顔で__。
「じゃ、色々試着して見るね。お兄ちゃん、見て感想を言ってね♪」
俺の脳はショートした。
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