第302話 魅了されてた?

 え?


 いや、なに、その質問?


 そういや、さっきユーリがなんか言ってたな。


 オリョウ様に魅了されなかった人はこの世に存在しないとかなんとか。


「いや……どうしてと言われましても」


 正直、答えようがない。


 俺がオリョウに魅了されていない理由なんか、俺にだってわからない。


 そもそも、恥を承知で言うなら、俺はオリョウのおっぱいを凝視していたのだから、普通にオリョウに魅了されている。


 ん?


 オリョウに魅了……これ以上はやめよう。


 最近ラップがはやっているとはいえ、すべる未来しか見えない。


 オリョウは不服そうに話す。


「これまで私に魅了されない人なんかいなかったわ。だって私、絶世の美女だもの。スタイルも抜群だもの」


「はぁ、そうですか」


 それを自分で言いますかね。


 まあ、オリョウほどの美女になるとその方が誠実に見えるか。


 美女やイケメンが謙遜してるのを見るの、ほんとムカつくからね。


「なのに、石川くんは私に魅了されなかった」


 悔しさなのか苛立ちなのか、オリョウの声に震えが混じる。


 これは……ヤバいかもしれない。


 俺が魅了されていないことで、オリョウのプライドをずたずたにしてしまったのかもしれない。


「私が女奴隷化できないなんて、おかしいことこの上ないのよ」


 そして、オリョウの言う通り、なぜかはわからないけれど、なぜか俺は女奴隷化できなかった。


 ってか、このままオリョウと戦わないでやり過ごせるなら、その方がいいんじゃないか?


 かろうじて話が通じる間に、なんとかオリョウの折れたプライドを元に戻さなければ。


「いや、俺はたしかにオリョウさんに魅了されていると思いますよ」


 恥ずかしいが、正直に打ち明けるしかない!


「だって俺はあなたのことを絶世の美女だと思いましたし、その大きなおっぱいを凝視していましたし、スカートの中をなんとかしてのぞけないか試行錯誤していましたし」


「そんなこと知ってるわ」


 ぴしゃりと言い返される。


 ふ、普通にばれてたー!


「なんなら、今日ここに集まった男の中で、石川くんの視線が一番ねっとりしていたわ。私の胸にあるほくろを見つけたときににやりと吊り上がった口角なんて、本当に気持ちが悪かったわ」


 ほくろを見つけてえっろ! って思ってたのも顔に出てたー。


 しかも俺の視線が一番ねっとりしてたってさー!

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